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「「沖縄発ベンチャーの活性化に向けて」」

公開

<レポート>

2019年11月19日 沖縄インデペンデンツクラブ



鮫島 正洋 氏(弁護士法人内田・鮫島法律事務所 代表弁護士)

小原 靖明 氏(株式会社AGSコンサルティング 専務取締役)

高山 征嗣 氏(株式会社OJAD 代表取締役)

<モデレータ>國本 行彦(株式会社Kips 代表取締役)


國本:まず、OJAD髙山さんより最近の沖縄におけるベンチャー支援環境について解説いただけますでしょうか。
髙山:沖縄県は公的機関のベンチャー支援が非常に充実しており、大きく5つに分類できます。1つ目の「資金供給・ハンズオン支援系」では、公的機関による手厚い支援メニューのほか、沖縄振興開発金融公庫が新事業創出促進出資を行っています。これは全国的に見ても珍しい公庫が直接出資するものです。2つ目の「ビジネスマッチング系」としては、私どものオキナワベンチャーマーケットが挙げられ、台湾など海外企業も含め毎年200社規模で開催しています。3つ目の「ピッチ・イベント系」では、flogs(主催:(株)flogs・(株)レキサス)、DRAGON LOAD(那覇市)、BLUE MOON PARTNERS、Okinawa Startup Festa(いずれも沖縄ITイノベーション戦略センター)などがあり、学生のベンチャーマインドを醸成するという目的が多い印象です。4つ目の「シェアオフィス・コワーキング系」では、Howlive(管理:(株)マッシグラ・(株)沖縄タイムス)、スタートアップカフェコザ(沖縄市)、Gwave Incubateシェアオフィス(宜野湾市)などが賑わっています。5つ目の「IPO支援」に関しては、われわれがIPO Process Support(通称IPS事業)として展開しています。

國本:沖縄の起業家像について、どのようにお感じでしょうか。
髙山:沖縄県内でもたくさんのベンチャー企業が生まれていますが、多くの企業で県外の方が代表を務めています。これは、県内に経営人材が少ないためです。有望な大学技術があってもマネジメントや事業開発ができる人材が不足しており、県外からスカウトされるケースが多くあります。一方で、こういった県外から沖縄にきた経営者に影響を受けて、県内出身者による起業も活発になってきています。
鮫島:沖縄に限らず、日本は先進国に比べて起業する人がきわめて少ないのが現状です。これは、大学卒業後すぐに起業経営するという価値観がなかったからです。しかし、ここ数年でだいぶ変化の兆しが見えており、その代表例が九州大学起業部です。このような取組みが増えてくれば、日本のベンチャー業界も大きく発展するのではないでしょうか。
小原:経営人材もそうですが、支援側の体制にも課題があります。顕著なのは、都市圏である名古屋や大阪、福岡ですら大手証券会社の公開引受担当者がいないことです。起業を増やすだけでなく、起業家を育てるエコシステムを各地域に構築する必要があります。

國本:沖縄科学技術大学院大学(OIST)などから大学発ベンチャーも少しずつ生まれ始めていますが、沖縄の特徴的な産業は何が挙げられますか。
髙山:バイオ分野のベンチャー企業が多く活動しています。これは、沖縄にいる生物の多様性を産業化しようという動きの表れではないでしょうか。
國本:バイオベンチャーにおいて、知財戦略は非常に重要ですが、そのリテラシーやサポート体制について、東京と地方で格差があるように思います。
鮫島:知財だけではなく、他の分野も含めて、情報は東京に集中しています。それ故に、地方企業は知財に対する取組みに熱心ではない印象を持っています。これをサポートする専門人材も十分とは言えない環境ですが、時折ベンチャー企業内で活躍する弁護士や弁理士とお会いするケースもあり、彼ら彼女らの経験がその地方で共有されていくことを期待しています。
國本:ニアショア開発で力をつけたITベンチャーが自社プロダクトを開発するケースも見受けられるようになりました。
小原:IT分野においては、沖縄はインフラが整備されていて、日本で一番充実している地域だと思います。ここに、日本を牽引する起業家や技術者が出てくれば、沖縄のIT業界は景色がかわると思います。

國本:投資家は起業家だけでなくチームを見て投資をします。沖縄ではベンチャー企業に関心のある人はどの程度いるのでしょうか。
髙山:圧倒的に少ないと思います。沖縄の特性を活かした素晴らしいアイデアはありますが、それを事業化し成長させていける営業人材がまずいません。成長段階毎に適材適所で優秀な人材が集まることが成長するベンチャー企業の条件ですが、沖縄においては未だ大きな課題です。
國本:本日の事業計画発表会でプレゼンする沖縄プロテイントモグラフィー(株)の亀井社長のように、地方移住して起業するケースは滅多にありません。大学技術等の創業シーズや衣食住環境など、それだけ沖縄には人が集まるだけの大きな魅力があるのだと思います。
髙山:現実問題として賃金格差という高い壁がありますが、その面以外でモチベートされる方も最近は増えてきたように思います。中には現役から一線を退かれた、経済的な余裕がある方もいるのですが、沖縄の若者のアイデアとベテランの経験値が掛け合わされば面白いと思います。
國本:最近、全国各地で大企業とベンチャー企業とのオープンイノベーション推進が活発に行われていますが、ここ沖縄ではいかがでしょうか。
髙山:「OKINAWA Startup Program」という、(株)琉球銀行、(株)沖縄タイムス社、沖縄セルラー電話(株)、沖縄電力(株)、日本トランスオーシャン航空(株)の計5社が共同で開催するプログラムが2016年に始まっています。各社が持つアセットを活用して、ベンチャー企業の事業拡大をサポートする取組みです。
鮫島:数年前まで、オープンイノベーションは自前主義からの脱却や、ベンチャー企業のテクノロジーを大企業が事業化するといった文脈で捉えられていました。しかし、最近はベンチャー企業の持つ高い企業意識を大企業に移管させるための手法として使われるようになってきているように感じます。沖縄でもベンチャー企業の熱量が様々な企業に伝搬し、地域一体となって盛り上がっていくといいですね。

國本:沖縄では早くからさまざまなことに取り組んでおられ、先進的な事例がたくさんある地域であるということを改めて認識しました。本日はありがとうございました。

※「THE INDEPENDENTS」2020年1月号 - P16-17より
※冊子掲載時点での情報です