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「「宮崎・串間市から世界一のサツマイモカンパニーを目指す 」」

公開

【池田 誠 略歴】
1970年生まれ。日南農林高校卒業。1992年に家業を引き継ぎ、2013年に法人化に伴い代表取締役社長就任

【㈱くしまアオイファーム 概要】
設 立:2013年12月16日
資本金:10,000千円
主要株主:(株)アオイファームHD、経営陣
所在地:宮崎県串間市大字奈留6564-12
事業内容:サツマイモの生産、加工、販売


<起業家インタビュー>

(株)くしまアオイファーム 池田 誠 氏

「宮崎・串間市から世界一のサツマイモカンパニーを目指す」


サツマイモをグローバル展開する農業ベンチャー
若手の力を活用して農業による世界貢献を目指す起業家




■法人化に至るまでの経緯を教えてください。

高校卒業後は地元を離れて働いていましたが、23歳の時に父の病気のために家業を継がざるを得なくなり、嫌いな農業を生活のために仕方なく続けていました。宮崎県南部に位置する串間市は人口1万8千人を切る小規模な市で、一次産業が中心で若者は都市部へ流出していくという典型的な過疎地域でした。そんな現状を変えようともしない地元への不満を抱いていました。40歳を迎えたある日、「父が52歳で亡くなったのだから、自分はあと10年ほどしか生きられないかもしれない。それなのに嫌々農業を続けていて良いのか?」と考えました。そこで、自分の力で日本の農業全体を変えることを決意し、サツマイモのグローバル展開を掲げて2013年に法人化しました。

■サツマイモの生産、加工から販売までを一貫して行っています。

サツマイモは栄養価が高くノンアレルギーで、お酒やスイーツなどの加工品の生産も見込める非常にポテンシャルの高い野菜です。栽培は30haの自社農園の他に串間を中心とした南九州各地にある約100ヶ所の契約農家でも行っており、紅はるかや安納芋など6品種を栽培しています。

■農協などを通さずに、直接小売店に出荷しています。

地道に開拓した独自の物流網によって、当社から直接卸売業者や小売業者にサツマイモを出荷しています。これによって末端価格を下げると同時に生産者の粗利を上げることができました。また、自社ECサイト「オイモールドットコム」での国内向け通信販売も行っています。

■低温貯蔵庫で熟成させることで、サツマイモの糖度を高めることができます。

サツマイモの収穫は年に一度ですが、合計1,500t以上のサツマイモを貯蔵可能な貯蔵庫によって出荷量を調整しています。新設した貯蔵庫は、高温多湿の条件を保つことで傷のついたサツマイモの自然治癒を促進する「キュアリング機能」を備え、その後低温貯蔵庫で長期熟成させることで糖度を高めることができます。契約農家から仕入れたサツマイモそれぞれに最適な環境を管理し、品質の高いサツマイモを出荷しています。

■東南アジアを中心とした海外輸出に力を入れています。

海外の市場調査をする中で、サツマイモを炊飯器で蒸して食べることの多い東南アジアでは小ぶりのサツマイモの需要が高いことに気づきました。独自の「小畦密植栽培法」を開発したことで小ぶりのイモのみの大量生産が可能となり、輸出が拡大しています。輸出の際の船便での結露によるサツマイモのカビや腐敗が課題でしたが、メーカーと協力して開発した包装資材を用いることで廃棄率を3割から1割以下まで削減し、価格を抑えることができました。その結果、日本のサツマイモ輸出量のシェア3割を超える民間企業のトップになりました。現在の売上の4割が輸出によるもので、2020年には国内の売上を超える見込みです。

■IPOについてはどのようにお考えですか。

グローバル展開のために2021年の東証マザーズ上場を目指しています。TOKYO Pro Marketについても検討しています。農業法人が上場することによって、日本の農業の伝統を全国に広めつつ農業界が革新・成長できると考えています。スピード感のある経営のために若手の人材を積極的に採用しており、IT企業や大手商社など異なる業種から転職した社員も多く、自分には思いつかないような彼らのアイデアが原動力となっています。

■今後の事業展開について教えてください。

2022年までに海外輸出を10か国に増やし、日本のサツマイモ輸出のシェア5割を獲得します。日本からの輸出が難しい北米などの海外地域に生産・輸出拠点を置くことも検討しています 。宮崎大学と共同で研究施設を設立し、新たな品種や栽培法の開発を進めるだけでなく、AIやドローンを用いた技術を農業に導入するための研究を行っていきます。サツマイモを世界に販売することを通して、世界の食糧問題の解決に貢献していきたいです。

※「THE INDEPENDENTS」2018年6月号 - p4-5より