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「熱水洗浄処理技術で世界中の化学・溶剤処理をゼロへ」

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【安田 享 氏 略歴】
1949年生まれ。兵庫県立尼崎北高校出身。姫路工業大学金属材料工学課卒業後、酸化チタンnano合成研究に従事。常温硬化セラミック化チタン材料を開発するとともに、その密着技術の研究から亜臨界水洗浄(HOTJET)とチタン錯体によるコンクリートの塩害抑制技術で特許取得、並びに兵庫県発明賞を受賞。2002年(株)オプト代表取締役就任(現任)。2016年IET研究会を設立、副理事長に就任。2018年当社設立、代表取締役就任。

【株式会社HotJet】
設 立 :2018年2月1日
資本金 :1,000千円
所在地 :京都府京都市左京区浄土寺上馬場町110-1
事業内容:熱水洗浄機の販売及び高度化技術開発
従業員数:1名


熱水洗浄処理技術で世界中の化学・溶剤処理をゼロへ



■亜臨界水洗浄技術を事業化

 『HOTJET』は、水の状態変化の熱エネルギーを活用した新しい表面処理装置です。「加圧高温水洗浄」と呼ばれるこの技術は、京都大学の知見を活用しています。水温を100度以上に上昇させた亜臨界水の外部噴射を行うことで化学洗剤や溶剤を使用せずに有機物の洗浄と抽出が可能になります。亜臨界水には有機物(アミノ酸や脂肪酸など)を抽出したり分子レベルまで分解する効果がありますが、反応後は水に戻るため環境への負荷が少ないという特徴があります。従来の高圧洗浄や蒸気洗浄に比べて対象物への負荷が少なく、100年以上蓄積された汚れでもわずか5分で洗浄することが可能です。さらに、今後販売予定のコンクリート構造物やペイント向けのコーティング剤によって、対象物を健康体に戻すとともに耐久性・美観を維持し、劣化スピードを遅らせることができます。

■重要文化財の保護等の実証実験が進む

 現在販売している『HOTJET140』を用いて、これまでに天童眼鏡橋(愛知県犬山市・博物館明治村内)などの重要文化財や、壁の落書きなどの公共空間の洗浄を行ってきました。最近では水害被災家屋の熱湯消毒、殺菌など多様な用途での活用が増えてきています。従来の技術では解決できなかった用途でのテストの機会も増えているため、今後はパートナーとの共同開発も視野に入れつつ、それぞれの分野における専用機の開発を進めます。

■今後の事業展開

 現行の洗浄用装置『HOTJET 140』は3年後までに売上約5億円を目指し、リースやレンタルも含めた販売を進めていきます。亜臨界水の温度を200℃まで引き上げた新規開発中の『HOTJET200』等によって、洗浄だけでなく鋼橋や自動車、船舶などの塗膜剥離や、道路メンテナンスなどの市場へ参入します。それぞれのロケーションごとの条件や方法のノウハウを洗浄レシピとしてデータベース化し、装置を購入した業者ネットワーク向けに利用できる情報サービスとして提供することを検討しています。国内向けに技術を確立できた分野については、シンガポールや欧州を中心とした海外向けのアプローチも進めます。環境に優しい処理技術として、「持続可能な開発目標」(SDGs)へ貢献していきます。


※2019年5月号掲載時点での情報です