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「(株)フーディソン、(株)モリロボ、(株)笑農和」

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松田 修一 氏

1943年山口県大島郡大島町(現周防大島町)生まれ。
1972年早稲田大学大学院商学研究科博士課程修了。
1973年監査法人サンワ事務所(現監査法人トーマツ)入所、パートナー。
1986年より早稲田大学に着任し、ビジネススクール教授などを歴任。日本ベンチャー学会会長、早大アントレプレヌール研究会代表世話人も務める。2012年3月教授を退官。ウエルインベストメント㈱取締役会長
特定非営利活動法人インデペンデンツクラブ代表理事



10月1日月例会の様子

(株)フーディソンは、縦割り事業のまま流通経費が圧倒的に高い水産物の業界に着目し、事業間の情報が遮断され、IT化が遅れている現実に対して、仲買及び仲卸プロセス以降の中抜きシステムを飲食店や消費者に対して展開しています。
 (株)モリロボは、焼き面の水平加熱、ローラーの自浄、生地破れ防止、生地の滴下位置、焼きはがしの技術的優位性が世界のどこにもない製品で、テスト導入店・ホテルからは極めて高い評価を受け、海外のイベントにも出店予定です。
 (株)笑農和は、水門の開閉作業は、人力と感で行い、全作業の25%かつ長期間・頻繁に行う負荷の高い労働を、IoT化と地域の水資源の最適化を目指し、IT農業を通じた笑顔の人の和を創る社会を目指しています。
 今後の飛躍的成長のため、検討する必要がある課題を講評・総括いたします。

No.910 株式会社フーディソン(代表取締役CEO 山本 徹 氏)

①ITによる魚流通経費の圧縮マージンのシェアを

 多段的な流通チェーンの圧縮により他社マージンを自社に取り込むモデルです。ITを活用して、川上及び川下のプレーヤーに、取扱量・魚種・鮮度・スピード・データ等の視点から、従来方式よりもはるかに利便性や効率性が高いことを明確にし、圧縮マージンを拡大し、相互の経済的メリットを出し、業界全体でマージンをシェアすることを期待します。

②目指すプラットフォームに乗せる事業の優先順位を

 スーパーの受注発注システム対応の「うおプラ」、飲食店向けの受発注・配送サービスの「魚ぽち」、一般消費者向けに鮮魚専門店の展開である「sakana bacca」、さらにこれら事業を通して明確になった魚・肉の加工技術者向けの「フード人材バンク」等、相互に関連する事業を展開しています。現在実証実験のビジネスを含め、市場規模と収益モデル、展開スピードの視点から、事業拡大の優先順位を明確にし、成長加速を期待します。

③生産者である漁師育成を期待

 水産物の漁獲量の減少、漁師の廃業・高齢化・食の安全など第一次産業としての漁業の持続的成長の基盤となる若い漁師の育成をFOODiSONのプラットフォーム事業にぜひ加えていただきたい。


No.911 株式会社モリロボ(代表取締役 森 啓史 氏)

①成長を加速させるビジネスモデルの再検討

 クレープ焼きロボット「Q」の成長モデルを、自動で生地を安定的につくる技術をライセンスし、機器の製造・販売は他社メーカーを通じて展開する開発会社として考えています。研究開発型ベンチャーとして、ライセンスモデルか、ファブレスモデルか、成長を加速するためのビジネスモデルを他社事例など参考にして、成長と収益力確保を慎重に考えてください。

②クレープロボットの応用で海外進出の前に

 現在のクレープ焼きロボット「Q」の改善版やインド市場向けの「ドーサ(クレープ様の料理で南インドの主食)」ロボットを開発して海外進出を考えています。さらに「Q」進化系の応用技術を磨き、ビジネスのフォーメーションを固め、国内で実証実験のスピードを期待します。

③コピーできないロボットと知財戦略を含む経営体制

 従来品と比較しはるかに市場反応が良いが、逆に「Q」を分解し、現在の特許に抵触しないロボット製造やコピー品の出回る可能性があります。ブランドを含む知財戦略としたたかな提携戦略がとれる経営体制を早急に整備する必要があります。


No.912 株式会社笑農和(えのわ)(代表取締役 下村 豪徳 氏)

①水調整サービスの圧倒的優位システムの進化系を

 会社は地域全体での高品質ブランド米を目指しています。最も機械化の進んでいない水調整サービスに特化し、富山県を中心に導入事例を重ねています。地域への水調整サービスの浸透により、農業者のみならず行政への働き掛けもできる、地域全体の水資源管理の必要性に関する豊富な実証データを早期に収集・解析してください。

②日本のどの地域を重点的に攻めるか

 調整サービスビジネスを基点とした場合、水門が必要な用水路の総距離、ブランド米に熱心な大規模農家の存在、大規模農家と組合との関係、挑戦的な行政の首長の存在等の視点から、富山モデル移転の地域を戦略的に選択してください。ブランド米農業特区を日本で構築し、国内のみならず輸出による地域の豊かさの実現に貢献できる事業を期待します。

③海外進出には別モデルの可能性

 食糧不足時代に備えて、東南アジアを含む進出地域は多くありますが、用水路なき地域に現在の水門をベースにしたシステムの導入は困難です。日本ほど良質の水資源が豊富な国はなかなかありません。地域全体のブランド米を含む農産物に、衛星情報を駆使した気象予測とIoT農業など、まだまだ開拓すべき多くの領域があります。当事業で圧倒的な基盤を固めて、海外進出は別モデルが適切かもしれません。


2018年10月1日インデペンデンツクラブ月例会 東京21cクラブにて