「「事業所内英語保育園の事業戦略」」
=$DATE?> 公開
<聞き手>
株式会社AGSコンサルティング
専務取締役 小原 靖明さん(右)
1985年明治大学大学院法学研究科修了。1989年当社入社。2000年IPO支援会社ベックワンソリューション設立、代表取締役就任。2007年合併に伴い、当社取締役就任。2012年3月常務取締役。2014年3月専務取締役(現任)
<話し手>
株式会社リノヴェ
代表取締役 柏木 陽佑さん(左)
1979年10月9日生。徳島県立富岡西高校出身。2004年ワシントン州立セントラルワシントン大学コミュニケーション学部卒業後、米シアトルのJapan-pacific-publications記者。2005年(株)ジオス入社。2009年同社 東京・神奈川地区エリアマネージャー。2011年 (株)リノヴェ設立、代表取締役就任
【株式会社リノヴェ 概要】
設 立 :2011年3月23日
資本金 :25,900千円(株主:経営陣、エンジェル投資家)
所在地 :徳島県那賀郡那賀町仁宇字学原216-3
事業内容:事業所内保育施設・学童保育施設・語学教室の運営
URL :http://www.5star-english.com/
<特別対談>これからのIPOスタイル
「事業所内英語保育園の事業戦略」
■ 英語教育も任せられる保育サービス
小原:英語教育を日常に取り入れた保育園を院内・事業所内で展開するユニークな事業モデルですが、そのアイディアはどこから生まれたのですか?柏木:元々は日亜化学工業や阿波製紙など法人企業向けの語学研修事業と児童向け英会話教室を展開していました。しかし英会話教室は競争が激しく、かつ既存の英会話教室では語学の習得に限界があり、インターナショナル保育園を事業所内保育園としてオープンしたのがきっかけです。
小原:待機児童問題が深刻になる中で、院内・事業所内保育に対する助成金補助率も増えています。
柏木:しかし助成金だけでコストは賄いきれないので英語教育という付加価値によって採算を向上させる提案をしていました。
小原:お母さんにとっては仕事と育児の両立ができ、人材採用に苦労する企業や病院にとっても大きなメリットがあるわけですね。
柏木:私どもが運営する事業所内英語保育園の保育料は社員さんは月4万円、社員以外のお子さんは月8万円で預かっています。2020年を見据えて小・中・高等学校を通じた新たな英語教育改革が実施され、幼少期からの英語教育に対する関心度合は高まっています。
■ 徳島から全国展開へ
小原:貴社は自社で保育施設を保有するのではなく、保育所の運営受託というビジネスモデルです。現在は四国中心ですが、全国に向けた事業展開をどのように進めていくお考えですか?柏木:事業所内で保育園を運営するには様々な規制をクリアする必要があります。そこでコンサルティング業務から始めています。現在の事業所内英語保育所の受託運営先は阿南、松山4か所(今年度3園開園)の計5か所ですが、従業員300~1,000人で遊休不動産を持っている地方の法人で、女性従業員の比率が高く、労働集約事業型で社員定着を図りたい法人が主要な顧客候補になります。東京も引き合いが多いのですが立地条件が厳しい。
小原:工場の多い地方のほうがニーズも強く事業展開チャンスの余地が大きいと思います。
■ 成長の鍵を握る人材採用戦略
小原:保育園の必要性が叫ばれる一方で保育士の採用確保は困難を極めています。柏木:当社の最大の強みは、人材採用力にあります。英会話の事業経験を活かした優秀な外国人の採用手法と外国人マネジメントには自信と実績があり、英語保育検定の資格をもつスタッフが多数います。日本人の採用においても英語スキルが習得できる点と、英語保育事業の付加価値による高い給与水準が差別化になっています。
小原:今後の成長戦略においては人材採用戦略が最大のポイントになります。貴社の人材採用と育成プログラムの優位性を組み込んだ事業計画を作成し、今後の資金調達やIPO準備を進めていくとよいでしょう。
柏木:株式上場はぜひとも実現したいと思っています。株式上場によりグローバル人材育成と異文化交流までを地域密着型で行い地方創生に貢献するのが私たちの目標です。
小原:本日はありがとうございました。
【対談を終えて】
株式会社AGSコンサルティング 小原靖明
小原:厳しい競争環境の中で、貴社の「差別化」を考えると①英語教育という付加価値とそれを支える有能な保育士を継続的に採用できる状況を整えていること。②徳島という「地方」で事業展開してきた経験値を日本全国の「地方」で生かせること(特に、地方の大型工場での保育所の運営等)ということになるでしょう。このような強味を生かして、上場を達成できれば、さらに認知度が高まり、次なる展開が見えると共に、「地方創生」に大きく貢献することでしょう。株式会社リノヴェ 柏木陽佑
柏木:今回の対談は、当社の現状の課題を認識し今後の戦略を再考する上で、とても有意義な機会でした。現在、グローバル人材の育成と事業所内保育施設の整備は、国の成長戦略の観点からも重要政策の一つとなっております。当社のサービスが広がることで、「子育てしやすい環境の構築をし、グローバル人材育成に貢献する。」という当社の使命を果たしていくため、ビジョンと戦略の両輪が必要であると実感しました。現在、日本語と英語研修を全従業員に行っておりますが、弊社の教育及び保育施設で働く全従業員をバイリンガルに育成するという弊社の強みを生かし、弊社のビジョンの実現を果たしていきたいと思います。※「THE INDEPENDENTS」2016年11月号 - p18-19より