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「ハードオフ流こだわり経営とは」

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株式会社ハードオフコーポレーション
代表取締役会長兼社長 山本 善政さん

1948年新潟県生まれ。1970年拓殖大学卒業。1972年サウンド北越(現・ハードオフコーポレーション)創業。2000年11月ジャスダック市場に株式上場(2005年3月東証1部市場変更:2674)。日本リユース業協会会長、(社)日本フランチャイズチェーン協会会長、新潟経済同友会代表幹事、事業創造大学院大学客員教授。

設 立:1972年7月 資本金:1,676百万円
所在地:新潟県新発田市新栄町3丁目1番13号
業 績:売上高 12,025百万円 経常利益 1,431百万円
    自己資本比率 83.9% 売上高経常利益率 11.9%(2013年3月期)
http://www.hardoff.co.jp/

私は新潟県中条町の電気屋の次男として生まれ、兄が家業を引き継いだので、24歳のときに新発田市の商店街で15坪のオーディオ店を始めました。1993年には中古(リユース)品仕入販売の「ハードオフ」に業態転換、約200の直営店と約500のFC店の全国700店舗の日本最大のリユース会社に成長しました。現在、家電・カメラ・楽器だけでなく、洋服・家具・車用品・おもちゃ、そしてお酒までいろいろなリユース業態を展開しています。

「ブックオフ」創業者の坂本孝さんは私の恩師です。当社は「ブックオフ」の最大FC店でもあり、新潟と千葉で54店舗展開しています。また現在当社は同社の筆頭株主でもあります。平成バブルが弾け中古オーディオ店に業態展開を考えていた時に、偶然、以前勉強会で一緒だった坂本さんに再会しました。この画期的な仕組みを、本だけでなくソフトにも転換できないかと提案し、1993年に1階を「ブックオフ」、2階に「ハードオフ」の1号店を出しました。現在、坂本さんは新しいビジネスモデルの「俺の株式会社」で急成長しています。桁の違うセンスを持った方としてとても敬服しています。

株式上場は元ジャフコの金沢崇さん(当時まだ26歳でした)との出会いからです。まだ資金的にも安定していない時期に「あなたの会社は株式上場できます」と言われて、まるで宇宙人に出会ったような感じがしました。それから3年後、野村證券、新日本監査法人という応援団からのアドバイスに素直に従った結果、2000年にジャスダック上場できました。

人類最大の発明である「お金の仕組み」を、経営者はもちろん、義務教育でも学ぶ必要があると思っています。あの倒産危機の時に、第四銀行の担当者であった高橋尚樹さんに、「あなたの会社にはもう二度と貸さない」と厳しく叱られ、それで目が覚めました。高橋尚樹さんは新潟証券の社長になられました。まさに半沢直樹の世界です。

ハードオフが最も強くこだわるのは「経営理念」です。バブル崩壊で7店舗あったオーディオ店の売上がわずか半年で半減しました。それまでの経営理念が否定されました。自分さえ儲かればいい、だから苦しみました。当社の経営理念は「1.社会のためになるか」「2.お客さまのためになるか」「3.社員のためになるか」「4.会社のためになるか」です。優先順位は1→2→3→4でなくてはなりません。そしてこの4つ全てを満たす事が必要です。会社の利益は最後で構わない。売上を追求しなくなると逆に利益が出るものです。とにかく経営理念が一番大事です。

次に重要な事は優れたビジネスモデルを作る事です。キーワードは「困っているを解決する」。そして「価格の決定権を持つ」。「Change」は「Chance」に繋がります。そのためには「Tabooへの挑戦」と「リセット思考」が必要です。夢を実現するには、高い志を持ち、優れたビジネスモデルを作り、それに沿った戦略、戦術、戦闘を考える事です。戦いを略す事が戦略であり、それが同業他社に比べ高い利益率と自己資本比率である理由でもあります。りっぱな経営計画書は必要ありません。経営者は真実と事実の違いをよく見極め、そして自らの判断で決断する事です。

最後に「小事は大事」という事をお伝えしたいと思います。あいさつと掃除には不思議な法則があり、業績に比例します。東京ディズニーランドという優良巨大企業が経営の最後の拠り所にしているのが「掃除」です。「掃除の価値」は、単にそこを「清潔にする」だけに終わらず、「掃除」をスイスイ、テキパキとする人間の動きそのものが、その商いの場に「気」を生み出します。お客は取り立てて意識しないだろうが、その「気」を吸って「元気」になり「楽しいっ」と感じ、そうなってはじめて感動が生まれます。「掃除」する側もお客の悦ぶ顔を見て、あるいは「きれいだ」という評判を得て、自分の行動から結果が出ることを知ります。

―2013年12月5日新潟インデペンデンツクラブより

※全文は「THE INDEPENDENTS」2014年1月号 - p15にてご覧いただけます