「アスタリスクｖｓユニクロ訴訟について（1）」

１　事案の概要

セルフレジの特許をめぐり，ユニクロ社 と、アスタリスク社が紛争となっています。
アスタリスク社のプレスリリース等 によると、ユニクロ店舗で使用されるセルフレジについて、アスタリスク社が保有する特許権（特許６４６９７５８号）について、両社間でライセンス交渉が決裂し，２０１９年９月２４日、アスタリスク社が、ユニクロ社に対し、特許権侵害差止の仮処分を申し立てました。
これに対し、ユニクロ社を傘下に持つファーストリテイリング社は、アスタリスク社の保有する上記特許権は、従来技術と同一か（新規性違反）、従来技術から容易に想到でき（進歩性違反）、無効であるとして、特許庁に無効審判を請求しました 。
ファーストリテイリング社からの無効審判は，現時点で，合計３件請求されています。 本コラムでは，先に請求されている無効審判（無効２０１９－８００４１）に関する知財高裁の判断が令和３年５月２０日に、判決されましたので、この判決について、複数回に渡り、解説していきます。

２　特許権の有効無効を争う手段（無効審判）

一旦成立した特許権の有効性（無効性）を争う方法には、無効審判という手段があります。無効審判は、特許庁に対し、特許権の有効性の判断を請求する手段であり、請求がなされると、特許庁の審判官は審理を行い、特許が無効であると判断されれば請求成立審決（無効審決）、特許が有効であると判断されれば、請求不成立審決（特許維持審決）がなされます。
審決に不服がある場合は、知財高裁に、審決取消訴訟を提起することができ、訴訟提起がなされると、知財高裁の裁判官は審理を行い、審決が誤りであると判断されれば請求認容判決（審決の取消判決）、審決に誤りがないと判断されれば、請求棄却判決がなされます。

３　本件の経過

本件では、ファーストリテイリング社は、アスタリスク社が保有する特許権（特許６４６９７５８号）について、特許庁に対し、無効審判を請求しました。
特許庁は、審理の結果、「請求項１、２、４の特許を無効とする。」 として）、請求項３は有効と判断しながらも、請求項１、２、４は無効であるとの審決をしました。 アスタリスク社は、この審決に不服があるとして、知財高裁に、審決取消訴訟を提起しました。 知財高裁は、審理の結果、「請求項１、２、４の特許を無効とする。」との審決を取り消すとの判決（取消判決）をして、特許庁が無効と判断した審決が誤りであると結論付けました。このように、本件では、特許庁が、一部無効とした審決の全てを知財高裁が取り消しました。

４　今後の展開

知財高裁で、特許庁が一部無効とした審決の全てが取り消されたことで、審理は特許庁に差し戻され、本判決の拘束力の下で、再審理されることになります。新証拠が見つかるなど独断の事情が無い限り、特許は有効との判断されることになります。
この判決は、ユニクロ社の使用するセルフレジの侵害の紛争にも、大いに影響を与えると考えられます 。 次回以降、アスタリスク特許のポイント、特許庁と知財高裁の判断が食い違ったポイントなどを解説していきます。

※「THE INDEPENDENTS」2021年7月号 - P18より
※掲載時点での情報です

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