「危機対応:コロナ禍における日本課題とベンチャー」
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早稲田大学 名誉教授
インデペンデンツクラブ名誉会長
松田 修一 氏
1943年山口県大島郡出身。1972年早稲田大学大学院商学研究科博士課程修了。1973年監査法人サンワ事務所(現・トーマツ)パートナー。1986年早稲田大学システム科学研究所(アジア太平洋研究センター)助教授(1991年教授)。1993年早稲田大学アントレプレヌール研究会を組織、代表理事(現在)。1997年日本ベンチャー学会副会長(2004年会長就任。現在顧問)1998年ウエルインベストメント(株)設立(現在取締役会長)。2007年早稲田大学大学院商学研究科教授(現在:早稲田大学名誉教授)。2015年特定非営利活動法人インデペンデンツクラブ設立、代表理事就任(2019年7月より名誉会長)。
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※2020年6月15日開催「2019年度インデペンデンツクラブ大賞 表彰式」より
GAFAMの時価総額合計が、今年4月に東証一部上場企業の合計を超えました。5月以降もそれが加速しています。デジタルを中心とする第4次産業革命は待ったなしで、日本は相当出遅れてしまっていることをコロナ禍の危機対応を見て感じました。この日本の課題を救済できるのはベンチャーしかない。そんな話を本日はしたいと思います。
未曾有の事態であった新型コロナウイルス感染拡大において、政府は情報を集めながら手探りで対策を修正し続けてきました。ひとつ言えるのは、日本の医療行政は緊急時と平時で対応の切換えが難しいということです。前者は当然ながら柔軟さとスピードが求められます。行政トップの判断に感染症の専門家らの意見が取り入れられていないことも原因です。エビデンスやファクトに基づいて判断をするということが日本では浸透せずにきたので、場当たり的な印象を拭えませんでした。「無知の知」を知ろうとはそういう意味です。
千葉県松戸市のプレシジョン・システム・サイエンス(株)が開発する全自動PCR検査機器は欧米で医療認可を取得しており、コロナ禍においてフランスで大きな貢献を果たしました。しかし、残念ながら彼らの機器は日本で認可が降りていません。医療機器の許認可について日本はひどく遅れており、国内の上場企業でさえ、海外展開を優先するほどです。ワクチンもそう。日本には安価に大量生産できる技術はあるので、これを契機に許認可プロセスの見直しを期待します。
「2025年の崖」として、デジタルトランスフォーメーション(DX)が進まなければ同年以降に最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性があると、経済産業省がレポートを発表し話題になりました。しかし、官のDXが全く進んでいなかったことがコロナ禍で露見しています。全国の病床数や感染者指数は一元管理できておらず、調査や集計は手作業かつ感染者の追跡も個人情報保護を優先しながらで遅々として進みません。IT技術をフル活用するベンチャー企業は、これをチャンスとして捉えてチャレンジしてもらいたいと思います。
IPOにおいては、3~4月にかけて18社が中止または延期となりました。昨年まで80~90社で推移してきた年間IPO社数は落ち込むかもしれませんが、コロナ禍を飛躍のチャンスと捉えるベンチャー企業も多く、灯が絶えることはないと考えています。一方で、環境が大きく変化すると資金は逆流します。いかに資本政策が重要かということであり、それは余裕資金の確保や安易な種類株活用を避けることであって、想定外の危機に対応できるだけの経営の自由度を確保することが肝要だと思います。
日本ベンチャー学会の緊急提言書では、「我が国が国難を乗り切るためにベンチャー企業こそが主役であるという基本認識に立つ」ことを謳っています。周回遅れであった日本のデジタル化において、ベンチャー企業のスピード感は強みであり、また行政はじめ縦割で行ってきたものに対する横串を担うのであろうと思います。一極集中は突破力とリスクが背中合わせですが、ギリギリまでリスクを計算し尽くし、ピボット能力と先見力あるしたたかなベンチャーの時代がこれからやってきます。コロナ禍を契機に大きな経済変革が起こりつつある中、挑戦する人にとってはまたとないチャンスが目前に広がっています。
※「THE INDEPENDENTS」2020年7月号 掲載
※冊子掲載時点での情報です