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「世界に誇れる編みの技術で医療・産業資材分野に挑戦」

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【髙木 義秀氏 略歴】
1953年9月18日生まれ。 日本大学卒業。1976年当社入社。2009年6月、関連会社(株)ジェフティ代表取締役社長就任。2018年5月、当社代表取締役社長就任。

【福井経編興業株式会社】
設 立 :1944年6月16日
資本金 :80,000千円
所在地 :福井県福井市西開発3-519-3
事業内容:ニット生地製造業



世界に誇れる編みの技術で医療・産業資材分野に挑戦


■70年以上続く経編業界のパイオニア

経編(たてあみ)とは一本の糸を縦方向に連続して編み上げたもので、主に衣料素材として用いられます。当社は原糸メーカーから提供された糸をニットなどの生地に編み上げる委託加工から事業をスタートしました。1990年頃からは自ら衣料品などの製品を企画・販売する「自販」の活動を開始し、自社ブランドの確立を進めてきました。切れやすく機械での扱いが難しいシルクの糸を生地に編み込む技術を開発し、2010年には世界最高峰のファッション素材見本市「プルミエール・ヴィジョン」に参加、世界から注目を集めました。

■下町ロケットのモデルにもなった医療資材事業

シルク糸を編み込む新技術を活用し、医療分野への進出を積極的に行っています。最初に開始した人工血管プロジェクトでは、直径6ミリ以下の小口径の人工血管の製造技術の開発に成功しています。この成功をきっかけに大阪医科大学、帝人株式会社と共同で心臓修復パッチの開発がスタートしました。先天的に心臓に病気のある子供の手術に用いるパッチは、従来品には劣化や伸展性に課題があり多くの子供が再手術を受けている現状があります。当社は子供の成長にあわせて最大で縦横2倍まで伸長する新しい心臓修復パッチの開発を進め、患者の負担軽減を目指しています。この取り組みは小説「下町ロケット2 ガウディ計画」のモデルにもなりました。

■心臓修復パッチの早期薬事承認を目指す

心臓修復パッチは経済産業省・AMEDの「医工連携事業化推進事業」に2期連続で採択され、2018年4月には厚生労働省の「先駆け審査指定制度」の対象品目に指定されました。技術的には既にほぼ確立されており、2021年の薬事申請を目指して臨床データの採集を行っています。国内医療機関への展開の後は市場規模70億円とされる海外へ販路を拡大します。

■付加価値の高い独自の吸音材を開発

2018年に経編技術を活用して開発した吸音材は、燃やしても環境に悪影響のある物質が発生しない素材を使用しています。低音域から高音域まで幅広い周波数帯をカバーし、日常会話程度ならほとんどを吸収します。オフィス向けの吸音壁や自動車のモーターの吸音材などへの活用が見込まれており、利益率の低い衣料に対して安定的な収益が期待されます。3年後までに売上5億円規模の事業に成長させ、産業資材事業の拡大を進めていきます。