アイキャッチ

「特別セッション『長岡スタートアップへの期待』」

 <イベントレポート>

2024年10月11日 長岡インデペンデンツクラブ
@ ミライエ長岡
+ Zoom ウェビナー配信

■ イベント詳細 https://www.independents.jp/event/743

         
長岡市
商工部 部長
西山 裕介 氏
  長岡技術科学大学
教授
山口 隆司 氏
  長岡工業高等専門学校
和久井 直樹 氏
  (モデレーター)
株式会社ABAKAM 代表取締役
インデペンデンツクラブ代表理事
松本 直人 氏
 

特別セッション レポート

■長岡市のスタートアップエコシステム「NaDeC構想」

西山:市の取り組みとして「NaDeC構想」を整備しています。この構想は4大学と長岡高専の多様な人材を活用し、製造業の街としての強みを活かしたスタートアップ支援を展開するものです。2023年7月にオープンした「NaDeC BASE」は、産学連携の活動拠点として機能しており、6階にはインキュベーション施設としてのコラボレーションオフィスを設置しています。DX・IT拠点として「NTTスマートイノベーションラボ」や「ながおかDXセンター」も併設されています。また、「ファーストペンギンプログラム」や「リーンローンチパッドプログラム」等の起業プログラムも開催しており、多くの起業家を輩出しています。

松本:NeDec BASE開設から約1年が経過しますが、成果はありましたか?

西山:この1年間で当初の期待と現実のギャップが見えてきました。当初目指していた製造業との連携については、まだ十分な成果が得られていません。一方で、㈱プラントフォームの事例のように、ニッチな製造業と新しい取り組みを始める動きも出てきており、新たな可能性も見えてきました。また、長岡高専発の㈱IntegrAIがH3ロケットにAIカメラ技術を提供したという事例もあります。今後は、このような製造業とスタートアップのマッチングコミュニティを、NaDeC BASEを拠点として形成していきます。

 

■長岡技術科学大学が牽引するイノベーション人材の育成

山口:弊学は国連SDGsのNo.9(産業と技術革新)に関する拠点大学に東アジアで唯一選出されており、国際機関と連携したSDGs活動を展開しています。学生主体の国際会議開催などの実践的な取り組みが評価され、第2期の認定も獲得しています。
また、学生の起業支援に力を入れていれており、学生数あたりの起業数が全国で2位という成果を上げています。注目すべきは、これらが形式的な大学発ベンチャーではなく、実質的な学生・教員による起業であることです。この背景には、2017年頃から構築してきた産学官連携のエコシステムがあると考えています。長岡市による起業家支援制度と、大学による起業家教育プログラムが効果的に機能し、持続的な起業家輩出に繋がっています。大学では、5年一貫博士課程の技術科学イノベーション専攻を新設し、技術だけでなくビジネスマネジメント能力も育成する体制を整えています。
さらに、国内に留まらずグローバルな展開も行っています。特に注力しているのが、アフリカなどの新興国市場へのアプローチで、リバースイノベーションを取り入れた取り組みを進めています。長岡高専との連携により、現地の課題を把握し、解決策を提供する一方で、その経験を日本市場にも還元する双方向の価値創造を目指しています。
今後も、地域に根ざしながらも国連やその他国際機関とのネットワークを活用し、グローバルな視野を持つ人材育成拠点として取り組みを続けていきます。


■長岡高専における起業家育成の取り組み

和久井:長岡高専では、アントレプレナー育成を重要な教育方針の一つとして掲げています。カリキュラムの中にアントレプレナー育成プログラムを組み込み、学生が自由にチャレンジできる環境を整備してきました。ロボコンやプロコンなどの技術コンテスト、企業との連携プロジェクト、JICAと連携した国際的な課題解決プログラムなど、多様な実践的機会を用意しています。実際に、卒業生の中から起業する学生も増加しており、ここ5-6年の間に複数の起業家を輩出しています。

松本:アントレプレナー教育において、長岡市の高専ならではの特徴はありますか?

和久井:長岡市では、スタートアップを支援するエコシステムが形成されつつあります。地域の企業がスポンサーとなり学生の活動を支援したり、学生が地元企業でのインターンシップを通じて実務経験を積んだりする機会が生まれています。また、起業した先輩たちが身近なロールモデルとなり、後輩たちの起業意欲を刺激する好循環も生まれていると思います。さらに、高専OB/OGのネットワークの存在も大きいです。他地域で活躍する卒業生たちが、後輩起業家の相談に乗ったり支援したりする繋がりが自然と形成されています。この10年ほどで、従来の「良い成績を取って良い就職を」という価値観から、「起業という選択肢」も現実的な進路として認識されるようになってきている印象があります。

 

■長岡市による資金支援制度

西山:長岡市は革新的な技術開発を行うスタートアップへの支援として、「イノベーション加速化補助金(上限200万円)」を設けていました。今年、これを発展させ、「革新的ものづくり補助金(上限1000万円)」を新設しました。さらに、楽天と連携した「クラウドファンディング型ふるさと納税」を実施し、創業支援事業用に8600万円を調達することに成功しました。また、地域として国のバイオコミュニティ認定を受けるなど、企業が次の資金調達をしやすい環境整備にも取り組んでいます。

(長岡市 地方創生推進部長
長谷川 亨 氏)
(左から、モデレーター:松本氏、パネラー:西山氏、山口氏、和久井氏)

※「THE INDEPENDENTS」2024年11月号 P.5 より
※ 冊子掲載時点での情報です