鮫島正洋の知財インタビュー

「アマチュアスポーツマンの「もっと強くなりたい」を叶える」

■ 起業のきっかけ

鮫島：浜松はCAD/CATの優秀なエンジニアが多く集まっていると聞いております。

土井：大学卒業後、アルモニコスでCAD/CATエンジニアをしておりましたが、ウィンドサーフィンにハマり、プロを目指すべく会社を辞め、2007年　にオーストラリアに留学しました。現地で練習を積む中で、お互いのアドバイスが上手くなる源だと気がつきました。また、アマチュアでも上手くなりたいという気持ちはプロと変わらなく持っているのに、プロに比べてITが全く整備されておりません。アマチュアの「もっと強くなりたい」気持ちをサポートできるような簡単で低価格なアプリを提供したいと思い、CAD/CATエンジニア4人で 当社を設立しました。

鮫島：アマチュアスポーツ向けのアプリはいつ頃リリースされたのでしょうか。

土井： iphoneで撮影するだけでテレビのスポーツ解説で使用されるような残像動画に自動変換できるアプリ「Clipstro」を2014年にリリースしました。「Clipstro」は米アップルによる2015年ベストアプリにも選ばれました。

■ アマチュアスポーツチーム向け動画共有・分析アプリ「Spoch（スポック）」

鮫島：昨年9月に新しいアプリをリリースしました。

土井：新アプリ「Spoch」は、チームスポーツに特化したクローズドSNSです。スマホアプリ上で2つの動画の比較、スローモーションやコマ送り、図形やコメントの書き込みができ、トレーニングや試合内容の編集・分析・共有がオールインワンでできます。動画は時間毎にタグ付けできるので、例えばサッカーの試合のシュートのタイミングだけ検索して見ることができます。現在、1チーム月額6,000円でアプリを提供しています。メインのターゲットは高校生です。JFL（Japan Football League；日本の男子サッカーのノンプロリーグ）での採用も決定し、今年3月より各チームの選手・監督にアプリをご利用いただいております。

鮫島：スマホしか持っていない中高生でも動画編集が可能になりますね。競合製品はありますか。

土井：競合はアメリカの「hudl」という製品です。手動分析で高機能・高価格の「hudl」に対し、我々は低価格で自動化という全く逆のアプローチをしていきます。今後はサッカーにフォーカスして、分析の自動化を進めていきます。ボールの支配率や攻守の入れ替わり、個々のプレー状況などを自動で分析できる機能を追加することで、選手の発掘や指導者不足といった課題解決に貢献できればと思っています。

■ 特許戦略について

鮫島：一つの技術でいろいろなジャンルに対応できるビジネスは、どのマーケットで勝負するかの選択が重要です。特許は1件申請済とのことですが、プラットフォームビジネスを展開するのであれば技術的な特許を取得する必要があります。一方、アプリでいくのであれば今は急いで特許をとる必要はないと思います。

土井：他社が特許をとっていたら、当社はそれを回避していく必要がありますか。

鮫島：それはもう少し事業が拡大してからでいいと思います。売上が10～20百万円の会社に権利行使するケースはあまりありません。

土井： 今年の2月にVC数社から総額60百万円の資金調達を行いました。今回調達した資金を元に、画像認識による自動戦術分析機能の開発を進めていきます。

鮫島：安東CTOの開発したワンカメラでの画像認識技術は簡単に追随されないと思います。ニッチトップとして圧倒的に競争力があると思います。 今後も新しい機能を開発した際はぜひご相談ください。お手伝いさせていただきます。本日はありがとうございました。

―「THE INDEPENDENTS」2017年4月号 P20-21より