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「ひろしまユニコーン10~広島のディープテック起業支援」

 <イベントレポート>
広島県チャレンジ企業セミナー(11/24 開催)


門永 吉章 氏(広島県 商工労働局イノベーション推進チーム 担当課長)
滝上 菊規 氏(広島大学 産学連携部 スタートアップ推進部門長)
馬場 大輔 氏(NEDO イノベーション推進部 スタートアップグループ 主幹)
<モデレータ>
秦 信行 氏(特定非営利活動法人インデペンデンツクラブ 代表理事)

【特別セッション】
「ひろしまユニコーン10~広島のディープテック起業支援」

秦:ご存知のように昨年岸田政権は「スタートアップ創出元年」と銘打って5カ年計画を発表した。それに伴って各地でスタートアップは増えているが、地域的な格差がある様にも思う。では広島のスタートアップはどうなのか、そのあたりを自治体、大学、そして政府系研究機関のNEDOの方にお越し頂いてお聞きしたい。
まず、県の門永様からお願いします。

門永:広島はユニコーン10を目標に掲げて昨年プロジェクトを開始した。ユニコーン級企業を10年で10社創出しようと計画していて、「広島に挑戦することが当たり前の土壌・文化」が生まれることを目的としている。とはいえ、広島のユニコーンの定義は通常のものより緩く創業後10年位以上の企業でも良いことにしている。
 プログラムとしては10の支援メニューを提供する。内5つが具体的な事業支援として、オープンイノベーションの場の提供、事業のアクセラレーション支援、資金調達支援など、2つが支援対象の事業領域として環境・エネルギー分野と健康・医療関連分野、残りの3つが海外展開支援や広島への企業移転支援などとなっている。

秦:続いて広島大学の滝上さんからお話し頂く。

滝上:現状の活動は広島大学だけでなく、中国地域、更には四国地域の大学も含める形で、PSI(Pease & Science Innovation Ecosystem)エコシステムの形成を進めている。
 具体的には、国の資金を活用して、研究者のスタートアップを促進する「Gapファンド」運営を行っている。分野を健康医療、環境・エネルギー等、IT関連等、それに社会課題解決等に分けて審査を実施した。昨年は19件採択し、資金的支援を行った。結果として、3社が起業するに至った。
 学生支援という観点では、学長や自治体等からの資金をベースに、10チームに資金支援を行い、課題解決への伴走を実施した。その中から2チームが起業した。企業との連携では、ウォンテッドリー等と連携し、アントレナーシップ教育を学生向けに実施した。海外連携では、米国オースティンのテキサス大学と研究者や学生の相互交流も始めた。
 今後は、ステージに合わせ、適切に支援できる体制を構築していたいと考えている。Gapファンドは創業前の支援だが、創業後も支援できるVCファンドの組成も進めている。加えて、そうしたスタートアップ支援の持続化を図るべく、現状約90社の会員企業が参画している社団法人「ひろしま好きじゃけんコンソーシアム」にて産学官金の交流を促進している。

秦:続いてNEDOの馬場様お願いします。

馬場:元々私は大学の研究者であったがNEDOに移り活動している。NEDOは経済産業省傘下で様々な事業への助成金を出す資金供給機関である。約8~9割はナショナルプロジェクトの支援で、1~2割はスタートアップや大学等への支援となるが、昨年の岸田首相のスタートアップ元年宣言を受けて1000億円の基金まで増設された。下図「スタートアップ支援事業の全体像」に示した通り、スタートアップのプレシードの段階から社会実装まで様々な支援を行っている。今回の1000億円基金で実用化研究開発(STSフェーズ)以降を包括したDTSU事業を創設したが、これまでと異なり年度や事業別の区切りがなくなり、スタートアップに使い勝手が良くなったはず。従来からの年度予算事業で、PoCを支援するNEPやスタートアップを伴走する支援者や経営人材に対する事業も実施している。
 その他、NEDOはJOICという組織でオープンイノベーションを推進したり、政府関係支援機関16機関でワンストップサービスを行うPLUSという相談窓口も立ち上げたので利用して頂きたい。

 

秦:3人の皆様からの話を受けて、これから質疑応答を行いたい。
まず県の門永さんには広島ないしは中国地方の現状のスタートアップ活動の評価を伺いたい。

門永:広島には広島大学をはじめ幾つかの大学があり、昔から産学連携、なかでもライスサイエンス分野での産学連携の土壌はあると思う。その成果の代表が上場会社のフェニックスバイオだといっていい。広大発のツーセルがそれに続く成功例だと思う。

秦:現状のエコシステムの面で欠けているのは何か。

門永:経営人材の不足を強く感じている。国でそうした人材をプールして地方に供給するような仕組みをつくることをお願いしている。

 

秦:同様の質問を広大の滝上さんにもお聞きしたい。

滝上:先ずは、研究者の意識改革を促していく必要があると思う。中四国地域における大学発ベンチャーの創業数は他の地域と比べて少ない。科研費採択数では差がないが、ベンチャー数に差があるのが現状である。社会実装するためには、早い段階から研究者をサポートする「支援人材」と、創業にあたっての「経営人材」の両者を確保することが重要である。

秦:私はそうした人材の予備軍はVCにいるように思うがどうか。

滝上:その通りである。VC以外にも、事業コンセプト作りやシード段階でのインキュベーションが出来る人材も必要となる。また、今後はM&A仲介といった企業連携が出来る人材も求められる。

 

会場:広島以外の複数の大学の技術を利用しているのだが、それでもユニコーン10に入れるのか。

門永:出来れば広島での企業を歓迎するが、実証実験を広島で行う企業でもいいと思う。

 

秦:今日の議論で人材面、特に経営人材の不足の問題がクローズアップされた。この問題については、インデペンデンツとしても今後考えて行きたい。

 

※「THE INDEPENDENTS」2024年1月号 P.6より
※ 冊子掲載時点での情報です