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「ディープテックスタートアップのM&Aを活発化し、成長産業に資金が流入する社会を実現する」

 

 

 

株式会社ストライク
代表取締役社長
荒井 邦彦 氏 Arai Kunihiko

1993年太田昭和監査法人(現・EY新日本有限責任監査法人)入社。
1994年一橋大学商学部卒業。
1998年12月太田昭和監査法人退職。
同社在職中に証券取引法・商法に基づく法定監査、株式公開のコンサルティング、M&A・金融機関の債権売却のデューディリジェンスなどを経験。
1997年(株)ストライクを設立、代表取締役就任。
2022年6月インデペンデンツクラブ理事就任。

 

 

インデペンデンツクラブ
代表理事
松本 直人 氏 Matsumoto Naoto

1980年3月23日生
大阪府立三国丘高校出身。神戸大学経済学部卒業
2002年フューチャーベンチャーキャピタル㈱入社
2016年1月同社代表取締役社長に就任
2022年7月㈱ABAKAM 設立、代表取締役就任(現任)
2023年3月㈱Kips 取締役就任
2024年9月インデペンデンツクラブ代表理事就任


「ディープテックスタートアップのM&Aを活発化し、成長産業に資金が流入する社会を実現する」

■ M&A業界のトレンド
松本:ラクサス・テクノロジーズやソラコムの上場などスイングバイIPOがトレンドの一つになりそうだと感じています。

荒井:日本だと大企業が多くのリソースを持っているので、スタートアップがそれをうまく活用するスイングバイIPOは非常に重要だと考えています。

松本:悪質な買い手事業者の問題に関してはどうお考えですか。

荒井:M&A全体が悪であるという認識が広まってしまうことを危険視しています。本来、M&Aは人口減少や経営者の成り手不足による損失や生産性の低下を解決し、企業の存続や生産性の向上を実現することとして国としても推進しているものです。業界全体や行政の力を結集して悪質なものを取り除いていく努力が必要です。
また、売り主はM&Aに慣れていないことがほとんどなので、リスクの説明や手続きを手厚くすることや契約上売り主にリスクが及ばないようにしていくことで、二重三重のサポートをしていくべきだと考えています。加えて、悪質な買い手事業者リストの共有や苦情相談窓口の設置なども進めています。

松本:VCにも苦情相談窓口の設置は必要だと考えています。ハラスメントの問題やスタートアップとVCの情報の非対称性を利用した悪質な契約など、悪いことをしたら通報される仕組みづくりが重要です。

■ スタートアップM&Aのマーケット
松本:スタートアップのM&Aマーケットについて教えてください。

荒井:スタートアップのM&Aは増加傾向にありますが、さらなる加速が必要だと感じます。特にディープテックのM&Aを活発化させていくべきだと考えています。

松本:ディープテックは赤字なためにIPOが難しいこともあるので、M&Aでのexitを進めることは重要です。

荒井:M&Aでのexitができないと、投資家にとってディープテック投資のパフォーマンスが下がり、成長産業への資金流入が止まってしまう恐れがあります。ディープテックでも投資パフォーマンスを高めるために、ここのマッチングを進めていきます。
また、P/LやB/Sに現れない部分での評価やシナジーの創出に関して、知財面からディープテックと企業のマッチングを考える研究を大学と共同で行っており、その成果について今後発表する予定です。ディープテックへの資金流入を進めることで、将来人類の日常を一変させるようなイノベーションが創出されることが我々の最終目標です。

松本:VCの投資回収サイクルの短期化やIPOを目指さなくてもいいモデルが実現することで、素晴らしい技術や研究に対してプロダクト化する前から投資されるようになるかもしれません。

荒井:スタートアップのM&Aにおいて仲介業者の役目は買い手を多様化することで投資パフォーマンスを高めることです。M&Aでのexitを考えた際に、スタートアップに対して適切にプライシングする買い手を見つけるには、多様な買い手とのマッチングが非常に重要です。

■ 今後のインデペンデンツクラブ
荒井:地方で多くのイベントを開催していることは非常に素晴らしいと思います。共同で開催している「S venture Lab」も年18回のうち12回を地方で開催していることは、原型に事業計画発表会があります。他ではない地域でイベントを開催することで、スポットが当たりづらい地域の素晴らしいスタートアップの発見に繋がります。また、スタートアップ関連のイベントは大規模なものが多く、小規模なイベントを開催することは創業初期の企業などが発表する機会を作る点で非常に重要です。

松本:最後に会員の方に向けて一言お願いします。

荒井:会場にぜひ足を運んでください。一人一人が参加意識・当事者意識を持ってスタートアップの支援をしていくことで、1社でも多くの公開会社を育てるという理念の達成に近づけると考えています。


interviewed by kips 2024.11.14


※「THE INDEPENDENTS」2024年12月号 P.16より
※ 冊子掲載時点での情報です