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「アルツハイマー型認知症の完治を目指す東北大学発ベンチャー」

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【東郷 浩泰氏 略歴】
鹿児島県出身。早稲田大学大学院商学研究科修了(経営管理修士/MBA)。大手リース会社の他、複数の上場・ベンチャー企業において経営企画、IR、M&A、IPO準備等の経営管理業務に従事。創薬基盤技術を持つバイオベンチャーにて要職として従事し、2011年に東証マザーズ上場を果たす。直近では、IPOを目指すベンチャー企業2社の管理部門責任者として従事すると共に、ベンチャー経営支援サービスを提供。

【ブレインイノベーション株式会社】
設 立 :2018年8月8日
資本金 :5,000千円
所在地 :宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-40
事業内容:認知症・精神疾患治療薬の新薬開発、脳疾患に関する創薬シーズの発掘、診断薬等の研究開発 等



アルツハイマー型認知症の完治を目指す東北大学発ベンチャー


10月12日イベントの様子

■根治薬のないアルツハイマー型認知症

 2015年に日本国内の認知症患者は525万人存在し、高齢化に伴って患者数は急速に増加しています。認知症患者の6割~7割を占めるのがアルツハイマー(AD)型認知症です。脳内で特殊なタンパク質異常が起こることで神経細胞が破壊され脳の萎縮が起こり、認知機能障害が生じると考えられていますが、発症原因は未だ特定されていません。
 AD型認知症治療薬の市場規模は2015年に国内で1600憶円、世界で4200憶円に上りますが、既存のAD型認知症治療薬4製品は進行抑制効果しか持たないため根治には至っていません。現在開発中の治療薬に関してはアミロイドβという特殊なタンパク質をターゲットにしたものがほとんどですが、これまで有意な効果が認められず開発中止が相次いできました。

■東北大学の研究成果に基づく新しい治療薬開発

 2016年に東北大学大学院薬学研究科の森口茂樹講師が既存の治療薬メマンチンの新たな作用機序を発見しました。この発見は近年議論されてきたAD型認知症にインスリンの分泌が関係しているのではないかという「脳の糖尿病仮説」を世界で初めて科学的に実証したものです。既存治療薬や現行開発品とは全く異なる新しいアプローチとしてこの研究成果を事業化し、新薬を開発したいという森口氏の想いに賛同し、2018年8月に当社を設立しました。
 当社の開発品は、AD型認知症の中核症状である認知機能障害だけでなく周辺症状であるうつや不安、攻撃性などの精神機能障害にも効果を発揮することが動物実験において確認されています。認知機能障害の抑制作用のみを持つ既存薬よりも優れた治療効果を持つ薬として期待されています。

■今後の事業展開

 来年より新薬候補品の本格的な前臨床試験を開始する予定で、今年中に2~3億円程度の資金調達を計画しています。臨床試験のフェーズⅠ又はフェーズⅡa実施後に大手製薬会社へライセンス導出する予定です。東北大学との共同研究による新規創薬候補パイプラインの開発も並行して行っており、開発体制の強化のために自社研究施設の開設を検討しています。一日も早く世界中の患者さんへ特効薬を届けるべく、開発を進めていきます。