「再生産されるベンチャーエコシステム」
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國學院大学
教授 秦 信行 氏
野村総合研究所にて17年間証券アナリスト、インベストメントバンキング業務等に従事。
1991年JAFCO に出向、審査部長、海外審査部長を歴任。
1994年國學院大学に移り、現在同大学教授。1999年から約2年間スタンフォード大学客員研究員。
日本ベンチャー学会理事であり、日本ベンチャーキャピタル協会設立にも中心的に尽力。
早稲田大学政経学部卒業。同大学院修士課程修了(経済学修士)
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シリコンバレーがスタートアップ、ベンチャー輩出のメッカ、イノベーションの拠点として今も世界に君臨していることは周知の通りである。シリコンバレーは、スタンフォード大学を中心として半径50㎞程度の地域(首都圏に置き換えると、東京駅を中心に北は埼玉の幸手、西は神奈川の平塚、東は千葉の佐倉、南は千葉の富津あたりまでの地域か)を言うが、そこが半世紀以上に亘って継続的にイノベイティブな企業を生み出しているのだ。
その背景、つまりシリコンバレーのベンチャーエコシステムについては、まずスタンフォード大学の存在、エンジェルやVCといったリスクマネー資金提供者の集積とエクイティファイナンスの定着、起業家の海外からの流入、失敗を前向きに評価し許容する文化など、幾つかの要素が指摘されるが、ここではそれらの要素が相互に作用し合ってシステム自体が循環的・継続的に維持されていること、つまりシリコンバレーではシステムが再生産されていることを指摘しておきたい。中でもエコシステムの中核的な役割を担う起業家と資金面で彼らを支えるエンジェルやVC、キャピタリストといった投資家が相互に関係しながら生み出されていることを強調しておきたい。
起業家は先述したように海外など外から流入、移住してくる人たちもいるが、その多くはシリコンバレー内の既存企業(多くは戦後設立されたベンチャー)から自らの技術や事業アイデアを持ってスピンオフしてくる。彼らは様々な支援者に支えられ起業するが多くは失敗する。とはいえ失敗を許容する文化にも支えられて何度も起業する起業家は多い。
事業を軌道に乗せることが出来た起業家の多くは、現状をみる限り自身でIPOを行いスケールする前にM&Aで資金力のある会社(多くは元ベンチャー)に買収される。その場合の起業家は、買収された企業で資金を得て事業を更に拡大することになるが、M&Aで得た資金で再びベンチャーを興しシリアル・アントレプレナー(連続起業家)になる起業家も少なくない。同時に一部の起業家は、得た資金でエンジェル投資家に転身する。
一方IPOを果たした起業家の中には、起業及び経営経験を買われて他の機関投資家等から出資を得、ファンドを組成してVCを立ち上げシニアキャピタリストとして活躍する起業家も数多い。最近ではアンドリーセン・ホロウィッツがその典型であろう。また、IPOしてスケールするベンチャー企業自体は、スピンオフ起業家の母体でもあり、またその会社はスタートアップ・ベンチャーの買収先(買い手)として機能もしている。
このようにシリコンバレーではベンチャーのエコシステムが50年以上前にビルトインされ、それが50年以上の歴史の中で定着し、循環的に再生されていると考えられる。翻って日本は、ようやくそのエコシステムが整いつつあるようには思うが、その歴史はまだ浅く継続的、循環的にエコシステムが再生される状態にはなっていない。エコシステムがようやく整いつつある現在、それが継続的に再生産される状況を逸早く創り出し、真の起業家の時代の実現に繋がることを望みたい。
※「THE INDEPENDENTS」2018年6月号 掲載