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「「手作り会社・モノづくり・人づくり~そしてこれからの『次世代会計モデル』」」

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1975年立教大学経済学部卒業。1980年公認会計士および税理士登録。同年株式会社オービックビジネスコ ンサルタント設立、代表取締役就任。一般社団法人コンピュータソフトウェア協会名誉会長・理事、経済産業省 産業構造審議会ソフトウェア小委員会委員、公益社団法人経済同友会幹事など多くの公職も務める。


■ 起業するきっかけ

父は祖父の代から続く炭屋を営んでいました。炭団を青森から仕入れて売る。商売がとても身近にあったのです。しかし、東京五輪を契機にカラーテレビが一般家庭へ普及し、炭は電気に淘汰されました。時代の変化によって商売がなくなっていく様を目の当たりにしたのが、私の経営の原点なのかもしれません。大学卒業後は会計士の道に進みました。当時主流であったオフコンの会計ソフトは1500万円と非常に高価で、大会社しか手の届かないものでした。もっと安価に提供できればと考えていた頃、PC-8800シリーズが発売されます。この上で動く会計ソフトを開発すればより多くの人に感謝されると確信し、起業に至ります。

■ ステージごとの戦略

起業当初はお金の苦労が絶えませんでした。沖電気から同社PC向けソフトの仕事をいただきましたが、製品完成は開発資金ギリギリ。損益分岐点は700万円と試算し、いざ売り始めた矢先で資金繰りが悪化。借金には厳しい父が3000万円のつなぎ資金を銀行から借り入れてくれたことで窮地をしのぎました。ビジネスで重要なのはキャッシュフロー。キャッシュフローがプラスになった時が、真の意味で会社設立であると学びました。

ミドルステージ期では、人の問題がおこりました。組織的な開発をおこなうために中途採用を増やしましたが、それぞれが異なる言葉を話す。統率がとれない。会社も余裕がある訳ではなく、爪が生えてこなくなるほど精神的に追い込まれていました。そんな時に出会ったのが、日本研修センター代表の武島一鶴氏でした。当事者意識研修を通じて、「集団」でしかなかった会社が「組織」に変わりました。人の問題を乗り越える過程で、当社の文化やDNAが作られていくのを感じました。

■ 経営理念と経営戦略

問題に直面したとき、経営判断に迷ったとき、何を大事にするのか。経営理念はこれを助けるものでなければなりません。当社は「オープン・フェア・フラット・グローバル」を掲げ、行き詰った時はこれら原点に立ち返って意思決定をおこなっています。また、何より大事なのは組織です。どのような組織を目指すのか、そのためにどのような人材が必要なのか。採用と教育には時間もお金も惜しみません。 そして、当社の経営目標はお客様の満足度を高めることです。そのために、5つのコアコンピタンスを定義しています。「中堅・中小企業にフォーカスすること」「業務パッケージにフォーカスすること」「マイクロソフト社のテクノロジーにフォーカスすること」「パートナー戦略」「奉行ブランド戦略」。これらを守り、磨き続けていくことが非常に大事です。

■ 次世代クラウド会計について

今まさに時代はクラウドに突入しています。通信が第5世代になることで、その流れは加速するでしょう。クラウド時代に、会計はどう変わるのでしょうか。これまでを紐解くと、江戸時代の大福帳(単式簿記)から始まり、帳簿式会計、伝票会計、コンピュータ会計、クライアント・サーバモデル会計システムと変遷してきました。クラウドによる一番の変化は、データがネットワーク上に存在することです。これにより、「コラボレーション」「アウトソーシング」「コミュニケーション」が大きく進化します。Web APIによってデータ連携が進み、あらゆるデータやアプリケーションがつながるでしょう。銀行APIを活用すれば、自動仕訳などデータオートメーションも加速します。ゆくゆくは人工知能による分析や推定仕訳、融資監査税務BIも進化するはずです。 昨年12月に奉行シリーズのクラウドサービス展開の第一弾となる「奉行Jクラウド」をリリースしました。56万社の導入実績と38年基幹パッケージを開発してきたノウハウを惜しみなく注ぎ込んだ次世代の柱と期待する製品です。当社もベンチャーであり、このチャレンジを花開かせたいと考えています。

―2017年2月20日東京インデペンデンツクラブ(新丸の内ビル10F 東京21cクラブ)にて