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「歯科衛生士の人材紹介ビジネスから、その先を目指して」

公開

<聞き手>
株式会社AGSコンサルティング
専務取締役 小原 靖明 氏(写真右)
1985年明治大学大学院法学研究科修了。1989年当社入社。2000年IPO支援会社ベックワンソリューション設立、代表取締役就任。2007年合併に伴い、当社取締役就任。2012年3月常務取締役。2014年3月専務取締役(現任)

<話し手>
株式会社ファーストコネクト
代表取締役 宮副 俊彦 氏(写真左)
1979年生まれ。早稲田大学高等学院出身。2001年3月早稲田大学卒業。2001年4月(株)ゴールドクレスト入社。2004年9月(株)エス・エム・エス入社。2014年4月(株)ファーストコネクト創業。

【株式会社ファーストコネクト】
設 立 :2014年4月3日
資本金 :10,000千円
本 社 :北海道札幌市中央区北1条西5-2 札幌興銀ビル8F
事業内容:歯科・介護・医療業界に特化した人材紹介事業、歯科医院向け集患サービス事業
URL :http://firstconnect.co.jp/

<特別対談>これからのIPOスタイル

「歯科衛生士の人材紹介ビジネスから、その先を目指して」


■札幌での創業

小原:看護師人材紹介最大手である㈱エス・エム・エス(東証1部上場)のメンバーを中心に、創業を決意されました。歯科衛生士の人材紹介サービスを中心に事業展開を行われており、この業界ではトップシェアの実績を獲得されています。
宮副:同じ価値観を持つ人たちと一緒に働きたい思いから、自分たちでファーストコネクトを創業しました。 創業者の諸藤さんが好きで、そう思える人と近い距離で働けるチャンスは滅多にないと思い、前職であるエス・エム・エスに入社しました。しかし、次第に会社が大きくなるにつれて、自分の価値観と違う部分が出てきたなと感じていました。

小原:札幌という土地の強みを存分に活かしていらっしゃいますね。
宮副:当社は顧客である歯科医院と、紹介する歯科衛生士とのやりとりを非対面で行っています。そこで、東京よりも自社の採用競争力が築きやすく、コストメリットも大きい札幌を選択しました。

小原:求職者はネットで集め、電話やLINEで面談を行っているわけですね。
宮副:遠隔でやるという事業アイデアはあったので、それに合うものとして、大手の参入しづらい市場規模である歯科衛生士という商材を選びました。歯科業界は直接訪問を求めない顧客が多いため、サービス提供の仕組みはすべて遠隔であることが前提です。だから、隣の駅でも訪問営業はしないです。

■独自性はなくても、成長性は見出せる

小原:ビジネスモデルはエス・エム・エスと同じですが、参入障壁は低いです。独自性を高めて勝つ、というお考えはないのですか。
宮副:本音でいうと勝てるのであれば独自性は必要ないと思っています。そのため、スタートアップでは明確に大手企業が本気を出せない小規模な市場を選びました。マーケティング力や人材の能力の向上、企業の体制を筋肉質にしていくことなどへ取り組み、正攻法で勝負していこうと考えています。その後は介護や薬剤師といった大きなマーケットで大手と競合しても優位性を持てるような仕組みを作りたいです。

小原:ビジネスモデルとしては一緒でも、市場や戦略が違えば、次の成長性を描けるということですね。人材紹介業においては、例えば日本人だけでなく外国人を相手にしてもいいですし、様々な可能性があります。今後の更なる成長のために、具体的にどのような事業展開を検討されていますか。
宮副:人材紹介業では、介護職とリハビリ職へ領域を広げています。歯科医院向けの集患サービス『プロレコ歯医者』の運営も行っています。長期的な戦略としては、口コミサイトや検索サイトといったエンドユーザー向けのサービスを展開したいです。

■株式公開に向けて

宮副:何のために上場するのか、上場した後は、ちゃんとそれが自分たちのやりたいビジョンに繋がっているのかということを設計して、その上で上場のタイミングを決めなくてはならないと感じています。東証マザーズ市場を目指していますが、我々は札幌を拠点としているのでアンビシャス市場にも関心があります。
小原:急ぎすぎるのではなく、上場を目指す目的が何なのかを考えて、計画的に準備をしていくということですね。
宮副:半年くらい前までは最短での上場を目指していましたが、上場はゴールではないので、あくまで中期計画に基づいてひとつのゴールを決めなければならないと思って設計を考えています。

小原:上場を色々とお手伝いしてきて、企業文化を作ることの重要性を感じています。単純に最短での上場を目指すのではなく、事業計画と資金調達と企業文化の話をワンセットにして考えるべきでしょう。宮副さんはエス・エム・エス在籍時に上場を経験しているからこそ、何をやるべきかわかっているのかなと思います。本日はありがとうございました。


※「THE INDEPENDENTS」2018年3月号 - p26-27より