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「Sansanの上場について想うこと」

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【國本 行彦】
1960年8月21日生。
東京都立志村高校卒業。
1984年早稲田大学法学部卒業後、日本合同ファイナンス(現・JAFCO)入社。
2006年1月5日(株)インディペンデンツ(現(株)Kips)設立、代表取締役就任。
2015年11月9日 特定非営利活動法人インデペンデンツクラブ 代表理事就任(現理事)




 名刺管理システムのSansan(株)(4443)が東証マザーズに上場承認されました。
 インデペンデンツクラブでは2009年11月号にて寺田親弘氏へ起業家インタビューをいたし、同年11月18日のTHE INDEPENDENTS CLUB会員特別企画でプレゼンいただきました。
 「名刺活用を文化にする」という強い意志の元、寺田氏が慶應義塾大学及び三井物産時代に知り合った富岡圭氏、塩見賢治氏、設楽諭氏の4人の創業メンバーが2007年6月に起業しました。彼らは1年間は無給で働き徹底したローコスト経営で単月黒字を達成しました。一方で名刺管理システムはハイバリュー価格戦略を徹底させました。
 当時印象的だったのは、名刺管理システムが認知されるまではパソコンでもなんでも売って必死に収入を確保するという寺田氏の言葉です。名刺管理という今までにないサービスの価格決定をどうするかという問いに対して、「違和感を覚えるくらいのプライシングでないと新しい市場は作れない」と低価格普及戦略ではなく高付加価値でサービスを充実させていくという寺田氏の経営戦略にも感心しました。
 創業期に投資したインキュベイトキャピタルパートナーズ赤浦徹氏は2007年8月に取締役に就任して以来、ハンズオン支援を行っており、現在は取締役(監査等委員)を務めています。ベンチャーファンドは通常10年満期を迎えるとcash化して解散しますが、出資者に現物株式で分配して解散する事は極めて珍しく関係者の信頼関係が伺えます。
 スタートアップ企業にリスクマネーを供給するベンチャーファンは「paitient money」とも言われ、忍耐が求められます。しかしこれも新しい価値創造に人生を賭ける起業家がいてこそです。Sansan(株)の関係者の皆様おめでとうございます。



※「THE INDEPENDENTS」2019年6月号 - p38より