「光渦レーザー加工技術により、新しいマイクロニードルを開発」

鮫島正洋の知財インタビュー

「光渦レーザー加工技術により、新しいマイクロニードルを開発」

■千葉大学尾松教授が考案した「光渦」という特殊な光を用いた加工技術を事業化

鮫島：貴社の製造するマイクロニードルは、「体に刺しても痛くない無痛針」で「体内吸収性がある」点が特徴です。

宮地：いままでも、ヒアルロン酸ナトリウムを使った針を製造している会社はありましたが、当社は千葉大学尾松教授の開発した「光渦」レーザー照射によるマイクロニードル化技術と当社独自開発の中空化レーザー加工処理により、従来技術では難しかったマイクロニードルでの「中空」加工に成功しました。これにより、無痛で、目的物質の浸透性の高い針を製造することが可能になりました。｢光渦」レーザー照射によるマイクロニードル形成は千葉大学と北海道大学の共同出願で基本特許を取得しており、当社は両大学から基本特許の独占実施権を許諾されています。また、自社でも周辺特許を一昨年2件、昨年2件出願しています。

鮫島：糖尿病治療のためのインスリン注射針適用として注目されていますが、美容関連での利用も期待されますね。

宮地：生体吸収材料で針を成形し、針の中空部分にヒアルロン酸やコラーゲン自体を注入することが可能ですので、アンチエイジング用スキンケア製品への活用も見込んでいます。

鮫島：NEDOのSTS(シード期の研究開発型ベンチャーに対する事業化支援)に採択されるなど技術力は高く評価されています。今後どのように実用化していくのでしょうか。

宮地：マイクロニードルのコンセプトは完了しました。今後は実用化する段階で様々な用途にも適応できるよう、目的物質を一定時間流し続けても注射針としての機能を保持できるような新たな技術課題の解決に向けての開発を続ける計画です。

鮫島：既に4件の周辺特許を取得していますが、特許を取ったからといってビジネスがうまく行くとは限りません。大企業との提携が勝負になります。

宮地：実は、昨年末に量産設備構築のため数億円のファイナンスを計画しておりましたが、大手との契約が延期したこともあり数千万円の調達に留まりました。大企業との成果がないと大規模な資金調達は難しいということを実感しました。今年の6月頃には複数の商談が進む予定ですので、改めて増資をおこなう計画を立てております。

■今後の事業展開

宮地：現在、医療や美容に加えて、撥水処理などの金属加工の引合いも多く来ています。

鮫島：いろいろなところからの引合いを全て受けてしまうことが汎用技術ベンチャーのリスクです。膨大なマーケットの中で、事業をフォーカスできず、資金が枯渇してしまうパターンに陥らないように気をつけてください。

宮地：現在、大手化粧品メーカーとのアライアンスに向けて動いています。滅菌やパッケージなどの協業候補先も絞られてきました。

鮫島：大手との提携が１つでも決まれば、資金調達もでき、量産ラインの構築も可能になりますね。

宮地：当社は生産技術のイノベーターとして、これまで光学と電気信号処理技術の2つのコア技術をもとに様々な事業を展開してきましたが、今期はマイクロニードルに経営資源を集中し最終製品を上市したいです。

鮫島：貴社のマイクロニードルは、社会性・市場性に富んだ非常によい素材だと思います。今後、大手企業との契約もでてくるでしょうから、その際は是非ともご相談ください。本日はありがとうございました。

―「THE INDEPENDENTS」2018年3月号 P28-29より