「次世代型シルク産業の創出に向けて」
公開
<話し手>
代表取締役 河合 崇 氏
生年月日:1973年10月13日
出身高校:大阪府立生野高校
1997年京都大学経済学部卒業後、住友商事(株)にて9年勤務。その後、繊維専門商社 田窪(株)に10年勤務(今治市・妻の家業)。2016年当社創業、代表取締役就任。
【ユナイテッドシルク株式会社】
【設 立】2016年4月15日
【所在地】愛媛県松山市大街道3-2-8
【資本金】12,000千円(株主:河合崇)
【事業内容】シルク事業、地域商社事業
<聞き手>
弁護士法人内田・鮫島法律事務所
弁護士 鮫島 正洋 氏
1963年1月8日生。神奈川県立横浜翠嵐高校卒業。
1985年3月東京工業大学金属工学科卒業。
1985年4月藤倉電線(株)(現・フジクラ)入社〜電線材料の開発等に従事。
1991年11月弁理士試験合格。1992年3月日本アイ・ビー・エム(株)〜知的財産マネジメントに従事。
1996年11月司法試験合格。1999年4月弁護士登録(51期)。
2004年7月内田・鮫島法律事務所開設〜現在に至る。
鮫島正洋の知財インタビュー
「次世代型シルク産業の創出に向けて」
鮫島:かつての日本経済を牽引してきたシルク産業ですが、世界に目を向ければ繭生産量は年々増加しており大きな成長分野です。これは、繊維用途だけではなく、シルクから抽出されるタンパク質(=フィブロイン)の研究開発が進み、フード・ヘルス・メディカルの領域で有用性が明らかになってきたことが背景にあります。
河合:国内でも化粧品や医療の分野での応用を目指す会社が近年生まれてきており、米国では2022年3月に5,000万ドルの資金調達を実施したベンチャーがある等、シルクはバイオマテリアルとして新たな市場を形成しつつあります。当社も2016年創業以来この可能性に着目しており、今日までに繭の生産~原料加工~最終製品の製造販売まで一気通貫での事業体制を構築してきました。鮫島:蚕の飼育から原料抽出までを行う一気通貫工場として今年5月に開所した「せとうちシルクファクトリー」では、地域共創型を掲げながらもシルクフィブロインの抽出・生成・加工技術は当社独自の技術を導入しています。
河合:国内のシルク産業を再興し世界へ発信するには、サプライチェーンの中でも特にシルク加工の技術を確立し、新たな特許を取得することが鍵であると考えています。バイオマテリアルとしての用途開発を行うにあたり、ボトルネックとなっていた原料加工技術のピースを当社が埋めることで、養蚕農家にとっても需要側にとっても新たな道が拓けます。鮫島:川上と川下を押さえていることで、求められている技術課題に見通しはあると思いますが、特許取得には解決策もセットでなければなりません。研究開発はどのような体制で行っているのでしょうか。
河合:JSTが主催する令和3年度研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)の産学共同(本格型)に、東京農工大学と愛媛大学と共に採択されています。「シルクフィブロインとカイコ蛹の機能性に基づく次世代型シルク産業の創出」をテーマに、医療や食の分野で共同特許を出願していく計画です。鮫島:大型の資金調達を今後計画されていますが、「何でもできる」では投資家から評価されづらいのが現状です。ニッチトップ戦略がベンチャー企業のセオリーで、市場の選択と集中を行う段階にきています。
河合:まずは「食」の領域に注力していきます。これまで様々な産業のシルク活用に関する相談を受けてきましたが、「絹のような喉越し」という表現に代表されるように、シルクと食は相性が良い。代替たんぱく質としての応用だけでなく、シルクフィブロインの特性を活かした研究開発を水面下で進めており、シルクを用いた新しい食体験を近く発表できると思います。―「THE INDEPENDENTS」2022年11月号 P8より
※冊子掲載時点での情報です