「スカイドメインで空の自由化を実現する」
株式会社トルビズオン 代表取締役社長 増本 衛 氏
× 弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 鮫島 正洋 氏
増本:当社はドローンの利活用を推進するために「S:ROAD事業」という空路整備事業を行なっています。そのために当社は三段階の知財申請を行なっています。一つ目はドローンが飛ぶ地点を三次元のドメインで管理するプラットフォーム「スカイドメイン」をビジネスモデル特許として取得しました。二つ目は空路のリスクを評価し、リスクに応じたダイナミックプライシングを行う知財を申請しました。三つ目はリスクを評価した上でAIで最適な空路を計算する知財を申請しました。
現在の悩みは知財の価値評価が難しいという点です。資金調達する際に価値としてどのように判断するべきなのでしょうか。
鮫島:VCは特許ではなく貴社に投資していて、貴社のビジネスや事業計画がどれだけ魅力的かつ実現可能性が高いか、そこに知財がどの程度関わっているかなどが関心事です。例えば、会社をM&Aする際や特許を担保に融資を受ける際などは、特許自体の価値を評価しなければいけない局面ですが、今回のケースでは、特許自体の価値を評価してもらう必要はないと思います。
増本:定量的に説明する際に取得するのにかかった費用と時間を算定する方法でアプローチすることは可能ですか。
鮫島:費用と時間をコストとして、特許によるリターンとの関係を比較し、リターンが上回っていることを説明すべきだと思います。
増本:特許による参入障壁の形成が特許のリターンだと認識しています。この評価には基準がありますか。
鮫島:「スカイドメイン」の特許を持っているから他の企業が参入しづらいということは特許の価値と言えます。この価値を投資家に説明する際にはある程度の仮定をおいて定量的にする必要があります。例えば「スカイドメイン」の市場規模を100億円と仮定して、特許による参入障壁が存在するケースの貴社売上げ・利益と、特許が存在せず他社が参入し放題のケースの貴社売上げ・利益を比較した場合の差分が特許による参入障壁の形成のリターンであると評価できます。それに加えて、特許が存在すれば、「スカイドメイン」という考え方を日本中の業者にライセンスでますし、付帯的なものとしてコンサルしたり、システムを作ったりすることができます。これも特許によるリターンとして計上すべきでしょう。
増本:自分がビジネスを行う中で後から誰かが特許を取得するということを避けたいという考えが先立ち、私は特許取得を志しました。それに追加して、2件目、3件目と特許を取得していくという戦略についてはどう評価されますか。
鮫島:「スカイドメイン」を本質として、そこからビジネスモデルをピボッティングする際に特許を取得していくという考え方は、特許戦略として正しいと思います。
増本:スカイドメインによるビジネスモデルが完成していれば他社の参入は難しいと考えますが、むしろその他社と連携する際にはどのようにしていくべきなのでしょうか。
鮫島:貴社だけで日本中、世界中に「スカイドメイン」を広げていくことが難しいと考えた際には、特許をオープンにして、大企業に入ってきてもらうことは一つの戦略だと思います。その際には契約の条件を考える必要があります。
増本:次はそのフェーズに入っていこうと考えています。その際にまず仕組みを作るべきだと考えており、来年度には整備していきたいと考えます。また、初めにどの企業と連携を行うかが非常に重要だと考えているのですが、その選定の基準はどうすれば良いと思いますか。
鮫島:貴社に対してどのような対案を出てくるかを見極める必要があります。すぐに成果の独占を要求したり、やたらと返答期間を要するような大企業とは最初からお付き合いしないほうがいいのではないかと思っています。
―「THE INDEPENDENTS」2023年12月号 P.10より
※冊子掲載時点での情報です
<話し手> 株式会社トルビズオン 代表取締役社長 増本 衛 氏 (→ イベント登壇情報) 生年月日:1978年1月9日 出身高校:下関西高校 九州大学経済学府産業マネジメント学科(MBA)卒。大卒後、日本テレコム(現・ソフトバンク)に営業職として入社。2014年にトルビズオンを起業し、ドローン事業を立ち上げた。その後、ドローンの社会受容性を高めるため、sora:share」モデルを考案し、ビジネスモデル特許を取得。 株式会社トルビズオン 設 立 :2014年4月14日 所在地 :福岡県福岡市中央区天神1-1-1 アクロス福岡fabbit 資本金 :32,500千円 事業内容:上空シェアリングサービスsora:share運営 |
<聞き手> 弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 鮫島 正洋 氏 1963年1月8日生。神奈川県立横浜翠嵐高校卒業。 1985年3月東京工業大学金属工学科卒業。 1985年4月藤倉電線(株)(現・フジクラ)入社〜電線材料の開発等に従事。 1991年11月弁理士試験合格。1992年3月日本アイ・ビー・エム(株)〜知的財産マネジメントに従事。 1996年11月司法試験合格。1999年4月弁護士登録(51期)。 2004年7月内田・鮫島法律事務所開設〜現在に至る。 |
株式会社トルビズオン
- 住所
- 福岡県福岡市中央区天神2-3-36ibb fukuoka 304
- 代表者
- 代表取締役社長 増本 衛
- 設立
- 2014年4月14日
- 資本金
- 32,500千円
- 従業員数
- 3人
- 事業内容
- 上空シェアリングサービスsora:share運営
- URL
- https://www.truebizon.com/