アイキャッチ

「伝統あるモノづくり企業を中長期的に支援し、グループ全体での成長を目指します」

公開

<聞き手>
株式会社AGSコンサルティング
専務取締役 小原 靖明 氏(写真左)
1985年明治大学大学院法学研究科修了。1989年当社入社。2000年IPO支援会社ベックワンソリューション設立、代表取締役就任。2007年合併に伴い、当社取締役就任。2012年3月常務取締役。2014年3月専務取締役(現任)

<話し手>
株式会社匠堂
代表取締役社長兼CEO 朴理沙氏
生年月日:1989年9月9日 出身高校:都立富士高校
早稲田大学商学部卒業後、日本たばこ(株)へ入社。外部企業への出向時、創業130年の東北の中小製造業の社長の右腕として経営支援に参画。当時「25歳・高学歴・女性…」と警戒されていた中、貢献できることを探し業務することで現場の方々と信頼関係を構築。結果、各種業務改善や海外販路開拓を提案~実行し収益改善に貢献。2018年3月より当社代表取締役社長 兼 CEO。

取締役副社長兼CFO 豊重匠汰朗氏
早稲田大学商学部卒業後、新卒でアクセンチュアへ入社し、コンサルティング業務に従事。2018年7月より匠堂へ参画し、M&Aや資金調達、上場準備に責任を持つ経営管理本部長に就任。2019年4月より副社長就任。

【株式会社匠堂】
設 立 :2017年9月29日
資本金 :1,000千円
本 社 :東京都台東区柳橋1-2-12柳橋Mビル1F
事業内容:製造業企業の株式を保有する持ち株会社 子会社において各種製品の製造・販売
URL :https://takumido.co.jp/

<特別対談>これからのIPOスタイル

伝統あるモノづくり企業を中長期的に支援し、グループ全体での成長を目指します


■グループ化を通して中小製造業の再生・飛躍を実現する

小原:日本では全国の企業数420万社のうち99.7%を中小企業が占め、毎年3万社が廃業しています。後継者難だけでなく、不況による販売不振や放漫経営、人手不足も深刻な課題となっています。
朴:当社は課題を抱える中小製造業をグループ化し、中長期的に事業の再生・活性化を行っています。各企業の技術力やノウハウ、従業員を尊重した上で、当社の持つ改善と革新アプローチにより、各社の成長を支援します。
小原:金融機関やM&Aファーム、事業再生のコンサルティング企業など中小企業の支援者は増えていますが、貴社の魅力はこれらのプレーヤーをまとめて一括でコーディネートする点にあるのではないでしょうか。
豊重:1社では規模が小さいがゆえに支援の対象にならないような中小製造業を集めて大きな組織にすることで、プレーヤーが入ってこられる体制にするという意味合いもあります。
小原:数百億円を投資し、人財やモノ、情報を潤沢に与えて経営改善を図るPEファンドもありますが、ある程度規模が大きい会社が対象になります。貴社のように売上が5億~20憶円規模の会社に対して組織に入り込んで支援を行う企業は珍しいと思います。

■中小企業の未来を担う経営者の育成

小原:グループ各社の経営を担う人財はどのように確保しているのですか。
豊重:現場の信頼や実行力のある社内人財を引き上げ、彼らの強みである製造の領域にフォーカスしてもらいながら、当社でバックオフィス業務を支援する体制をとっています。
小原:グループ内で経営管理人財は登用・育成できると思いますが、本質的な経営者はそう簡単に見つかるものではありません。将来的に、グループ内に経営者を育成する養成学校を立ち上げ、継続的に経営者を輩出できるような仕組みを作るのも面白いのではないでしょうか。
朴:グループ各社で実際に経営を学んだ後で経営者として採用するだけでなく、経営者候補として外部企業に紹介することもできそうですね。当社をハブにして大企業と中小企業・ベンチャーの接点を増やし、大企業内の人財が中小企業の経営に関わるきっかけを創れればと思います。
小原:新規事業開発や経営人財の育成に関心のある大手の事業会社との間で連携が進めば、実現する可能性は大いにあると思います。ぜひ検討してみてください。

■株式上場を目指して

朴:上場に向け、数億円規模の資金調達を進めています。既存企業の強化と、既存企業とシナジーのある企業を中心にグループを拡大していきます。
豊重:これまでは、多角化によるリスク分散を意図し、グループ化を進めてきました。各社の収益サイクルの相互補完を実現し、急な景気変動にもグループ全体で耐えられる強さを実装してきました。今後は、既存企業のバリューチェーンを補完するようなグループ化も検討していきます。今まで外注していたプロセスを内製化することで、コスト削減や納期短縮を実現し、収益力の強化を進めていきます。
小原:上場の際には買収先の戦略も明確にしておかなくてはなりません。川上から川下まで一気通貫で展開できるようになれば、価格競争力や市場性優位が生まれます。さらに化粧品容器から他の製品へと企業群を増やしていくことができれば、より事業構造が強固になると思います。
豊重:当社はVCやファンドとは異なりイグジットをせずに中長期的な支援を行い、改善の先の革新的なフェーズまで各社を成長させることを目指しています。AIや先端的なテクノロジーを、当社を通して導入していくことで各社を新しい成長ステージに乗せる実績が作れれば、さらに軌道に乗っていくと考えています。
小原:当面は現在のモデルで成長できると思いますが、時価総額数百億円規模では、実際に自分たちがグループ企業に投資できるのは数十億円程度にとどまります。上場後、いかにして貴社が数千億規模の時価総額をつけていくかが課題になりそうですね。今後の発展に期待しています。本日はありがとうございました。

※「THE INDEPENDENTS」2019年8月号 - p26-27より
※掲載時点での情報です