地方創生とグローバル人材の育成に挑むIT・HR企業

株式会社YAZ 代表取締役CEO 田中 康之 氏

■ IT人材育成に強みを持つ長岡市出身の経営者

 代表取締役CEO田中氏は、新潟県長岡市出身の富士総合研究所(現みずほリサーチ&テクノロジー)でのシステム開発経験を活かし、2002年、24歳で起業しました。大手企業向けのITシステム開発を手がけ、現在87名体制にまで成長しています。2018年以降は地方展開を本格化させ、名古屋、札幌、佐渡、長岡にオフィスを開設し、近年は採用コンサルティングを手がけるHRソリューション事業も展開しています。
YAZの事業領域

■ iCDを用いた新サービス

 20年にわたるIT人材育成の経験を活かし、新たにiCD(iコンピテンシ・ディクショナリ)を活用したITエンジニアのタレントマネジメントサービス「TrueColors」を開発しています。iCDは企業の事業活動を業務タスクと必要スキルの2側面から整理する枠組みですが、IT業界での浸透が課題となっていました。そこで「TrueColors」では、タスクとスキルを定量化することで、エンジニアの成長を可視化します。個人のスキルとキャリアを生涯にわたって記録・管理できる仕組みを提供することで、IT企業の成長を加速する人材マネジメントシステムとして機能します。エンジニア個人にとっては過去から未来のキャリアが可視化され、組織にとっては人材育成の効率化とデータに基づく戦略的な人材配置が可能となります。
iCDを用いたITエンジニアのタレントマネジメントサービス「TrueColors」タレントマネジメントサービス「TrueColors」

■ 地方創生への取り組み

 地方拠点を設けることで、その地域の学生にとって応募しやすい環境を整備し、多様な人材の獲得を目指しています。特に長岡は、長岡技術科学大学や長岡高等専門学校という理工系人材の教育機関に注目しています。2021年にはNagaoka Workerに加入し評議委員となり、2023年には米百俵プレイス(長岡市の産業・企業・図書館の複合施設)にオフィスを開設しました。長岡では毎年2名の新卒採用を予定し、2029年までに10名体制を目指しています。

■ モンゴル高専との連携

 グローバル人材の育成にも注力しています。モンゴルでは2014年に日本の高専カリキュラムを導入した3つの高専が設立されており、学生の約2~3割が毎年日本企業へ就職をしています。当社は長岡市、新潟県およびJICAの「草の根技術協力事業」と連携し、モンゴル高専生向けのインターンシッププログラムを展開しています。日本語とITの研修を提供し、日本人学生と同等の給与で採用・育成を行うモデルを推進していきます。
モンゴル視察の様子

 

コメンテーターより・・・

株式会社AGSコンサルティング 顧問 小原 靖明 氏  

 起業してから20年にわたるITソリューション事業の経験に加え、近年のHRソリューション事業への展開は、第二創業期に入ったよう思われます。
 創業メンバー4人のうち3人が残っていることも次へ展開の期待を持たせます。
 2023年、田中社長の地元長岡にオフィスを開設し、積極的に長岡市、長岡大学等との連携などで地元貢献していることは注目に値します。
 今回のプレゼンではTPMへの上場は考えていないとの事でしたが、社員採用等を勘案するとその検討をしても良いのではないでしょうか?

 株式会社AGSコンサルティング 顧問 小原 靖明 氏

 
※「The INDEPENDENTS」2025年3月号 - P.9 掲載