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「上場と今後の戦略」

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【河瀬 航大 氏 略歴】
生年月日:1988年鹿児島生まれ
出身高校:鹿児島県立鶴丸高校
2011年筑波大学理工学群卒業後、(株)ガイアックスに入社。2014年(株)当社設立、代表取締役社長就任


【(株)Photosynth 】
事業内容:IoT関連機器の研究開発、入退室管理システムの開発提供
業 績 :売上高 1,175百万円(2020年12月期)
発表日 :2018年12月3日@東京(第341回事業計画発表会)
上場日 :2021年11月5日(東京証券取引所マザーズ市場:4379)

<特別レポート>

2021年12月6日 インデペンデンツクラブ月例会


3年前にこの場でプレゼンし、皆様から様々なアドバイスをいただき、その後上場を果たすことが出来ました。本日IPO賞をいただき、心から感謝申し上げる次第です。

当社は、「Akerun(アケルン)入退室管理システム」を含むIoT・クラウドサービスの開発を行っている会社です。インターネット上でカギの開閉ができる「スマートロック」というクラウドサービスを提供しています。 自宅・職場・ジムなどの複数の鍵を一つに統合できないかというアイデアから起業しました。現在は複数の特許も取得し、「スマートロック」で、指紋認証、顔認証、Suicaで解錠が可能になっています。

■工場の熟練技術者から量産に向け助言を得る

創業同時、スマートロックは一般家庭向けの商品でした。プロトタイプ(試作機)はできたものの、量産開発は、その一万倍大変でした。お金がない、時間もない、人手もなく、毎日ピッチイベントに参加し、投資家の方々に説明してまわっていた時期でしたが、半年後には4.5億円を投資いただくことができました。そして人手不足には、まず縁故採用を中心に30人のメンバーを集めました。モノづくり面では、大田区や山梨県の町工場の方々から技術を教えていただきました。 マーケット戦略では「いかにスピード感をもって商品を早くリリースできるか」が、もっとも大切なことです。日本は「やりたいこと」があえれば、夢を達成できる環境だと思います。若い僕らを年長者の方々が色々と助けてくれました

■法人向けに事業にピボット

個人向け商品だった「Akerun」は当初好調でしたが、個人ユーザーのアクティブ率は3か月後には30%程度に減ってしまいます。家庭には第三者に自宅の鍵をあけて入ってもらうシチュエーションが少なかったからだったと考えます。一方で著しくアクティブ率が上がっていたのは法人でした。ここではじめてオフィス向けの商品を作りはじめました。

「これでいける」と思ったのですが、キャッシュが足りなくなり、残り2か月でフォトシンスは倒産するかもしれないという危機が迫りました。当時社内にいたメンバー30人のほとんどがエンジニアでした。危機的状況を共有するため、全員で合宿をしました。ここでメンバーの意識が変わりました。これ以降、飛び込み営業をするなどして、一致団結して売り続けました。

この時期の学びは、「良いものを作りっぱなしではだめ」ということです。この2か月でトップラインを作れたので、投資家のみなさんが2億円の追加融資をしてくれました。まさに生き延びた瞬間でした。この苦しい時期に、良い商品を作り、そしてお客様に届けてこそというフォトシンスの「文化」を作っていった時期でした。

■事業会社とのアライアンスで次の成長フェーズへ

2021年、錠前の国内大手である美和ロックとジョイントベンチャー設立し、Akerunアプリで電気錠があけられるよう技術そして事業発展のため連携しています。現在の取引先は6千社超で、すべて月額サブスクリプションモデルです。Akerunアカウントを持つユーザーは91万人というインフラになっています。

我々の次の目標は、扉と鍵の関係が「N:1」の世界の実現です。「1つのID」ですべての扉(N)が開くような世界中で使われる「認証基盤」を作ろうとしています。新しい目標に向かって頑張っていきます。本日はご清聴ありがとうございました。


※「THE INDEPENDENTS」2022年1月号 P17より
※冊子掲載時点での情報です