「「株式会社ほぼ日」上場」
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國學院大学
教授 秦 信行 氏
野村総合研究所にて17年間証券アナリスト、インベストメントバンキング業務等に従事。
1991年JAFCO に出向、審査部長、海外審査部長を歴任。
1994年國學院大学に移り、現在同大学教授。1999年から約2年間スタンフォード大学客員研究員。
日本ベンチャー学会理事であり、日本ベンチャーキャピタル協会設立にも中心的に尽力。
早稲田大学政経学部卒業。同大学院修士課程修了(経済学修士)
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昨年2016年の3月号、第88回のこのコラム「会社とは、上場とは」で取り上げた「株式会社ほぼ日」が今年の3月16日ジャスダック・スタンダード市場に上場した。著名なコピーライターである糸井重里氏が率いる会社である。
事業内容はネット上の新聞(サイト)である「ほぼ日刊イトイ新聞」の運営とサイトに寄せられた読者の声を基に開発した生活関連商品の販売など、中でもヒット作である「ほぼ日手帳」の販売が大きな利益を稼いでいる。従って証券コード番号としては「3560」が振られ、「商業」に分類された。
決算期は8月で昨年2016年8月期の業績は、売上3,767百万円、経常利益502百万円、最終利益305百万円だった。
上場前から話題を呼んでいたこともあり公開価格の2,350円に対して上場日3月16日の初値は5,360円、公開価格の2.3倍と高水準であった。時価総額は100億円を超え初値ベースで約120億円となった。
株価はその後かなり下がり4月4日には4,125円まで低下したが、そこから再び上昇に転じ、昨日(5月10日)の終値は6,290円、時価総額は150億円弱となっている。その結果、「ほぼ日」の実績最終利益ベースのPERは約30倍(ジャスダック全銘柄平均のPERは約24倍)とかなり高い。何故、「ほぼ日」が投資家に評価されているのか。
先のこのコラムで「ほぼ日」を取り上げた際に書いたように、「株式会社ほぼ日」及び糸井重里社長の考え方は、通常の上場会社とかなり違っている。例えば、「上場することで何を伝えたいのか」という問いに対して糸井社長は、「こうすれば儲かる」ということを伝えたいのではなく、「こうすれば人が喜ぶ」「生きていることは面白い」ということを伝えたいのだと上場前のインタビューで答えている。
上場後の会見では「問われているのは株価ではない」といった発言によって反利益主義だと受け止められたりもしている。しかし、上場後の株価は順調に推移しており、投資家の評価は高いように思われる。
上場後に発刊された「日経ビジネス」5月1日号の編集長インタビューに糸井社長が登場している。そこでは「反利益主義」という見方に対して、「成長を拒否しているわけではない」「成長は当然したい」、ただ、そんなに先まで見通せるわけはないので「軽々しく時価総額が何倍になります(中略)とかは言えません」、「時価総額が上がるのは結果であって、それが目的」ではないと反論している。
糸井氏にとって上場は企業が強くなるためのエクササイズであって、上場を通して強くなった企業で、人々(彼の言葉で表すと「生活人」)がいつの時代でも喜んでもらえるものを提供するという基準をベースに今後の事業を考えていきたいと語っている。
投資家の高評価の背景とともに、「ほぼ日」上場の意義を改めて考えてみたい。
※「THE INDEPENDENTS」2017年6月号 掲載