「ものづくり・ホビー領域のIT化を牽引するプラットフォーマーを目指す」
<聞き手>
株式会社AGSコンサルティング
専務取締役 小原 靖明 氏(写真右)
1985年明治大学大学院法学研究科修了。1989年当社入社。2000年IPO支援会社ベックワンソリューション設立、代表取締役就任。2007年合併に伴い、当社取締役就任。2012年3月常務取締役。2014年3月専務取締役(現任)
<話し手>
tryangle株式会社
代表取締役 藤原真吾氏(写真中央)
生年月日:1983年4月23日 出身高校:上宮高校
大阪市立大学法学部卒業後、外資系製薬会社にてMRとして、最優秀営業賞など数々の成果を残す。組織改革プロジェクトの実行、マーケティング戦略も経験し、2016年より関西支店長として全社戦略、エリアマーケティング、組織運営を経験。パラレルキャリアとして兼務にて1年半ハンドメイド業界を経験後、2018年当社設立、代表取締役に就任。グロービス経営大学院経営研究科経営専攻。
取締役 福田久美子氏(写真左)
生年月日:1982年4月3日 出身高校:N/A
大学卒業後、(株)エス・エム・エスで営業・育成リーダーに携わり2012年(株)CP JAPAN設立、代表取締役就任。ハンドメイド業界でコミュニティ、EC業務に携わる。2018年2月に代表の藤原と共に当社設立、取締役就任。グロービス経営大学院経営研究科経営専攻
【tryangle株式会社】
設 立 :2018年2月15日
資本金 :6,250千円
本 社 :大阪府大阪市北区紅梅町2-17 第8田渕ビル3階
事業内容:ハンドメイド特化型SNS×EC(ソーシャルコマース)
URL :https://try.croccha.com/
<特別対談>これからのIPOスタイル
ものづくり・ホビー領域のIT化を牽引するプラットフォーマーを目指す
■ハンドメイド好きの集まるSNSアプリ『croccha』
藤原:当社はハンドメイド好きの集まるSNSアプリ『croccha(クロッチャ)』の運営を行っています。ユーザー同士が自分の作品の投稿を通して交流できるだけでなく、作品の材料やレシピを知ることができ、材料をそのまま購入することができます。小原:ユーザーの9割が女性というのが特徴的です。そもそも、ハンドメイドの国内市場が3,000億円もあることに驚きました。
藤原:これほどの規模の市場があるにもかかわらず、女性中心のコミュニティのため男性の間ではほとんど知られていない、そしてIT化が遅れている現状があります。業界としてもITの必要性は理解しているものの、ITに強い人材もノウハウも乏しいためです。
小原:福田さんはエス・エム・エスを退職後、ペーパークラフトのECショップの運営会社を立ち上げ、1年で1万人のコミュニティを作った経験をお持ちです。当時のノウハウが『croccha』にも活かされているのですね。
福田:主に家事の合間にハンドメイドをする母親や主婦をターゲットとし、単に作品を作るだけでなく、作品を通じて共通の趣味を持つ仲間と交流できる場を設けることで、ファンを拡大させています。
■ECプラットフォームのパッケージ化による横展開
小原:業界最大手の藤久を筆頭に、小売店との協業も進んでいます。これまでなぜEC化が進んでこなかったのでしょうか。藤原:ユーザーが商品の名前がわからないため、欲しいパーツをECサイトで検索できないという課題があったためです。当社では画像認識とAIを組み合わせた独自のエンジンの開発を進めています。ユーザーがアプリに作品を投稿すると、自動で商品のタグ付けが行われ、作品に使われている材料を知ることができる仕組みを構築していきます。
福田:将来的には楽天のようなモール型ECプラットフォームの形成を目指しています。ECモール上で各店がまとまることで、ロングテール戦略を展開する狙いもあります。
小原:顧客の離脱率が低く、価格競争もほとんどない趣味の領域なので、ここで地位を確立できれば強固な経営基盤を作ることができると思います。ビジネスモデル自体はシンプルであるからこそ、今のうちから将来的な横展開を見据えた設計にすることで、貴社の企業価値を高めることがポイントではないでしょうか。ものづくり系で同様にEC化が進んでいない領域は他にもありますよね
。 福田:ガーデニングやDIYを含めたホビー関連市場は国内で約8,000億円にのぼるので、パッケージ化による横展開に期待できると思います。 藤原:さらに、アメリカではハンドメイドの市場だけでも約5兆円の規模があるといいます。日本の潜在市場を拡大しつつ、海外進出も視野に入れていきます。
■株式上場に向けて
小原:今後の展開について教えてください。藤原:現在進めている資金調達は主に人材の補強に充てたいと考えています。エンジニアとデザイナーを増員し、プロダクトマーケットフィットを目指してアプリの質を向上します。マーケティングチームを新たに立ち上げ、他社との協業を進めていきます。
小原:順調にEC化を進めていけば、自ずと上場も見えてくると思います。
藤原:5年後までに売上30億円規模に成長し、マザーズ上場を目指しています。上場までに内部の管理体制はどの程度整えておくべきなのでしょうか。
小原:監査法人からショートレビューを受ける前から決算書は完璧にしておくべきです。日々の行動を数値化して、それに基づいてPDCAを高速で回していくような文化が根付けば、必ず伸びていく組織になると思います。まずは今のビジネスモデルでの収益化を目指してください。本日はありがとうございました。
※「THE INDEPENDENTS」2019年10月号 - p22-23より
※掲載時点での情報です