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「スマホゲームの新潮流「ハイパーカジュアルゲーム」~ゲーム運営も経営管理もデータドリブンで考える」

公開

<聞き手>
株式会社AGSコンサルティング
専務取締役 小原 靖明 氏(写真中左)
1985年明治大学大学院法学研究科修了。1989年当社入社。2000年IPO支援会社ベックワンソリューション設立、代表取締役就任。2007年合併に伴い、当社取締役就任。2012年3月常務取締役。2014年3月専務取締役(現任)

<話し手>
(株)indigames
代表取締役 野津 幸治 氏
生年月日:1968年11月10日 出身高校:熊本高校
1993年一橋大学経済学部卒業後、(株)リクルート入社。1995年オープンブック(株)入社。1999年(株)インディソフトウェア設立、代表取締役社長に就任。2013年アクセルゲームスタジオ(株)取締役に就任。2014年(株)Donutsベトナム支社長に就任。2018年(株)Indigames設立、代表取締役社長に就任。

【株式会社indigames】
設 立 :2018年12月5日
所在地 :東京都渋谷区松濤2丁目5-19
資本金 :38,000千円
事業内容:ゲームエンジン開発、ゲームパブリッシング及びゲーム開発、3Dデザインスタジオ

<特別対談>これからのIPOスタイル

スマホゲームの新潮流「ハイパーカジュアルゲーム」~ゲーム運営も経営管理もデータドリブンで考える


小原:野津さんは今年52歳ですが、大学時代より一貫してゲーム業界に関わってこられました。これまでのヒストリーについてまずはお聞かせください。
野津:大学3年の頃、リクルートのメディアデザインセンターでバイトをしており、「シーマン」等を手掛けた斎藤由多加氏らと「財閥銀行」の開発に携わりました。そのままリクルートに入社して、その後「The Tower」で知られるオープンブック社に移り、最初に独立したのは1999年。Playstation2が発売されたタイミングです。創業したインディソフトウェアでは、アドバゲームなど新しい手法を用いたゲーム開発を手掛け、2009年にはVCより4.6億円の資金調達を行ってソーシャルゲーム領域に参入しました。結果的に大きく成功することはできず、2012年10月アクセルマーク社へバイアウトしています。

小原:ゲーム業界の変遷をまさに第一線で見てきた野津さんが、indigamesではハイパーカジュアルゲームの分野に挑戦しています。勝機はどのあたりにあると考えたのでしょうか。
野津:iPhoneやAndroidの普及に合わせてグローバルにゲーム配信できる素地が整いました。しかしながら、従量課金が主流のスマホゲームは東南アジア等ではマネタイズが難しい。でも、みんなスマホにエンタメを求めている訳です。最初は無料で楽しく遊びたい。ここに、新しい広告フォーマットの登場によってゲーム会社もメディアモデル(広告収入)で収益が成り立つ進化が起きました。このビジネスモデルなら今後アフリカやインドなど世界中にマーケットが広がる可能性があり、ハイパーカジュアルゲームで勝負しようと決断しました。

小原:スマホゲームはハイリスクハイリターンで事業計画が立てづらい印象ですが、ハイパーカジュアルゲームの場合はいかがでしょうか。
野津:ハイパーカジュアルゲームは一本あたり300-400万円で制作でき、またヒットタイトルをロジカルに判断できるのが特長です。ゲームを作ったらまずは小さく広告を出してCPI(獲得コスト)を把握する。次にどのくらい遊び続けてくれるか継続率を見る。継続率はすなわちLTV(顧客生涯価値)ですから、それがCPIを上回るよう調整する、あるいは開発をストップするなど、指標を元に意思決定ができます。従来のスマホゲーム開発は確かに水物だったかもしれませんが、ハイパーカジュアルゲームではデータドリブンな経営が求められます。我々はこのノウハウを有しているので、国内外の大手ゲーム会社とハイパーカジュアルゲームの協業も行っています。

小原:ゲームエンジン会社なのかパブリッシャー会社なのかで企業評価は大きく変わると思います。また市場もグローバルなので国内上場に拘る必要はなさそうですが、IPOについてどのようにお考えですか。
野津:著名なゲームエンジン開発会社であるUnity-Technologies社が近くIPOするのではという噂があり、非常に高い時価総額で評価されています。我々のミッションは「ゲーム産業の民主化」であり、将来的にはエンジンを核とするプラットフォーム企業を志向していますが、当面は自分たちで自社エンジンを活用するパブリッシャーとして展開していく事になると思います。ハイパーカジュアルゲームの主戦場はやはり欧米なので、どこの国で上場すべきなのかについては、色々な方に助言いただきながら検討していきます。

小原:ゲームの原価計算など管理系タスクを疎かにして後から苦労されている会社が多いので、戦略的な準備をされることをおすすめします。また、日本と海外でIPOのレギュレーションは全く異なります。AGSでは海外に拠点を持ちシンガポール上場の支援実績もあるので、いつでもご相談ください。
野津:ありがとうございます。実はインディソフトウェア時代に原価計算が甘いところがあり、デューデリのとき苦労しました。ですので、今回は早い段階から専用サービスを導入してきっちり管理しています。工数についても誰がどの案件に何%稼働したのか、数字がリアルタイムで見えるようにしています。

小原:事業面だけでなく、管理面もしっかり数値で把握している点は素晴らしいですね。野津さんは成功する経営者が持つべき資質を備えていると感じました。日本のゲーム会社が世界で勝つことは業界の悲願だと思うので、頑張ってほしいです。本日はありがとうございました。

■対談を終えて

小原:日本の「ゲーム」が世界を席巻したのも少し前のこととなってしまいました。ハードがPCからスマホに変わり、ゲームそのものが質的量的転換点にあると思われます。そのような状況において貴社が取り組んでいる「ハイパーカジュアルゲーム」は、世界の競合会社と伍していくものです。ベトナムに拠点を有し当初からワールドワイドな展開を図っている貴社に大変な魅力を感じます。
野津:インタビューをしていただくにあたり小原様は当社の事業やビジネスモデルをかなり理解していただいて、非常に話しやすかったです。また、管理面の重要性のアドバイスもおっしゃる通りで、しっかりとマネジメントしていきたいと思います。世界のゲーム産業をアップグレードするというミッションのもと、グローバルで勝負していきます。

■株式会社AGSコンサルティング 会社概要

代表者  :代表取締役会長 虷澤 力/代表取締役社長 廣渡 嘉秀
スタッフ :400名(公認会計士61名・税理士76名)2019年10月現在
東京本社 :東京都千代田区大手町1-9-5 大手町フィナンシャルシティノースタワー24F
      TEL 03-6803-6710 FAX 03-3510-2800
大阪支社 :大阪府大阪市中央区今橋3-3-13 ニッセイ淀屋橋イースト 5F
      TEL 06-6232-0600 FAX 06-6232-0616
名古屋支社:愛知県名古屋市中村区名駅 4-2-28 名古屋第二埼玉ビル 9F
      TEL 052-533-6695 FAX:052-533-6698
福岡支社 :福岡県福岡市中央区天神1-9-17 福岡天神フコク生命ビル 14F
      TEL 092-737-8211 FAX 092-724-0320
海外拠点 :シンガポール、香港、マレーシア
事業内容 :マネジメントサービス、事業承継支援、企業再生支援
      IPO支援、M&A支援、国際業務支援
URL  :http://www.agsc.co.jp/

※「THE INDEPENDENTS」2020年7月号 - p12-13より
※掲載時点での情報です