アイキャッチ

「妊婦と赤ちゃんの健康管理ICTプラットフォームMelody iで医療と健康を支えていきます」

公開


【代表取締役 尾形 優子 氏 略歴】
生年月日: N.A
出身高校: N.A
京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻後、香川に移住。(株)アムロン、(株)イノベイトにてITシステム開発等を行う。診療所向け電子カルテ開発(経産省事業)、四国4県電子カルテネットワーク事業(経産省事業)への参加を機に、2020年株式会社ミトラ(本社:香川)を起業し代表取締役に就任。周産期医療の抱える課題を解決するために、IoT胎児心拍計を使った遠隔医療プラットフォーム構築のため、メロディ・インターナショナル(株)を設立。代表取締役就任。

【メロディ・インターナショナル(株)】
設 立 :2015年7月27日
資本金 :263,966千円
所在地 :香川県高松市林町2217-44ネクスト香川304
事業内容:周産期沿革医療プラットフォーム事業
従業員数:11名

<特別インタビュー>

妊婦と赤ちゃんの健康管理ICTプラットフォームMelody iで医療と健康を支えていきます


■今回はインデペンデンツクラブ大賞グランプリの受賞おめでとうございます。女性起業家としては初めてのグランプリ受賞者です。

これまでコンテスト形式のイベントにいくつか出場したことがありましたがあと一歩という結果が多く、今回の受賞は本当に嬉しいです。創業当初は社会的意義については評価いただいても「売れないよ」という声が多く悔しい思いもありました。最近導入実績も積み上がり、損益分岐点も超え、ようやくスタートラインまで来たという実感です。粘り強くありながらもどこかサバサバしている資質だったからやってこれたと振り返っています。

■お生まれは京都だそうですね。

はい、私は母の実家の京都で生まれ、京大大学大学院で原子核物理学を研究することとなりました。その後、高松で就職したものの会社が倒産し、知人に誘われて鉄鋼会社アムロンに入社。NEDOの電子カルテ事業を担当することになりました。それが医療分野に携わる契機となり、周産期遠隔医療の専門家である香川大学の原量宏教授と知り合い、産科医療に興味を持つようになりました。
電子カルテ事業を四国4県に普及させる仕事していた時、カルテを開発していたオリンパスが撤退を表明し、私がその事業を引き受けることにしたのです。オリンパスから権利を買い、2002年に株式会社ミトラを創業しました。周囲の方からは止めた方がいいと言われたのですが、ちょうど時限立法で株式会社の上限資本金が1000万円から1円に引き下げられた時期でもあったので起業しました。
それから13年、ミトラで代表取締役を務めました。業績も好調でしたが、ミトラは電子カルテ事業に専念するということになり、一方私は遠隔医療に興味があり2015年にミトラをスピンアウトし、メロディ・インターナショナル(株)を立上げることにしたのです。

■その時に高松から出ることはお考えにならなかったのですか。

香川県は島が沢山ありそこの妊婦さんで困っている方が多くいらっしゃるし、その方々に遠隔医療で応えたいと思いました。加えて、病院関係者など協力者も数多くいらしてくれたので、高松を拠点に発信したかったのです。

■それから約5年、経営は順調でしたか。

大変でした。マイナスからのスタートだったので色々な壁にぶつかりました。京都のスタートアップ支援組織SARR代表の松田一敬さんに会いに行って彼からNEDOのTCP(Technology Commercialization Program)を受けてみたらと言われ応募し、チーム作りのためのメンタリングなどを受けることが出来、最後のピッチイベントで4位に選ばれたりもしました。
  そこで、まず分娩監視装置の小型化、モバイル化に取り組み始めました。ただ、開発にはかなりの資金が必要で、残念ながら当時の香川にはスタートアップに開発資金を提供するような土壌や組織がなかったので、地元有志の方々に声を掛けて調達しました。量産化出来る業者が見つからず、デスバレーが現実にあることを体感しました。幸い医学学会の展示で製品が売れ始め、遠隔医療の良さをアピール出来るようになったことは良かったと思います。

■周産期遠隔医療プラットフォーム「Melody i」についてお聞かせ下さい。

「Melody i」はまだ完成はしておらず、常に進化しています。定期検診の始まった7~10か月の妊婦さんのお腹に取り付けたセンサーで測った胎児の心拍や呼吸などのデータをクラウドサーバーに保存し、産婦人科医がデータを診た上で胎児の状況についてアドバイスなどを妊婦に伝えるシステムです。現在70病院に150台位のシステムを入れてもらっています。今は病院に置かれていますが、近い将来には妊婦側に置いてもらい、遠隔での検診が出来る形に持っていきたいと思っています。今年中には機器のレンタルを試験的に始める予定で、1~2年先には更に小型にした普及機を投入したいと考えています。これは世界で初めての試みです。

■海外展開について教えて下さい。

タイにJICA(国際協力機構)の資金でチェンマイ全域に納入しました。昨年はじめにブータンから、王妃が懐妊されたことがきっかけでオファーがありました。王妃は無事出産され、全国民にも利用してもらいたいということで55台UNDP(国連開発計画)とJICAの随意契約で買ってもらいました。途上国は産婦人科医が少ないので、「Melody i」による胎児のデータ収集・保存、それを医師にネットで送って診てもらうというニーズはかなりあると思っています。
将来的には胎児データをAIで診断することも出来るのではないか、あるいは「Melody i」の胎児データを他のデータと組み合わせてより効果的にするなど、事業の拡張性も大きいと考えています。

■今後のIPOも含めた資本政策についてお聞かせ下さい。

今年4月に京都大学イノベーションキャピタル(京都iCAP)より1.5億円の出資をいただきました。これは、京都⼤学以外の国⽴⼤学発ベンチャー企業へ投資が可能となった京都iCAP2号ファンドによる初めての投資案件です。当社の事例が地方大学発ベンチャーの励みになればとも思っています。
IPOについては目指しているという回答になりますが、どのような意味付けをするのか、どのような形がよいのか、様々な方からご意見をいただきながら検討を進めています。インデペンデンツクラブの皆様からも温かいご支援をいただけると幸いです。

(2021.5.19 interviewed by 秦 信行)

※「THE INDEPENDENTS」2021年7月号 - p2-3より