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「差別化戦略と集中戦略」

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株式会社リムコーポレーション
代表取締役社長 竹塚 直久さん

1954年千葉県市川市出身。システムエンジニアとして、人工衛星利用の国際データ通信システムや石油プラントの開発などに従事後、1981年に留学のため渡米。帰国後、1988年に当社を設立し、代表取締役に就任。

住所:静岡県浜松市西区村櫛町4598-9(浜名湖国際頭脳センター内)
TEL:053-484-4800  設立:1988年  資本金:1,900万円 従業員数:20名
事業内容:デジタルフォントの制作・販売、フォントに関するコンサルティング全般
http://www.lim.co.jp/

―国内の携帯電話市場で7割以上のシェアを占めているそうですね。どのような特徴があるのですか?
携帯電話で文字を表示する時、フォントサイズが小さくなると「憂鬱」とか「薔薇」といった画数が多く複雑な漢字は潰れて読みにくくなってしまいますよね。当社のフォントエンジンでは、どんなに小さなフォントサイズになっても読みやすく表現できる点が特徴です。ユーザーが見やすく、疲れず、情報が的確に伝わりやすいようにするために、認知工学の技術を駆使して開発しています。また、携帯電話はコンピュータに比べてメモリが少なくCPUも小さいという制限があるので、コンパクトで容量が軽く、ハイスピードにも対応できるという特徴があり、当社のフォントエンジンは多くのメーカーから評価いただいています。

―設立からここまでは、どのような経緯を経てこられたのですか?
1988年に会社を設立し、海外市場向けに輸出されているプリンタなどの情報機器向けに英語以外のフォント製品を開発しライセンス提供するということからスタートしました。日本に本社を置く会社の中に、様々な言語のフォント製品を開発している会社は他にありません。2年くらいで表示できない言語はないところまで行き着きました。設立間もなく経営基盤も実績もない小さな会社が業界で評価されるには、世界から認められるしかない。そうすれば、日本市場でも必然的に認められるだろうと。この戦略は成功して、世界市場で大きな実績と経験を積むことができました。

―日本市場ではどのようにシェア拡大していったのですか?
1990年頃には、「いずれデジタル機器に漢字を表示して情報流通する時代が来る。そして大きな市場に成長する」と予測していました。そうなると絶対に必要になるのが文字、特に漢字を読みやすく表示する技術です。この読みは大当たりでした。当社は開発過程で、「人工知能」という高度な技術を応用することで、視認性や可読性に優れた日本語フォントを表示する開発に成功したのです。結果として、第2世代携帯電話で当社フォントが50%のシェアを占めるに至りました。

―最近の携帯電話市場ではいかがですか?
第3世代以降の携帯電話では、国内70%以上のシェアを占めています。PCサイトやOfficeドキュメントを携帯電話で見るためには、文字を小さくする技術が必要不可欠です。ここに当社のフォントエンジンが活躍しています。フォントエンジンというのは、もともとMicrosoft社やAdobe社などアルファベット圏で開発されているものがほとんどです。彼らには、複雑な漢字を見やすく表現するという発想がないので、当社はここに目を付けて優位性を築いています。

―携帯電話以外の市場に関してはいかがですか?
携帯電話向けの売上構成が大きいので、どうしても携帯市場に特化しているように思われがちですが、すでにカーナビやデジタル家電、電光掲示板などにも多く採用されています。一番大きなものとしては、成田空港の離発着を知らせる電光掲示板に当社の技術が組み込まれています。

―コア技術となっている人工知能技術というのは?
人間の脳の働きをコンピュータで実現する高度な専門分野です。当社のコア・コンピタンスは、実は人工知能を基盤とした最先端のソフトウェアテクノロジーにあります。人工知能は幅広い分野ですが、高度な文字表示に応用できるのが当社の強み、差別化戦略です。また、LCDやLEDなどの光学的可視化装置に市場を絞込み、且つ最も難しいとされる漢字でコア技術を確立している点に経営資源を集中させることで競争優位を図っています。人工知能の創始者の一人でもある米国MITのM.ミンスキー教授にも直接お会いして高い評価をいただいたんですよ。

―今後はどのような展開をお考えですか?
人工知能技術をコアとしたフォントエンジンについて、共同研究やアライアンスを活用しながら新製品の開発をいち早く進めて、業界標準を作っていくことを目指しています。携帯電話という最先端技術を要する市場で培ってきたものを、医療機器や工業用製品などまで裾野を広げていくことを国内では展開していく予定です。また、中国やインドなどの新興国の携帯電話市場にも供給スピードを速めて、海外でのシェア拡大にも努めたいと考えています。すでに東京外大と一緒に研究を進めて、ヒンディー語やアラビア語など世界の言語を表示可能にする技術を有しています。

―竹塚社長の揺るがないポリシーをお聞かせください
市場で1位になれないものは、やる価値がないと思っています。アイデア、コア技術、事業化のスキルは自社内で、それ以外は業務提携やアウトソーシングを上手につかて経営資源の最適化を心がけています。そうして価値あるものをより早く市場に提供することに挑戦し続ける。このポリシーを常に守りながら、少数精鋭の最先端企業であり続けることが当社の生きる道だと考えています。




推薦者のコメント(株式会社チェンジマスターズ 法貴 礼子) 漢字文化の日本人ならではの発想から生み出された技術であることに、同じ日本人として勇気づけられます。竹塚社長の集中戦略・差別化戦略は、むだがなく非常に効率の良い戦略であり、中小企業が取るべき戦略を忠実に守っているといえます。それを実践し、世界にも認められている点は、学ぶところが多いですね。


※全文は「THE INDEPENDENTS」2012年1月号 - p30-31にてご覧いただけます