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「2020年IPO総括と2021年に向けて」

公開

<話し手>
株式会社AGSコンサルティング
専務取締役 小原 靖明 氏(写真左)
1985年明治大学大学院法学研究科修了。1989年当社入社。2000年IPO支援会社ベックワンソリューション設立、代表取締役就任。2007年合併に伴い、当社取締役就任。2012年3月常務取締役。2014年3月専務取締役(現任)

<聞き手>
株式会社Kips
代表取締役 國本行彦(写真右)

<特別対談>これからのIPOスタイル

2020年IPO総括と2021年に向けて


■2020年総括

写真

國本:2020年新規上場会社数は93社(TOKYO PRO Market(TPM)10社除く)と昨年比8社増(TPM1社増)だった。
小原:コロナで激減すると思われたが、資本市場は早々に持ち直し、3月に延期してしまった会社が6~8月で再申請して無事上場できたのが大きいだろう。大型上場は少なく、小粒になってきている傾向がある。

國本:一番大きなところは雪国まいたけで、それでも時価総額87,760百万円(公開時)だった。
小原:2019年はSansanやFreeeが1,000億円超えだった。2020年のIPOでは雪国まいたけやローランド(84,766百万円)に次いでロボアドバイザー国内最大手のウェルスナビが51,713百万円だった。

國本:2019年IPOしたSansanやfreeeは現在も株価好調である。2020年IPO組がこの先どうなるか。
小原:2021年に入り二度目の緊急事態宣言が発出されて以降も日経平均は高い水準を維持している。先が読めない状況が続いている。東証の新しい市場区分を強く意識している上場企業も多い。明確な基準が公表されるまでは議論できないが、上場準備企業においては新制度をにらみながら進めていく必要がある。

國本:IPOは年間100社前後が標準的になってきた。
小原:証券会社や監査法人のキャパシティの問題が継続しており、100社を大きく超えることは当面ないだろう。AGSのクライアント含め予備軍は増えているが、IPOは今後も選別されていく。

國本:上場審査基準の傾向に変化はあるか。
小原:経営者の資質に関する審査が厳しくなってきている。交際費の内容や報酬、親族企業との取引について以前よりも細かくチェックされる。中には税務調査のような審査になっているものもある。当然コンプライアンスの意識も問われる。この傾向は緩くなることはなく、より一層厳しくなるだろう。

國本:コロナ禍においてもVCの投資額は冷え込むことなく、むしろ大型化が進んでいる。
小原:100億円を超えるファイナンスをする企業も複数出てきており、未上場時のバリエーションも高騰している。これがIPO時の企業評価に良くも悪くも影響を与えている。

■2021年に向けて


國本:東京から地方にIPO熱が波及してきている。
小原:これまで課題だった地方のIPOロールモデルが生まれきており、エコシステムが回り始めている。名古屋のスタメン(4019)や福岡のアイキューブドシステムズ(4495)がその好例だ。

國本:地銀もスタートアップ支援に本腰を入れて取り組み始めた。
小原:VCファンドを組成する地銀も増えており、AGSもアドバイザーとして関わっているものがある。地方はスタートアップ投資の経験値が不足しているので、まずはデットとエクイティでは文化が異なると理解するところから始めなければならない。地方でもキャピタリストが育てばIPOはもっと増える。

國本:東証の市場再編を受けて、地方証券取引所の役割も変化する。
小原:地域経済の中核であることは変わらないので、従来の証券取引所としての機能だけでなく、ビジネスマッチングやM&Aなどをサポートするのも一考の価値があるように思う。一方でTPMは地方企業の上場が多く、昨年はC-Channelのような話題性のある企業の活用事例も生まれた。J-Adviserも増え、ステップアップ上場の事例も出てきている。地方証券取引所においては、TPMとの明確な棲み分けがなされることを期待したい。

國本:SaaSモデルが最近のトレンドになってきた。事業の成長性を定量的に評価できるので赤字上場も可能だ。
小原:SaaS企業は売上10億円未満でも事業計画に蓋然性があれば上場できる。前述のスタメンは売上高396百万円・経常利益▲36百万円(2019年12月期)で17,280百万円(初値)の時価総額がついた。今後の成長にも注目したい。

國本:最後に2021年のIPO展望をお聞かせいただきたい。
小原:検査事業などコロナによって業績を上げている会社が今年から来年にかけて上場してくるだろう。コロナ拡大は国内だけの問題ではないので、グローバルに評価される企業として大型上場になる可能性もある。また、DX領域が国を挙げて推進されているが、だからこそ人にフォーカスしたHR領域に期待している。いずれもニューノーマルに適したビジネスモデルが求められているのは確かである。また、2020年12月29日にリラクゼーションスタジオ「Re・Ra・Ku(リラク)」を展開するメディロムがNasdaq Capital-Marketへダイレクト上場を果たした。IPOは手段でしかないので、海外で勝負できる業種はこれに倣うことも検討されたい。

■ 株式会社AGSコンサルティング 会社概要

代表者  :代表取締役会長 虷澤 力/代表取締役社長 廣渡 嘉秀
スタッフ :430名(公認会計士71名・税理士91名)2020年12月現在
東京本社 :東京都千代田区大手町1-9-5 大手町フィナンシャルシティノースタワー24F
      TEL 03-6803-6710 FAX 03-3510-2800
大阪支社 :大阪府大阪市中央区今橋3-3-13 ニッセイ淀屋橋イースト 5F
      TEL 06-6232-0600 FAX 06-6232-0616
名古屋支社:愛知県名古屋市中村区名駅 4-2-28 名古屋第二埼玉ビル 9F
      TEL 052-533-6695 FAX:052-533-6698
福岡支社 :福岡県福岡市中央区天神1-9-17 福岡天神フコク生命ビル 14F
      TEL 092-737-8211 FAX 092-724-0320
海外拠点 :シンガポール、香港、マレーシア
事業内容 :マネジメントサービス、事業承継支援、企業再生支援
      IPO支援、M&A支援、国際業務支援
URL  :http://www.agsc.co.jp/

※「THE INDEPENDENTS」2019年12月号 - p10-11より
※掲載時点での情報です