「「米国NASDAQ市場(NASDAQキャピタルマーケット)上場と今後の展望」」
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2021年3月1日 インデペンデンツクラブ月例会
特別セッション「米国NASDAQ市場(NASDAQキャピタルマーケット)上場と今後の展望」
<聞き手>
認定NPO法人インデペンデンツクラブ
秦 信行 氏(写真左)
<話し手>
株式会社メディロム
代表取締役 江口 康二 氏(写真右)
1973年生まれ。東京都出身。東海大学を卒業後、新卒で自動車流通ベンチャー企業に入社。最年少役員の経験を経て独立へ。2000年に株式会社メディロムを設立。一般社団法人日本リラクゼーション業協会の理事としても活躍をしており、業界の地位向上へと繋げている。2020年セラピストを題材とした映画「癒しのこころみ」でプロデューサーとしてデビューする。また、同年の12月29日にNasdaqに新規上場を果たす。21年ぶりのダイレクト上場という快挙を成し遂げ、現在日本法人唯一のNASDAQ上場となる。
【株式会社メディロム】
設 立 :2000年7月
資本金 :24億7163万円
所在地 :東京都港区台場2-3-1 トレードピアお台場16F
事業内容:スタジオ運営事業/フランチャイズ事業/ヘルステック事業/デバイス事業
上場日 :2020年12月29日(Nasdaq Capital Markets市場)
業 績 :売上高 39億826万円(2019年度米国会計基準)
従業員数:657名
URL :https://www.medirom.co.jp///
江口:インデペンデンツクラブで事業計画を発表したのは2016年2月。そこで米国での上場を目指すと話しました。少し時間は掛かりましたが昨年12月29日に米国NASDAQ市場に上場することができました。これでようやくスタート地点に立てたと考えています。
結論から言えば、リラクゼーション事業を始めたのはヘルスケアデータを大量に、長期間、しかも簡便に保有できる点に目を付けたからです。そのデータで人々の将来の病気を予測ができるのではないかと考えました。その未来を見据え、現在3つの事業を展開しています。
1つ目がリテール事業で、「Re.Ra.Ku」というリラクゼーション・スタジオを運営しています。現在302店舗(2021年2月現在)、会員数150万人、年間来店数は100万人を超えており、この事業を通じて来店者の基礎的なデータ収集を行っています。
2つ目がIT事業で、ヘルスケアアプリLav(Lifestyle Assist for Vitality)を介してオンラインでチャットによる1対1のパーソナルトレーニングが受けられるサービスを提供しています。2018年に厚労省がメタボ対策として行った健保組合へのガイドライン変更などの好影響を受けており、取引健保組合数は増えています。この事業からは人々の食事と体重の関係などのデータが得られているのです。
3つ目が「MOTHER」というウェアラブルトラッカーによるハード事業で、バイタルデータを取ることを目的としています。ハードはシリコンバレーの温度差発電デバイスベンチャーであるマトリックス社に出資し共同開発しました。生涯充電不要である点が特徴で、取り外す手間もないので連続したバイタルデータが取得できます。集まったデータはオープン化し、外部のヘルスケア事業者と協業を推進していきます。年内発売予定となっております。
秦:まず、何故日本市場への上場ではなかったのでしょうか。
江口:日本ではリラクゼーションという業態の法整備がなされていません。以前から「あんま・はり・きゅう法(略して「あはき法」)で規制される免許登録が必要な事業は存在しましたが、リラクゼーション業はグレーな業態として捉えられていました。自主規制のため業界団体を作り、取引所とも綿密なやり取りを行いました、遅々として進みませんでした。米国で類似企業が2014年から上場していることを知り、当社も米国市場を検討し始めました。
秦:NASDAQ上場は手続きなど大変だったのでは。
江口:1999年のIIJ以来、日本企業のNASDAQダイレクト上場はなく、その間法律や規則が変わったこともあり、国内でこれが分かる専門家は皆無でした。幸い、上場準備チームは英語が堪能であったので、申請手続きなどはスクラッチでやることにしました。会計監査も米国の会計士事務所のリスト上位から電話を掛け、50番目くらいの事務所が引き受けてくれることになりました。
NASDAQにはグローバルマーケットとマイクロキャップを扱うキャピタルマーケットがありますが、当社は後者に上場しました。本日時点の時価総額は50億円前後になっています。NASDAQに上場している同業企業が売上をコロナ禍でも64億円と伸ばしており時価総額は700億円(2021年3月15日時点)付いているとのことで当社も目指していきたいと考えています。
秦:土地勘のないヘルスケア業界で創業されたのは何故だったのでしょうか。
江口:前職では中古車流通ベンチャーでデータマーケティングを統括していました。働きすぎてギックリ腰になり治療院に行ったところ、個人の生活習慣に関する情報をかなり細かく入力させられました。その時にヘルスケアデータを活用したビジネスが成り立つのではないかと考えて起業したのがきっかけです。
秦:「Re.Ra.Ku」では直営だけでなくFC展開も行っています。加盟店に対する提供価値は何とお考えですか。
江口:それはサービスの品質保全です。具体的にいうと、セラピストを本部で採用し教育を徹底しています。入社後3~4週間に亘る集中研修を受け、店舗で働き始めた後も定期研修のプログラムを用意しています。研修プログラムは120あり、すべて受講するには3年半位かかりますが、これを終えて初めて一人前のセラピストと言えるのです。
秦:今後の地域展開、特に出店戦略についてお聞かせください。
江口:これまでは首都圏の研修場所から人材を供給できる範囲内でのエリアで出店を行ってきました。地域の同業者を買収し、当社式の教育メソッドを提供して成功したケースがあり、M&Aを活用したエリア展開は積極的に検討しています。四国や北海道には出店実績が未だないので、拡大余地は大いにあると考えています。
質問者:今後品質重視を貫いて着実なスケール拡大を続けるのでしょうか。それとも量的拡大を優先するのでしょうか。
江口:BtoCの世界で「虚」は長続きしないと考えており、品質重視の戦略を続けていきます。
質問者:これまで資金に困ったことはありましたか。また、なぜ諦めず上場を目指し続けられたのでしょうか。
江口:資金繰りはいつも課題でした。2003年に初めてエクイティでの調達を行いましたが、その後16年も出口を提供できず申し訳なく思っています。上場にこだわったのはセラピストの地位向上、業界の社会的認知のためです。
※「THE INDEPENDENTS」2021年4月号 - p10-11より