「AI関連発明の特許出願時の留意点 (1)」
1 はじめに
近時、深層学習を中心としたAI関連技術が飛躍的に発展しており、このAI関連技術に関する発明(以下、「AI関連発明」といいます。)の特許出願が増加しています。特許庁も、これに対応して、審査基準の改定、審査事例の追加、AI審査支援チーム の発足・体制強化などに取り組んでおり、AI関連発明の効率的かつ高品質な審査を行うための環境整備が行われています。企業活動としても、ソフトウェア分野のみならず、あらゆる製品分野に対してAI関連技術が採用されつつあるなどの現状があり、多くの企業がAI関連発明を創出しうる立場にあると言えます。そこで、本コラムでは、AI関連発明を特許出願する際の留意点を数回に分けて、連載することにしました。
2 AI関連発明とは
「AI関連発明の出願状況調査 報告書」(2022年10月・特許庁審査第四部審査調査室、以下、「報告書」といいます。)によれば、「AI関連発明」とは、AIコア発明と、AI適用発明から構成されます。
①AIコア発明: ②AI適用発明: 報告書2頁 |
AIコア発明に付与されるFI(国際特許分類を基礎に細展開された日本国特許庁独自の分類)は、主に、G06Nであり(報告書2頁脚注3)、「特定の計算モデルに基づくコンピューターシステム」がこれに該当します。
AI適用発明は、AI技術が多様な製品に用いられることから、FIも様々なものが付与されることになります。
3 AI関連発明において問題となりうる特許要件
AI関連発明も、他の発明と同様に、特許要件を具備する必要がありますが、その中でも特に、問題となり得る特許要件は、以下です。
⑴ 「発明」該当性(特許法29条1項柱書)
特許を受けるためには、「発明」に該当する必要がありますが、ソフトウェア関連発明においては、「ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されている」場合に、発明該当性を満足するとされています(特許庁審査基準付属書B第1章2.1.1.1(1))。
AI関連発明では、たとえば、教師データ(学習用データ)、学習済みパラメータ等のデータ、学習済みモデル、などの発明が、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて、どの程度具体的に実現されていれば、発明該当性を具備するかが、問題となります。
⑵ サポート要件(特許法36条6項1号)
特許を受けるためには、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されていることが要件とされますが、AI関連発発明では、たとえば、学習済みモデルを組み込んだソフトウェアによって出力された物の場合や、学習済みモデルを組み込んだソフトウェアを用いる特定技術の製品の場合、発明の詳細な説明にどの程度の記載があれば、サポート要件を具備するかが、問題となります。⑶ 進歩性(特許法29条2項)
特許を受けるためには、進歩性を有することが要件とされますが、たとえば、学習済みモデルを組み込んだソフトウェアを用いる特定技術の製品の場合、システムとしては新規であるが、業務手順としては特定分野で人間が行っている業務としては公知である場合など、問題となります。
特許を受けるためには、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されていることが要件とされますが、AI関連発発明では、たとえば、学習済みモデルを組み込んだソフトウェアによって出力された物の場合や、学習済みモデルを組み込んだソフトウェアを用いる特定技術の製品の場合、発明の詳細な説明にどの程度の記載があれば、サポート要件を具備するかが、問題となります。⑶ 進歩性(特許法29条2項)
特許を受けるためには、進歩性を有することが要件とされますが、たとえば、学習済みモデルを組み込んだソフトウェアを用いる特定技術の製品の場合、システムとしては新規であるが、業務手順としては特定分野で人間が行っている業務としては公知である場合など、問題となります。
4 おわりに
次回以降のコラムでは、問題となりうる特許要件について、事例を交えて、特許出願時の留意点を解説していきます。
以上
※「THE INDEPENDENTS」2023年11月号 P.11より
※掲載時点での情報です
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弁護士法人 内田・鮫島法律事務所 弁護士/弁理士 高橋 正憲 氏 2004年北海道大学大学院工学研究科量子物理工学専攻修了後、(株)日立製作所入社、知的財産権本部配属。2007年弁理士試験合格。2012年北海道大学法科大学院修了。2013年司法試験合格。2015年1月より現職。【弁護士法人 内田・鮫島法律事務所】 所在地:東京都港区虎ノ門2-10-1 虎ノ門ツインビルディング東館16階 TEL:03-5561-8550(代表) 構成人員:弁護士25名・スタッフ13名 取扱法律分野:知財・技術を中心とする法律事務(契約・訴訟)/破産申立、企業再生などの企業法務/瑕疵担保責任、製造物責任、会社法、労務など、製造業に生起する一般法律業務 http://www.uslf.jp/ |