「経団連のスタートアップ躍進のための提言書」
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インデペンデンツクラブ代表理事
秦 信行 氏
早稲田大学政経学部卒業。同大学院修士課程修了(経済学修士)。野村総合研究所にて17年間証券アナリスト、インベストメントバンキング業務等に従事。1991年JAFCO に出向、審査部長、海外審査部長を歴任。1994年國學院大学に移り、現在同大学名誉教授。1999年から約2年間スタンフォード大学客員研究員。日本ベンチャー学会理事であり、日本ベンチャーキャピタル協会設立にも中心的に尽力。2019年7月よりインデペンデンツクラブ代表理事に就任。
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今年3月15日に発表された一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)の提言書「スタートアップ躍進ビジョン~10X10Xを目指して~」を読んだ。大企業の経営者団体だと思っていた経団連が何故にスタートアップ躍進のための提言書なのかという思いもあって読ませてもらったが、網羅的ではあるものの、かなり的を得た提言だと感じた。
その冒頭の「Ⅰ.はじめに」で、「本提言は、わが国でスタートアップの裾野が飛躍的に広がり、同時に世界的な成功を収めるスタートアップが数多く生まれ出るためのエコシステムの実現を目指し、企業の規模・歴史、産学官といった立場を超越した視点で取りまとめたものである」とある。加えて現状、「起業家のエネルギーをうまく活用し、成功するスタートアップを多く生み出してきた国々が世界経済を牽引して」おり、「スタートアップエコシステムの活性化は・・(中略)・・普遍的なテーマとして推し進める必要」があるとした上で、「日本経済を浮揚させ、再度競争力を取り戻すための最も重要な課題として、スタートアップエコシステムの抜本的強化を提言する」と述べられている。
副題にある「10X10Xを目指して」の意味は、「Ⅱ.5年後の目標 10X10Xの世界へ」に書かれている。要は、5年後にスタートアップの「裾野=起業の数を10倍」にし、同時に「高さ=レベルを10倍」にすることだと書かれている。具体的には、まず「裾野」という意味でスタートアップの数を現状の1万社から10万社にすることに加えて、スタートアップへの年間投資額を10兆円にすること、「高さ」という意味でユニコーンの数を100社にし、デカコーン(ユニコーンの10倍、時価総額100億ドル超の未上場企業)を2社以上にすることを目標とすると示されている。
続く「Ⅲ.5年後に起こすべき7つの変化」として、「世界最高水準のスタートアップフレンドリーな制度」、「世界で勝負するスタートアップが続出」、「日本を世界有数のスタートアップ集積地に」、「大学を核としたスタートアップエコシステム」、「人材の流動化、優秀人材をスタートアップエコシステムへ」、「起業を楽しみ、身近に感じられる社会へ」、「スタートアップ振興を国の最重点課題に」を挙げ、その7つのそれぞれの変化を実現するために必要な38に及ぶアクションプランが明示されている。
例えば、最初の変化である「世界最高水準のスタートアップフレンドリーな制度」については、その変化の実現のためのより具体的な施策として、「エクイティの柔軟な活用が可能な制度の整備」、「各種行政手続の簡便化・コスト削減」、「規制改革関連制度の強化と周知、支援体制の確立」、「公共調達におけるスタートアップの更なる活用」、「共通知見横断ライブラリーの整備」、「スタートアップとの契約の適正化」、「個人投資家の参入を促す環境整備」、「ベンチャーデット産業の整備・促進」の8つが指摘されている。
内容は盛り沢山でありこれら全ての実現は難しいと思うが、スタートアップ経済確立競争に出遅れている日本にとっては、このビジョンに示されているかなりの提言を早急に実現する必要があると思われる。一読をお勧めしたい。
※「THE INDEPENDENTS」2022年6月号 掲載
※冊子掲載時点での情報です