「独自物流とITを掛け合わせ、モノが循環するためのインフラを構築します」
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<話し手>
<代表取締役 川野輝之 氏 略歴>
生年月日:1984年4月27日
出身高校:都立舘高校
貿易商社を経て2007年家電製品のリユース事業を鹿児島で起業、2008年法人化。循環の仕組みをビジネスモデルにして、国内外でのリユースリサイクル事業を拡大。全国8拠点で企業や自治体のごみの削減に貢献。京都大学超SDGsコンソーシアムにメンバー参画。
【株式会社ecommit 概要】
設 立 :2008年10月1日
資本金 :20,000千円
所在地 :鹿児島県薩摩川内市水引町2803
事業内容:中古品の卸売業、産廃収集運搬、店舗運営
<聞き手>
弁護士法人内田・鮫島法律事務所
弁護士 鮫島 正洋氏(右)
1963年1月8日生。神奈川県立横浜翠嵐高校卒業。
1985年3月東京工業大学金属工学科卒業。
1985年4月藤倉電線(株)(現・フジクラ)入社〜電線材料の開発等に従事。
1991年11月弁理士試験合格。1992年3月日本アイ・ビー・エム(株)〜知的財産マネジメントに従事。
1996年11月司法試験合格。1999年4月弁護士登録(51期)。
2004年7月内田・鮫島法律事務所開設〜現在に至る。
鮫島正洋の知財インタビュー
独自物流とITを掛け合わせ、モノが循環するためのインフラを構築します
鮫島:リユース、リサイクルを軸に、SDGsに深く関わるビジネス展開をされています。
川野:我々は、自治体や企業から排出される廃棄物の中からまだ使えるものを救い出し、独自の物流とITテクノロジーを駆使して、リユース・リサイクルをグローバルに展開しています。これからの社会は、モノづくりと同じくらいモノの循環が重視されるべきです。捨て方を見つめ直す事は、作り方を見つめ直すことでもあると考えています。鮫島:不透明な廃棄物処理が多くみられる事が業界の課題と言われますが、どういうことでしょうか。
川野:まずは、廃棄物の排出元から、中間処理施設までの運搬過程がブラックボックスになっている点です。廃棄物管理票(マニフェスト)が使用されていますが、記載方法もバラバラ、トレースも不十分で、未だにドライバーの主観で運搬物が計測されています。収益はごみの量×単価で計算されるため、ごみの量を水増しすることができてしまいます。ごみを削減することのインセンティブがない点も課題です。鮫島:運搬過程のブラックボックス化を防ぐ貴社の「EVP(Eco Value PACK)」システムについて教えてください。
川野:アナログで労働集約型の業界課題を、徹底的なDX化で解決します。リアルタイムに排出状況を可視化し、廃棄コストを透明化することで他社との差別化を図っています。運搬過程において専用の計量器にて現場計量したデータが、自動的にBluetooth接続されたスマホ端末と連携しデータベース化するシステムを導入しています。透明性を確保し、現状を可視化することで廃棄コスト削減のアクションにつなげることができます。また、EVPで得たデータを活用し、新たなサービスの開発に取り組んでいます。
鮫島:自治体や国内外の企業など幅広い顧客と取引があります。
川野:現在17自治体に当社の回収システムをご利用いただいており、近々30自治体まで増える見込みです。また、全国1300店舗のリユースショップネットワークがあり、32ヵ国110社の海外顧客との取引を行っております。鮫島:世界中、まだ使えるのに捨てられる『もったいない』で溢れています。
川野:私どものメインサービスの EVC(Eco Value Cycle)は、一つでも多くの「まだ使えるもの」を救い出し、循環させることで環境と経済の両立を図ります。アパレルショップの導入事例では、まだ使える什器や備品類をリユース(ブランド毀損の恐れのあるものは廃棄)、金属類はリサイクルしています。企業の引っ越しの際に排出されるオフィス什器のリユース、大手家電量販店に対しては、消費者への販売促進に下取りを企画提案し、下取りした商品の中からリユースできるものを買取りし、運搬には既存の廃棄物処理車両を活用しています。鮫島:貴社の「EVP」システムは既にリリースされており特許化は難しいですが、回収システムから得られるデータベースの使い道次第では特許化できそうです。知財戦略に関しては、大企業は特許ポートフォリオを組みますが、ベンチャー企業は特許をIR的に使うのが良いです。
川野:廃棄物中のリユース品レスキュー率、トレーサビリティデータの提示など、これまでの中古品や産廃を扱う事業者が取り組まなかったことを、当社はスピード感を持って取り組んできました。「EVP」システムから得られるデータを解析し、コスト削減、経営管理、売上拡大など、自治体、企業、卸、小売店向けにコンサルティング活動ができると考えております。鮫島:これからは、国内事業者の取り組みだけでなく、海外の事業者の取り組みにも着目することも必要です。
川野:業務提携先のフランスのとある企業は、廃棄物管理を行っているのですが、硬化プラスチックの量や、どの廃棄物にどれくらいのプラスチックが混ざっているかが、既にデータ化されています。原材料でなく、リサイクル品の中に新しい資源を発見する、ポテンシャルを発見する、といった活動が、業界内で行われています。循環社会の実現に関わる先進的な取り組みから、目が離せません。鮫島:貴社は廃棄物回収の現場を持っている点が最大の強みです。一方で「リユース」「循環」というキーワードでウェブ検索すると、ecommitがヒットする、といった、ブランド確立も重要だと思います。
川野:システム化による「回収の効率化」で事業を拡大したいと考えてます。さらに、ごみになる前のフェーズにあるビジネスにも、重点を置きたいと考えています。自治体、工場、小売業などの物流ネットワークとデータを抑えることで、ゴミを削減する消費者向けサービスへと進化させていきます。排出側と強いコネクションを持つ大企業ともパートナー関係を築き、SDGsのフロンティアを行く循環商社として2025年のIPOを目指します。*対談後のコメント
鮫島:資源の再循環という社会課題はマイクロプラスチックなど喫緊の問題を含むことから「待ったなし」であるが、その割には進展が遅れている。同社はそのリーディングカンパニーとして大いに注目されているが、特許戦略という観点においても一層の検討を加え、上場という形でさらなる資金調達、ブランド化による事業の進捗を図っていくことを期待する。
川野: 使い終わったモノが循環する巨大インフラ「サーキュラーバリューチェーン」を構築し、持続可能な社会の実現に向けて、社員一同スピード感をもって取り組んで参ります。
(文責 大東理香)
―「THE INDEPENDENTS」2021年11月号 P18-19より
※冊子掲載時点での情報です