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「2024年新しい成長経済元年日本」

  インデペンデンツクラブ代表理事 秦 信行 氏

早稲田大学政経学部卒業。同大学院修士課程修了(経済学修士)。野村総合研究所にて17年間証券アナリスト、インベストメントバンキング業務等に従事。1991年JAFCO に出向、審査部長、海外審査部長を歴任。1994年國學院大学に移り、現在同大学名誉教授。1999年から約2年間スタンフォード大学客員研究員。日本ベンチャー学会理事であり、日本ベンチャーキャピタル協会設立にも中心的に尽力。2019年7月よりインデペンデンツクラブ代表理事に就任。
  

 このコラムを書いているのは2024年1月20日、新年もかなり日は経ってしまったが、2024年最初のコラムであるので敢えて「明けましておめでとうございます」と申し上げたい。

 2024年、正月早々能登半島地震に見舞われた。お亡くなりになった多くの方々には哀悼の意を表すると同時に、被災された皆様には心からのお見舞いを申し上げたい。

 予期せぬ災害で始まった2024年はどんな年になるのであろうか。筆者にはマクロ経済を予測するだけの能力はないが、幾つかの問題点を指摘させて頂きながら期待も含めた今後の日本経済の進むべき方向について筆者の思う所を書かせて頂きたい。

 グローバルに見ると、ウクライナとロシア、イスラエルとパレスチナの問題がある。この2つの戦争は早期の解決は難しいようだ。加えて米国の大統領選挙の帰趨、特に共和党トランプがどうなるかはかなり気になる。台湾と中国の問題もある。それ以上に北朝鮮がかなり先鋭化しているようでその点は大いに気になる。

 国内政治については、自民党の派閥を巡る問題、大所帯である自民党の組織原理として派閥の必要性を認めないわけではないが、資金の使い方と処理の仕方がいい加減であったことには呆れてしまう。民主主義が大変カネのかかるシステムであることは分かるが、透明性の担保が民主主義の根幹であることを忘れてはならない。これで自民党がどぅなるのか、日本の政治体制がどうなるのか、これらの点も気になる。

 とはいえ、日本経済に目を転じると物価や賃金も上がり始め、長きに亘ったデフレからの脱却の道筋が見えてきた。金利機能も復活しつつある。株式市場についても日経平均株価は昨年来上昇している。グロース市場の停滞が長引いてはいるが、梃入れ策が打たれており近々反転するのではないか。これからの日本経済、大きな財政赤字があり、格差拡大の問題等々もあるとはいえ、筆者としては経済成長を第一に考える方向に進んで欲しいと思う。

 経済成長を考える際に人口減少、特に労働人口の減少の問題は大きなネックとなる。確かに2008年をピークに減少に転じた日本の人口が今後短期間に増加に転じることは難しい。そうであるなら、海外からの移民、それも質の高い人材の流入拡大を考えてもいいのではないか。各国の国際移民の数をグローバルに見ると現状の日本はかなり少ない。移民の問題は文化的な問題も含む問題であり、相当慎重に考える必要があるようには思うが、そろそろ本格的な議論を始めてもいいのではなかろうか。

 今まである意味タブー視されていた移民の拡大もそうだが、これからの日本経済が再度成長軌道に戻るためには、今までの考え方、やり方を抜本的に見直す必要があるのではないか。筆者は以前このコラムで10年間続いたやり方は、まだ意味があったとしてもすぐに止めて他のやり方に変えるべきだとかなり乱暴な意見を述べたことがあった。この意見について筆者は、依然一片の真実を持っているように思う。様々な変化のスピードが加速度的に速くなっている現在、新しい考え方、やり方を逸早く取り入れて日本経済を再生していくことが望まれる。その意味で、2024年を日本の新しい成長経済元年と位置付けたい。

 

※「THE INDEPENDENTS」2024年2月号 掲載 - p14より
※冊子掲載時点での情報です