「歯科治療にイノベーションを起こす地方のディープテック経営者」

＜起業家インタビュー＞

― 歯を削らない治療で、世界に感動を！を目標に設立された徳島大学発ベンチャーです

　私たちが取り組む社会課題は健康な歯を削る治療の解決です。従来の歯科治療である銀歯やセラミックスは、健康な歯を削って補綴する方法です。しかし、これでは不完全な接着から虫歯が再発したり、歯・歯髄の損傷から歯髄の壊死が起こったりすることで歯の喪失が引き起こされます。この解決策がコンポジットレジン（CR）治療です。CRは歯に直接接着し、無駄に削る必要がありません。

― CR治療を短時間・高品質に実現するインデックス（型枠）の設計・製造を行います

　私どもは口腔内スキャンデータを元に、歯列とそれを再現するインデックス（型枠）を設計、3Dプリンタ等で生産する技術により、短時間で高品質なCR治療を実現します。ビジネスモデルとしては、発注のあった歯科医院から患者の口腔内データを受け、それを元に当社でインデックスを設計・製造し、歯科医院でそのインデックスを用いて修復治療を行います。将来的には歯列・インデックスを自動で設計するソフトを開発、歯科医院に提供することで、最短即日でCR治療が実現できるサービスを計画しています。市場としては、国内では自由診療領域を狙い、早期に海外市場を開拓します。

 

―  東京医科歯科大学と徳島大学の知財を技術のベースにしています

 　当社は、歯を削らない世界を志し、東京医科歯科大学と徳島大学で当社技術のベースを開発した保坂・渡邉により創業されました。保坂は徳島大学歯学部の教授であり、CR修復のプロフェッショナルであり、この業界のKOLです。渡邉は、徳島大学歯学部助教であり、矯正歯科が専門で、デジタル歯科・歯列設計のプロフェッショナルです。ビジネス側のプロフェッショナルである私と宮武は今年7月に経営チームに参画しました。私も宮武も創業者2名の技術や想い、人柄に惚れ込み、当社に参画しました。


―  伊原晃代表取締役は徳島県出身で、経営や投資のプロフェッショナルです

　私は徳島県出身で、名古屋大学大学院で航空宇宙工学を学んだ後、環境分野に関心があったため株式会社リサイクルワン（現レノバ）で5年勤め、その頃から地域や地元活性化への意識を持ち始めました。それをビジネスの力で実現させたいと考え、デロイトトーマツコンサルティングを経て、地域活性化を目的とする半官半民ファンドに移り、地元徳島県でスタートアップ投資と経営支援を行いました。徳島大学内で保坂先生と渡邉先生に出会い、前職を退職後に経営者就任をお二人から強く要請頂きました。私の頭の中には、スタートアップ支援者向けの研修で聞いた「いつまでもサポーターでいるな、自ら挑戦しろ」というメッセージが強く残っており、ディープテック・スタートアップの経営者として挑戦することを決めました。

― 実際にスタートアップの経営者となり挑戦する中でのギャップはありますか

　経営者になってからは日々発見の連続です。事業計画にあらゆる可能性を織り込んだつもりが、想定外が連続します。また、経営者の最も重要な仕事は資金集めと人材集めだと考えていましたが、現在私は、CEO・COO・CFOを兼ねており、日々のオペレーションやタスクに追われているのが反省点です。直近で資金調達の目途も付いたので、早急に組織を強化・権限移譲して、徐々に経営者としての仕事に集中していきたいです。

― 伊原さんのようにインキュベータからスタートアップに挑戦する人が増えると良いですね

　各都道府県に1つ以上ある地方国立大学は技術シーズが多く眠っている宝の山で、地域経済活性化のカギになると考えています。一方で、経営人材の不足等から事業化があまり進んでいないのが現状です。私個人としてはスタートアップ経営者としての役目を終えた後も、もう一度サポーターとして徳島や地方のスタートアップを支援して活性化させていきたいと考えています。そのためにも、まず、チームとして株式会社amidexのIPOを目指し、徳島や地方からも挑戦する人材が増えていくことを期待しています。