「「本則上場へのスピードと確実性を高めるTPM上場と上場時ファイナンス」」
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株式会社筑波精工
代表取締役社長 傅 寶莱氏
プロフィール
1969年マレーシア生まれ。2000年東京大学大学院工学系研究科精密工学博士課程修了。2001年三洋シリコン電子(株)入社。2004年筑波精工(株)入社、取締役技術部長。2012年同社代表取締役社長就任(現任)。
<株式会社筑波精工 会社概要>
設立:1985年6月27日
資本金:907.3(百万円)
本社:栃木県河内郡上三川町大字上蒲生字願成寺2168-10
事業内容:静電吸着システムの開発・製造・販売
上場:2018年11月28日TOKYO PRO Market市場(6596)
時価総額:(公開時)4,757百万円
申請期売上高:217百万円(18/3期)
経常利益:△10百万円(18/3期)
株式会社アイ・アールジャパン
投資銀行第三本部長 マネージングディレクター
古田 温子氏
1990年一橋大学商学部卒業、同年野村證券(株)入社。一貫して投資銀行業務(M&A、コンサルティング)に従事。2014年アイ・アール ジャパン(株)入社、経営企画室長(現任)、投資銀行第三本部長(現任)。
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株式会社アイ・アールジャパン 投資銀行第三本部長 マネージングディレクター 古田 温子 氏
筑波精工株式会社 代表取締役社長 傅 寶莱 氏
古田:当社は2017年12月にTOKYO PRO Market(以下TPM)への上場審査を行うJ-Adviserの資格を取得しました。TPM市場を活性化させるとともに、マザーズなどの本則市場へステップアップ上場していく会社を育てていきたいという想いから参入を決めました。そして筑波精工社のJ-Adviserに就任し、2018年11月の上場の際には、同時に8億円のファイナンスに成功しました。TPMにおける上場時ファイナンスの成功はこれまで1例しかなく、6年半ぶりのことでした。
傅:私は中国系マレーシア人で、19歳で来日してから30年になります。当社は1985年の設立以来15年間は半導体生産設備の設計や販売を中心に行っていました。私は1997年から3年間、東京大学博士課程で静電界を活用した吸着技術について研究を行っていました。この技術を事業化するべく、2000年に筑波精工に入社しました。2002年から半導体生産設備販売事業を縮小し、静電界形成技術を基軸とした新規事業を開始しました。
当社の『ウエハーサポーター』は、対象物とベースプレートを吸着させる「静電チャックHPTS」技術を活用した新商品です。現在、半導体のシリコンウエハーは様々な分野で使用されていますが、今後さらに役立てていくにはウエハーを薄く、大口径化する必要があります。薄いウエハーを吸着補強するため、従来はウエハー同士を接着剤で貼り合わせていましたが、無理やり剥離しようとすると割れてしまうという課題がありました。『ウエハーサポーター』は一度ウエハーを吸着すると無外部給電で半永久的にウエハーを吸着維持でき、電圧をかけるだけで簡単に剥がすこともできます。これによって接着剤使用時と比較してより薄いウエハーの生産プロセスを可能にしつつ、コストダウンを実現しています。 電気自動車のインバーター(IGBT)では、薄型のウエハーを使用することでスイッチング抵抗を低くし、長距離、高速走行、自動運転での迅速かつ高速での作動が可能になります。
古田:既存株主が多数いる中で、TPM上場と同時にファイナンスを選択した理由を教えてください。
傅:日本や台湾、米国のVCから投資を受けましたが、長期間にわたっての株主管理コストは会社の負担になっていました。一方でマザーズ上場準備には時間と多額の資金が必要です。このタイミングで早期に上場して資金調達ができれば半導体市場の勝者になれるという確信があったからこそ、TPMへ上場いたしました。
古田:TPMの上場要件において必要な監査報告書は1期間だけなので、他の市場と比較してスピード感をもって上場できるという特徴があります。貴社の場合も、2018年6月の役員決議から半年未満でのスピード上場になりました。
傅:大型案件が進んでいた最中だったので、申請に関する書類作成を無駄なく最短で行う必要がありました。経験豊かな人材を管理部長や室長などに迎えたことでスムーズにTPM上場やファイナンスができたと思います。
古田:TPM上場後、社内での変化はありましたか。
傅:社内全体でのモチベーションが向上しました。今まではどんなに私が当社の技術は他社にない素晴らしいものだ、と熱弁しても、現場のエンジニアは半信半疑な部分があったと思います。TPM上場を通じて自社技術に対する第三者評価がなされたことは、大きな自信に繋がったと感じています。
※「THE INDEPENDENTS」20194月号 - p8-9掲載