アイキャッチ

「岡山伝統の繊維産業を活かして地方創生に貢献」

公開

<聞き手>
株式会社AGSコンサルティング
専務取締役 小原 靖明 氏(写真左)
1985年明治大学大学院法学研究科修了。1989年当社入社。2000年IPO支援会社ベックワンソリューション設立、代表取締役就任。2007年合併に伴い、当社取締役就任。2012年3月常務取締役。2014年3月専務取締役(現任)

<話し手>
株式会社paintory
代表取締役 片山 裕太 氏(写真左)
生年月日:1983年12月6日 出身高校:作陽高校
茨城大学工学部卒業後、(株)ベイカレントコンサルティング、(株)山田養蜂場を経て、前身となるem-Agency(個人事業)を創業。2015年当社設立、代表取締役就任。

【株式会社paintory】
設 立 :2015年3月1日
資本金 :91,054千円(準備金含む)
本 社 :岡山県津山市元魚町60-2
事業内容:ECアパレルプラットフォーム『paintory.com』の運営
URL :https://paintory.com/

<特別対談>これからのIPOスタイル

岡山伝統の繊維産業を活かして地方創生に貢献


■地元・津山での起業への想い

小原:岡山は学生服の生産量が日本一で、国産ジーンズ発祥の地でもあります。地場の工場とも連携してメーカーとして高品質の製品をより安価に消費者に提供できるのは、東京ではなく岡山にある貴社にしかできないポイントだと思います。
片山:アパレル業界の商流に課題を見出し、繊維産業が盛んな岡山ならではのビジネスで勝負したいという想いで立ち上げたのがアパレルECプラットフォーム『paintory』です。
小原:片山さんは、茨城大学卒業後、東京のITコンサル会社を経て岡山にUターンし、起業されました。
片山:『paintory』にたどり着くまでに数十個のサービスを立ち上げ、試行錯誤を繰り返しました。その間は請負のシステム開発で日銭を稼いでいましたが、東京の案件を受ける際に地方だからという理由で安価な価格でしか受注できませんでした。強みを活かしてより多くの利益を上げ、それを従業員に還元することで、どんな場所でもやりたい仕事でお金を稼げる環境を作ることが、地方で起業した私たちの課題だと考えています。

■誰もがアパレルオンラインストアを持てる『paintory』

小原:『paintory』ではオリジナルのアパレルブランドの立ち上げから商品デザイン、ショップの開設、商品の生産および発送までをウェブ上で一括で管理することができます。
片山:ユーザーは、当社が提供する無地の T シャツや帽子などのベースアイテムにオリジナルデザインのプリントや刺繍を施し、自ら価格を設定して販売することができます。初期費用は無料で在庫負担も必要ありません。特にYouTuberやモデル、アーティストなどのユーザーが多く、セルフブランディングの一環として活用されています。
小原:従来のアパレル業界には商品企画から販売までの間にいくつものプレイヤーを挟む複雑な商流が構築されていました。貴社は製造から小売までを一括で行うことで高い利益率を実現しています。
片山:SPA(製造小売業)のモデルを取っているため、商品のクオリティや製造スピード、価格などすべてを自社でコントロールできる点が当社の強みです。自社工場で製造から出荷までは3営業日を目安にしており、月間6000着に対応が可能です。

■今後の事業展開

片山:2017年のリニューアル以降、マーケティングはインスタグラム広告しか行ってきませんでした。今後はアーティストやモデルなど、当社でセグメントできるユーザー属性に合わせた広告展開による認知度向上を進めます。また、インフルエンサーのマネジメントを行う企業に対してアプローチすることで、大口ユーザーの増加を図ります。
小原:アパレルメーカーとしては、アイテム数をどれだけ増やせるかも魅力に関わってくると思います。
片山:これまではTシャツやパーカー、キャップのみの提供でしたが、7月までに第1弾としてデニム2種とワークパンツ3種を追加予定です。毎月10~15アイテムを追加し、年間で120アイテムの拡充を見込んでいます。
小原:海外進出は視野に入れていますか。
片山:当初から製造には海外でシェアの高いメーカーのマシンを使用しています。中国や東南アジアなどの世界的なアパレル原産国に対して、『paintory』のサービスをパッケージ化してすぐに海外でも展開できるように、既に現地メーカーとの取引も行っています。

■津山から初の上場会社を目指す

小原:アパレル業界では、最近では売上600億円超のマツオカコーポレーション(3611)が2017年に東証一部に上場しています。従来型のアパレルとは異なる新しいビジネスモデルとして、貴社もIPOが見えてくるのではないでしょうか。
片山:津山は岡山第三の都市ですが、人口は間もなく10万人を切る見込みです。パブリックな企業になることで、地域の活性化と雇用創出に貢献したいと思っています。資金調達や株式公開では経験豊富な方々からアドバイスをいただきながら事業拡大を目指します。
小原:アパレル業界はシュリンクしていると言われていますが、貴社のように別の角度からアプローチすることで活路を見出すことに期待しています。是非私の方でもサポートできればと思います。本日はありがとうございました。

※「THE INDEPENDENTS」2019年7月号 - p26-27より
※掲載時点での情報です