「日本の株式市場の問題点(2)」
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國學院大学
教授 秦 信行 氏
野村総合研究所にて17年間証券アナリスト、インベストメントバンキング業務等に従事。
1991年JAFCO に出向、審査部長、海外審査部長を歴任。
1994年國學院大学に移り、現在同大学教授。1999年から約2年間スタンフォード大学客員研究員。
日本ベンチャー学会理事であり、日本ベンチャーキャピタル協会設立にも中心的に尽力。
早稲田大学政経学部卒業。同大学院修士課程修了(経済学修士)
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昨秋東京証券取引所(東証)が有識者を集めて「市場の在り方等に関する懇談会」を設置したことは、新聞紙上などでも取り上げられているのでご存知の方も多いかと思う。日本取引所グループ(JPX)のホームページによると、2013年1月に東証グループと大阪証券取引所が経営統合して日本取引所グループが発足し、その年の7月に現物市場の統合を行ったわけだが、混乱をさけるため原則それまでの市場構造を維持した、その結果、東証が一部、二部、マザーズ、JASDAQの4株式市場を運営することとなり、近年そうした市場構造や関連する上場制度をめぐり改善すべき点も見受けられる、そこで、市場構造を巡る諸問題やそれを踏まえた今後の在り方等を検討するため懇談会を設置したとある。
確かに、東証自身も認識しているように4つの株式市場の株式市場の区分が少し曖昧になっている感じは否めない。特に東証一部市場は、マザーズ市場からの指定替え基準を時価総額40億円などとかなり緩めたこともあって指定替えする企業が相次ぎ、結果一部上場企業数は2,100社以上になっており、東証・大証統合時と比べると500社程度増加している。
また、マザーズとJASDAQ(スタンダートとグロース)については、片やリスクはあるが成長ポテンシャルが大きいと思われる企業の市場、片や安定的した収益が約束される企業の市場という色分けが一応なされているが、それではJASDAQ-グロースとマザーズの違いは何なのか。加えて、JASDAQ-スタンダードと二部とでは何が違うのか。勿論、それぞれの上場基準は違うとはいえ、基本的なコンセプトの違いが分かり難い。
JASDAQ市場は地方の会社の市場だというイメージもあるが、残念ながら地方経済の不振もありJASDAQに上場する企業の数は減少傾向にある。地方創生が日本全体の大きな課題の1つになっている中で、地方企業の上場をどう考えるか、という問題もある。
さらに、世界的に金融緩和が続く中で、未上場会社でも大きな金額の資金調達が可能となっており、ユニコーンと称される未上場企業が世界では300社近く生まれている。そうした中で、そもそも株式市場の意味・意義が薄れているようにも思うが、どうか。
いずれにしても、日本の株式市場の在り方については、東証だけでなく、北海道札幌、中部名古屋、九州福岡の証券取引所も含めて日本全体で改めて今考えなければならない問題だといえる。その意味で東証の懇談会は、時宜を得たものだと思われる。メンバーの皆様には大いに議論して是非良い改革案を出していただくことを期待している。
懇談会は既に年末に2回開かれており、その時の議事録も簡単ではあるが出されている。ただ、その議事録を見る限り、少し投資家サイドからの見方に偏っているようにも見える。勿論、株式市場にとって投資家は重要な構成員の一つではあるが、株式市場の大きなミッションの一つは経済を支える優良な企業を主として資金面から支えることにある。その意味では、もう少し上場する発行体、企業側寄りの意見も検討して欲しいのと同時に、より抜本的な、大胆な改革案を打ち出していただきたい。
※「THE INDEPENDENTS」2019年2月号 掲載
※掲載時点での情報です