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「東北大学のベンチャー投資」

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【國本 行彦】
1960年8月21日生。
東京都立志村高校卒業。
1984年早稲田大学法学部卒業後、日本合同ファイナンス(現・JAFCO)入社。
2006年1月5日(株)インディペンデンツ(現(株)Kips)設立、代表取締役就任。
2015年11月9日 特定非営利活動法人インデペンデンツクラブ 代表理事就任(現専務理事)

東北大学ベンチャーパートナーズ(THVP)のファンド組入が順調に進んでいます。2015年8月に組合設立から投資を始めて2年半で26億円の実行ペースは大学系VCの中で際立っています。その理由は案件の組成力にあります。
 
もともと東北大学は半導体や金属材料系の基礎技術分野で世界最高水準にありながら技術の実用化はあまり進んでいませんでした。そこで大学の知財をカーブアウトさせ、THVPが設立出資するベンチャー企業によって事業化を促進しようという戦略です。

投資先10社のうち新設出資は6社、平均2億円を出資すると共に社長を民間会社出身からスカウトしています。THVP自身が筆頭株主すなわち事業主体そのものになってリードしているケースもみられます。その時の投資ポイントは知財です。学術的価値より事業価値の高い知財を選別して徹底的に支援、つまり知財の戦略化に対するリスクテイクです。

今後の課題は投資回収ですが、THVP社が過半数以上の株を取得しているケースなどでは、事業会社への売却によりIPOより早いエグジットができると思います。
 
THVP樋口哲郎取締役は東北大学発ベンチャー100社設立構想の半分以上にTHVPが関与していく計画で新たなファンド設立にも意欲的です。大学発ベンチャーの新しい成長モデルの確立と、更には地域への経済貢献に大いに期待します。




※「THE INDEPENDENTS」2018年5月号 - p2より