企業だけでなく個人でもCO₂削減に貢献できる社会システムをデザインする

Carbon Xtract株式会社 代表取締役社長 森山 哲雄


当社は九州大学と双日のジョイントベンチャーで、ナノレベルの膜で小型DAC(Direct Air Capture)を開発し社会実装を目指しています。近年地球温暖化の原因となるCO2の削減が全世界で注目されている中で、DACは大気中から直接CO2を回収する技術です。現在世界で稼働しているDACプラントは巨大なため大量の熱エネルギーや水が必要で周囲への環境負荷が大きいので、広大な土地がある国で大企業しか参入できません。しかし、当社が開発した膜を活用したDACはポンプで空気を集め膜でCO2を分離する機構なので小型から大型まで設計が可能です。

回収したCO2の有効活用として現在農業領域に取り組んでいます。ビニールハウス内のCO2濃度を高めることで光合成を促進し収穫量を高めることができるため化学肥料の代替となります。しかし、現状のCO2発生装置は灯油等を使い環境負荷が高いので、DACで大気中から集めたCO2を活用することでカーボンネガティブ貢献にもなり農業の脱炭素化を進めます。また、スペインやオランダ等の施設園芸など海外市場への展開も考えています。

CO2の活用に関して農業以外でも炭酸水や美容など潜在ニーズは多くあります。将来的には小型DACを都市の至る所に導入し誰もがCO2削減に貢献できる社会を作ります。また、日本発の世界トップレベルの技術である膜を活用し今後世界で戦うために社会実装のサイクルを回し技術・事業の価値を高めていきます。

 

 

コメンテーターより・・・
 


DACのトレンドとして、ゼオライト等の無機素材での吸着剤を用いて大型の装置を開発し、一日当たりの処理量の拡大及びカーボンクレジットの価格基準である50ドル/トンをコストターゲットとして世界的に開発が進んでいる分野であるが、同社のアプローチは高効率な有機素材の吸着剤を用いて小型で安価な装置を将来的に何百万台と生産する戦略を取っているところに特徴がある。
今後は装置の製造コストをどれだけ引き下げられるか、回収したCO2の二次利用の用途開発等、独自の戦略での成長を期待したい。

株式会社ABAKAM 代表取締役 / 株式会社Kips 取締役 松本 直人 氏

 
※「The INDEPENDENTS」2024年7月号 - P.13 掲載