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「「kamui tracker (カムイトラッカー)」で 人気動画製作や効果的な広告戦略を支援」

公開

<話し手>
<代表取締役 中川恵介 氏 略歴>
生年月日:1973年生
出身高校:帝塚山学院泉ヶ丘高等学校
関西学院大学工学部を卒業し、 ペンシルベニア大学に留学。レコメンドベンチャー企業のシルバーエッグ・テクノロジー(株)の創業メンバーで、事業開発に従事。2006年に(株)エビリーを創業、同社代表取締役に就任。

【株式会社エビリー 概要】
設立:2006年10月2日
資本金:870,000千円(資本準備金含む)
所在地:東京都渋谷区渋谷1-2-5 MFPR渋谷ビル12F
事業内容:ビデオソリューション事業、kamui tracker事業
社員数: 69名(正社員のみ、2022年1月時点)


<聞き手>
弁護士法人内田・鮫島法律事務所
弁護士 鮫島 正洋氏(右)
1963年1月8日生。神奈川県立横浜翠嵐高校卒業。
1985年3月東京工業大学金属工学科卒業。
1985年4月藤倉電線(株)(現・フジクラ)入社〜電線材料の開発等に従事。
1991年11月弁理士試験合格。1992年3月日本アイ・ビー・エム(株)〜知的財産マネジメントに従事。
1996年11月司法試験合格。1999年4月弁護士登録(51期)。
2004年7月内田・鮫島法律事務所開設〜現在に至る。

鮫島正洋の知財インタビュー

「kamui tracker (カムイトラッカー)」で人気動画製作や効果的な広告戦略を支援



鮫島:貴社は、世間で動画配信が流行する前から、既に動画配信システムを開発され、リリースされています。

中川:当社は元々配信ツール会社からスタートしていましたが、この数年で世の中が、一気に、個人が動画を作り、アップロードする世界に変わりました。今後の動画市場拡大を見据え、動画配信プラットフォーム「millvi(ミルビィ)」を2011年にリリースしました。その後、クローズドな環境での配信ニーズが高まり、「millvi(ミルビィ)ポータル」をリリース。toC向けの動画がYouTubeへと置き換わっていく一方、その後も“クローズドな環境”での動画配信ツールとしては引き合いがありました。

当初はイーラーニングを提供する会社やファンクラブサイトなどの裏側で利用されることの方が多かったですが、次第に企業内での課題解決手段として活用される例が増加。現在は全体の約6割を占めるまでになっています。特にコロナ禍では社員同士のコミュニケーションや人材教育、新メンバーのオンボーディング(組織定着)における動画のニーズが顕著になりました。経営層や事業部長のメッセージ、社員の自己紹介、社内イベントの様子、社内勉強会の記録、導入しているツールのマニュアルなどを動画としてミルビィポータル上に蓄積します。そうすることで企業文化の浸透や社員間の情報共有が促進されていきます。直近では「動画社内報」の用途で使われるケースも増えてきており、それに特化した動画制作の支援やコンサルティングサービスの提供も始めました。

鮫島:貴社はYouTube動画SNSデータ分析ツールでは国内最大級といわれている「kamui tracker (カムイトラッカー)」もリリースされています。

中川:YouTube動画再生回数は、2020年4月の274億回から、たった1年で313億回再生と急増しています。(kamui tracker調べ) コロナの影響もあり、非対面でのコミュニケーションが望まれ、結果として動画の活用が社会に急速に広がりました。
YouTube国内登録チャンネル数は11万以上あり、国内動画視聴データ数は、3500万以上となっています。(kamui tracker調べ)当社は1,000名以上の登録者を持つYouTubeチャンネルをカバーし、チャンネル視聴者を年齢別、男女別、出身地別、その他マーケティングやターゲティングに必要な項目別に集計し、アルゴリズム等を用いて、見やすい形でご提供します。



「kamui tracker(カムイトラッカー)」の情報を元に、企業やクリエーターは、ターゲットにしたい顧客がチャンネル登録者に多く含まれるYou Tuberを知ることができます。当社は、インフルエンサーマーケティング、YouTube広告運用、YouTubeチャンネルへの関係構築など、総合的にサポートが可能です。ちなみに、カムイとは「神」の意味です。若者の間でバズっている動画を「神動画」と呼んでいたところからヒントを得てサービス名としました。

鮫島:利用いただいている顧客の特徴や顧客規模はどのくらいでしょうか。

中川:YouTuber・企業など2万4,000以上のユーザー様にご利用いただいています。また、有償機能については、大手広告代理店・YouTuber事務所をはじめ、最近では広告主様のご利用も増えています。

鮫島:今年の9月に、シリーズCで資金調達をされました。これからどのように事業を成長させようとされていますか。

中川:映像業界のDX化を推し進めていきます。デジタル領域(特にYouTube上)における映像業務に特化したワークフローをSaaS化し、企画、制作、管理、分析迄の業務を効率化できるサービスを構築します。更にフリーランスの映像制作者、国内にある中小の動画製作会社と連携しながら、映像制作能力を高めいきたいと考えています。これまでは、映像のクリエイティブは、作り手の感覚に依存してきたところがあります。当社は感覚ではなく、データに基づいて質の高い提案ができ、良い動画づくりに貢献できます。マーケティング・販促領域での動画の活用ニーズは引き続き高いですが、採用力を高めるため、社内エンゲージメントを高めるために、動画の活用も増えており、顧客が望む動画は多岐にわたります。

鮫島:面白い構想です。この構想には、映像のクオリティチェックがカギになりそうです。

中川:我々には、動画製作のプロセスの見える化ができているため、何が必要かはわかっています。むしろ、映像化で一番難しいことは発注側と受注側イメージが合わないことです。その齟齬を埋めるのが、「kamui tracker(カムイトラッカー)」であり、すり合わせの元となるのが、我々の持つデータであると考えます。

鮫島:「kamui tracker (カムイトラッカー)」はこれから作るコンテンツの「評価予測ツール」になりえる、ということでしょうか。

中川:例えば、ビデオリサーチが提供している視聴率データは、広告出稿主、テレビ局、広告会社が広告取引に利用などエコシステムの中心に存在します。当社の「kamui tracker(カムイトラッカー)」も、動画を作る前のプランニングや作った後の効果計測などで利用されるデータにしていきたいです。

鮫島:動画分析ツールだった「Kamui tracker (カムイトラッカー)」が動画予測ツールに進化していくとしたら、そのために付加した新しい機能こそが、特許になりえます。

中川:良いことを伺いました。特許に関して、必要性は感じていたが、優先順位としてまずは顧客開拓をスピーディーに行うことをこれまで優先してきたため取得してきませんでした。今後は実装検討段階で考慮に入れ、積極的に特許を取っていきます。

鮫島:ぜひご検討ください。ただし、特許を取ったからといって、他社が入ってくるのを100%防げるわけではないです。しかしながら、シェア維持という効果は期待できます。例えばアマゾンのワンクリック特許を保有していたがために、アマゾンの競合会社はワンクリック注文のしくみを自社のシステムに実装できず、アマゾンは、顧客が競合会社に流れることを阻みました。国内で特許申請から取得までには、1件平均で80万円くらいかかりますが、これだけのコストをかけてこのようなリターンを買うのか、という点が経営判断の骨子となります。


中川:競合参入の抑止になるポイントはないか、引き続き検討したいと考えます。

対談後のコメント

鮫島: 映像業界のDX化には品質保証や成果に対する懐疑心など課題が存在するものと思われる。同社の強みは、「kamui tracker」という動画評価ツールとこれを運用するためのビッグデータの入手経路を保有していることである。この点が映像業界のDX化がレッドオーシャン化しない一つのキーファクターになると思われるが、それに加えて、「kamui tracker」のようと進化に応じて新たに設けられた機能について知財取得を試みることによって、盤石なビジネスモデル構築が可能であると思われる。


中川: 日本国内において、YouTubeだけでも年間900万本以上の動画が新規で投稿されています(kamui tracker調べ)。デジタル動画領域において、今後は量に加えて質が求められる時代に突入します。我々は映像業務を効率化する管理ツールと映像制作サービスで価値提供することで、映像業界を変えていきます。対談を通して、特許取得による知財戦略は考えていかなければならないと感じました。ぜひ、お力添えのほど、宜しくお願いいたします。

(文責 大東理香)
―「THE INDEPENDENTS」2022年1月号 P12-13より

※冊子掲載時点での情報です