＜起業家インタビュー＞

「清掃/設備管理・ホテル運営・システム開発のプロがコラボした異色の清掃管理会社」

■宿泊施設特化のメンテナンス管理アプリ「HOTEKAN（ホテカン）」

「HOTEKAN」は、宿泊施設内における設備の修繕管理や備品管理をスマホで行うことができる清掃会社発のアプリです。従来、施設内の設備故障や在庫不足は口頭や内線電話によるアナログなやり取りしか行われておらず、頻繁に起きる伝達ミスや知見や情報が蓄積しないなどが課題となっていました。これに対し、事象毎に報告/入力、解決/修繕、確認等を「HOTEKAN」を通じてリアルタイムに現場と管理者をつなぐことで、DX化を手軽に実現することができます。

■JR西日本系列など50施設超の導入実績

自社ホテルでの分析では、「HOTEKAN」によって、売止機会損失回避に144万円/年、修繕コスト削減に60万円/年の導入効果があると試算しています。前者は特に宿泊単価や稼働率が高く替えの効かない部屋を有する施設で高い効果を発揮します。後者においては、蓄積される修繕履歴のデータを活用することで、施設自ら修繕を実施するものと専門業者に依頼するものを分類でき、コスト削減だけでなく修繕期間を短縮できる点で支持されています。

■修繕管理/備品管理というユニークなポジション

宿泊施設向けのシステムは、その多くが予約や客室管理を行うものに集中していますが、当社はそこに参入せず修繕管理や備品管理に特化している点が特徴です。宿泊施設側からは「これが欲しかった」という声も寄せられており、引き合いも急増しています。このホワイトスペースでの存在感をさらに強固にし、PMSなど基幹システムとはAPI連携できる機能開発を行うことで、宿泊施設全体のDXに貢献していきます。

■顕在化された問題の解決を入り口に、修繕データ活用で次の展開へ

「HOTEKAN」は設備の異常発生という顕在化された問題に対して、設備管理アプリを月額30,000円、備品管理アプリを月額＋10,000円で提供し、業務改善を推進しながら解決方法のデータベース化を行っています。この修繕DBを用いて、将来の問題解決をスムーズにするだけでなく、設備管理や保管場所の最適化や施設建設計画へのデータ活用、施設の価値査定まで価値提案ができると考えています。ここに向けて年内100施設、また大手清掃元請との連携も図りながら2026年までに1,000施設の導入を目指します。

■ホテル運営、ホテル清掃、システム開発の3足のわらじ

家業が代々続く卸問屋で、父の代でエクセルホテル名古屋熱田を創業しました。私自身は大学院修了後に新規事業開発を得意とする外資系コンサルティングファームに就職しましたが、自分で事業を創りたいと2011年(株)FRINGEを東京で設立し、主にWeb制作やシステム構築等に従事していました。そんな中、父からの要請で悪化したホテル経営の改革を私が担うことになります。支配人として業務改善を進める中で着目したのが清掃業務であり、2015年に(株)リウシスを設立して以降、自社ホテルの清掃や設備管理だけでなく他施設の業務も請負う専門会社として展開してきました。「HOTEKAN」はホテル運営や清掃事業者の当事者として、またシステム開発のプロとして、３足のわらじが交差した結果うまれたアプリなのです。

■今後の展望

我々は常に宿泊施設のお客様を意識したサービス開発を行っています。綺麗にしてほしいに留まらず、また来たいと思ってもらえるよう、作業動線の効率化やマーケティングにプラスになるかについて、宿泊施設に相談される良きパートナーで在りたいと考えています。この理想を追求するには当社にも信用が必要で、IPOも前向きに検討しています。また、日本の清掃品質は海外でも通用するもので、現在インドネシアのホテルで試活用いただくなど、グローバル展開も視野に入れています。「場を通じて、そこに関わる全ての人がお互いに豊かにし合える世界を構築する会社」の実現に向けて、事業に邁進していきます。


interviewed by kips 2023.4.10

※「THE INDEPENDENTS」2023年5月号 - p4-5より