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「助成金の活用」

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株式会社グランツカンパニー
代表取締役 澤井 泰良さん

1992年3月明治大学政治経済学部卒業後、エヌイーディー株式会社(現安田企業投資株式会社)入社。ベンチャーキャピタル業務として、未上場企業の投資、審査、事業支援、売却等を行う。2012年4月安田企業投資株式会社退職。リーマンショック以降、銀行の中小企業向け融資、ベンチャーキャピタルの投資が低迷し、ベンチャー企業の資金調達が困難になる中、助成金によるベンチャー企業への資金支援は毎期一定規模実施されており、ベンチャー企業の助成金での研究開発資金確保をサポートする目的で、2012年9月株式会社グランツカンパニーを設立。代表取締役に就任。

急激な円安やインフレ目標といった金融緩和が非常に注目を浴びているアベノミクスではあるが、経済再生に向けた成長戦略の方も着々と進行している。

中でもベンチャー企業にとってありがたいのは、助成金だろう。今年は例年に比べ大型の助成制度ができている。経済産業省系の(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では、イノベーション実用化ベンチャー支援事業として企業の研究開発資金の助成制度が100億円の規模で作られ3月に公募があった。
文部科学省系の(独)科学技術振興機構(JST)では、産学共同実用化開発事業が600億円の規模で作られ、産学による研究開発資金について助成され、これは5月にかけて公募が実施される。

ここで一口に助成と言っても、資金の提供方法には主に二通りのパターンがある。一つは、イノベーション実用化ベンチャー支援事業で実施されている助成金。これは開発費の一部が返済不要の資金として企業に提供されるもので、企業と助成機関がそれぞれ資金を出すことからマッチングファンド方式と呼ばれている。本事業では2/3が助成されるが、1/2といったケースもある。もう一つは産学共同実用化開発事業で実施されている委託研究方式と呼ばれるもので、開発資金の全額を助成機関が支出し、開発終了後に開発の成功度合に応じて資金を返還するものである。産学共同実用化開発事業であれば、開発成功時には10年かけて返還し、開発失敗時は委託研究費の10%を返還すればよいこととなっている。

どちらにしても開発資金を独力で捻出できない企業にとってはありがたい制度であるが、これら助成金は、競争的資金と呼ばれ、申請書を提出後に審査があり、申請すればどの企業でも利用できるというものではない。

助成金の申請についていくつか注意点を書いてみる。
・助成金は公募の際、助成機関による説明会が開催されるケースが多い。この説明会では申請に関する注意点をいろいろ話してもらえるので参加し、聞いておきたい。この説明会では質問も可能である。
・助成金の申請書が数十ページになるのは普通のことだが、研究開発内容の記載に注力し、その部分を一所懸命記載するとそこで疲れてしまい、実用化・事業化の部分が中身が薄くなることが多い。しかし、研究開発同様、実用化・事業化も重要である。こちらも研究開発同様しっかり記載したい。
・審査する側は、貴社の申請書だけを読めばいいという訳ではない。数多くの申請書を読み審査するのが通常である。そのため読みやすい書類作成を心掛けたい。特に、現在の課題は何で、今回どんな開発を行い、開発後どのようになるのか等は、申請の根幹の部分なので分かり易くかつしっかりと記載したい。

先に記載した二つの助成制度の他にも数多くの助成制度が我が国はある。今年は特に経済再生が国策であることから、助成の金額が増加するとともに、助成対象も拡大しているように思える。企業が拡大し、雇用を生み、利益を増やし納税額が増加すれば国家にとってもとてもよい結果である。現在の環境を生かし、事業拡大・成長加速のため、助成金にチャレンジしてみませんか。

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