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「上場市場の変化とスタートアップへの期待」

 

AGSコンサルティング 廣渡 嘉秀  

株式会社AGSコンサルティング
代表取締役社長
廣渡 嘉秀 氏 Hirowatari Yoshihide

1990年早稲田大学商学部卒業後、センチュリー監査法人(現新日本監査法人)に入所。
国際部(ピートマーウィック)に所属。
1994年公認会計士登録。(株)AGSコンサルティングに入社。
2004年新日本監査法人を退所。
(株)AGSコンサルティング代表取締役専務に就任。2008年代表取締役就任。
2015年11月インデペンデンツクラブ理事就任。

インデペンデンツクラブ 松本 直人

 

 

インデペンデンツクラブ
代表理事
松本 直人 氏 Matsumoto Naoto

1980年3月23日生
大阪府立三国丘高校出身。神戸大学経済学部卒業
2002年フューチャーベンチャーキャピタル㈱入社
2016年1月同社代表取締役社長に就任
2022年7月㈱ABAKAM 設立、代表取締役就任(現任)
2023年3月㈱Kips 取締役就任
2024年9月インデペンデンツクラブ代表理事就任


「上場市場の変化とスタートアップへの期待」

■ 上場市場や会計業界のトレンド

松本:上場市場や会計業界に関してのトレンドを教えてください。
廣渡:昨今、上場に関する位置付けが変わってきました。東証の市場再編以来、既上場企業がMBOにより非公開化する事例が増加しています。特にグロース・スタンダード市場の企業は、割安な株価をアクティビストに狙われることを危惧して上場を取りやめる傾向にあります。

松本:東証が資本コストや株価を意識した経営としてPBR1倍割れ企業への対応を求めたことが大きく影響しています。

廣渡:PBR1倍割れへの改善に加え、円安の進行がアクティビストの参入を後押ししました。上場企業は投資家に対して真摯に対応し経営していくことが求められます。

松本:会計制度に関して何か変更はありましたか。

廣渡:大きな変更はありませんが、リース会計基準の変更準備が進んでいます。また、水面下ではのれん償却について、日本の会計基準においてもIFRS基準同様非償却にすべきかに関する議論が盛り上がっています。

 

■ スタートアップを取り巻く環境の変化に関して

廣渡:「スタートアップ育成5か年計画」から、政府がスタートアップを積極的に後押しするようになったのは非常に良いことだと感じています。しかし、10兆円という定量目標は遠く投資が予定より進んでいないことを懸念しています。結局、1兆円にも達しておらず投資額が減少しています。

松本:10兆円の投資を実現するためには、20兆円の回収市場を作る必要があります。スタートアップM&Aの推進などによってベンチャー投資のパフォーマンスを向上させなければ、投資額の増加は見込めません。

廣渡:ただ、新興市場の環境が良くない一方で、スタートアップの上場への熱は非常に高いです。

松本:オープンイノベーション促進税制の効果についてはどのように思いますか。

廣渡:上場企業だけでなく体力のある中堅企業によるスタートアップ投資が増加することを期待しています。

■ 今後のインデペンデンツクラブについて

廣渡:ユニコーンの創出を目指す都市圏のVCが多い中で、インデペンデンツクラブは地方での地盤の強さやミッドキャップのスタートアップの登壇が多い非常に特異な立ち位置だと考えています。この立ち位置を維持し続け、さらに際立たせていくことを今後期待しています。

松本:これまで大学発ベンチャーに強くフォーカスしてきており、地方大学と協力してイベント開催することも多かったのですが、2025年は地域の独立系VCとも連携して様々なことに取り組んでいきたいと考えています。

廣渡:地域連携という点で、我々は地銀と連携を深め地方企業のTPM(東京プロマーケット)への上場支援に力を入れています。管理体制も整っている地域の中堅・中小企業にとって、上場による信頼の獲得や人材の確保といった恩恵を受けるにはTPMが最適だと考えています。

松本:TPMをテーマにぜひコラボイベントをさせていただきたいと思います。

松本:最後にインデペンデンツクラブの会員の皆さんにメッセージをお願いします。

廣渡:「1人でも多くの人と一緒に1社でも多くの公開会社を育てる」という熱い理念のもとに発足し15年以上が経ちました。長い歴史の中で非常に多くの起業家の方が事業計画発表会に登壇されてきました。会員の皆様にはインデペンデンツクラブを盛り上げる中で、スタートアップとのネットワークを作り次に繋げていくことで、スタートアップ界隈全体が活発になることを期待しています。

interviewed by kips 2024.12.3


※「THE INDEPENDENTS」2025年1月号 P.3より
※ 冊子掲載時点での情報です