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「大学の知を活用した地域イノベーション」

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1966年11月生まれ。福岡県立明善高校出身。
1989年九州大学工学部生産機械工学科卒業。
2004年1月九州大学知的財産本部特任准教授。
2010年4月株式会社産学連携機構九州代表取締役。
2015年4月QBキャピタル合同会社代表パートナー就任。


■九州の大学発ベンチャー支援ネットワーク「SAM会」

 私は九州大学工学部を卒業後、大企業・中小企業・ベンチャー企業を経験し、2004年1月から九州大学知的財産本部において大学発ベンチャー支援やインキュベーション活動を行い、2010年4月から㈱産学連携機構九州の代表取締役を4年務めました。その間、㈱サイフューズ(佐賀大学中山功一教授(元九大整形特任助教))、PicoCELA㈱(九州大学システム情報科学研究院古川教授)、㈱Lafla(九州大学情報基盤研究開発センター廣川教授)などの大学発ベンチャーを支援してきました。
 「SAM会(旧綾水会)」は約10年前に発足した福岡地域における大学発・地域発ベンチャー支援ネットワークです。毎月第2火曜日に開催、今年9月で第140回を迎え、大学発ベンチャーや地域発ベンチャー企業のビジネスプラン発表だけでなく、起業前の事業化シーズや研究も紹介しています。MLのメンバーは約160名で、顔ぶれは、大学発ベンチャー経営者、金融機関、ベンチャー支援機関、大学研究者、学生、地元ベンチャー・中小企業経営者、監査法人です。このような取り組みの中から何が生まれたかというと、経営専門家とのベンチャーマッチング、こくきん創業支援センター福岡との提携(のべ28件の融資実績)、異業種間産学連携プロジェクトによる事業創出(㈱サイフューズの創業)、在学中に参加していた九大学生(学部・大学院)の起業促進などです。

■地域・大学発ベンチャーファンドの重要性

 細胞3Dプリンターの開発・再生医療を行う㈱サイフューズは、東大エッジキャピタル等のVCから14億円の出資を受け、本社は東京に移りました。地域にファンドがなくても、中央(関東)の有望なファンドと連携すればよいではないか?とよく言われます。しかし、シード、アーリー段階のハンズオン支援においては、起業家と密接なコミュニケーションが必要・重要です。そのため、東京のVCが大学発ベンチャーなど地域の技術系ベンチャーにメインで投資することは、ほとんど無いのが現状です。
 2015年4月にQBキャピタル合同会社を設立、九州大学を中心とした九州地域の大学発ベンチャーを支援する「QBファンド」の運営を10月から開始しました。地域・大学発ベンチャーファンドの重要性に賛同いただき、西日本シティ銀行、事業会社や個人投資家など13社の地域の方々の出資で約31億円のファンドになりました。QBファンドの目指すところは、九州大学を中心とした九州の大学との新たな産学連携モデル構築の実現です。金融的投資リターンのみならず、新たな産業・事業創造プラットフォームを構築し、大学研究成果の社会還元を促進しながら九州・地域経済の発展へ貢献していきます。

【質疑応答】

Q:投資する会社数や投資時期について教えてほしい。
投資先は15社前後を想定している。九大発ベンチャーは今年だけでも2〜3社設立されている。既存ベンチャー企業数社も候補としている。年内に1社は投資して5〜6年以内に新規投資組み入れを完了したいと考えている。
Q:大学発ベンチャーの課題は経営者不足だが、経営者を探して育てる仕組みはあるのか?
プレ投資(ギャップファンド)を活用して経営者候補を探したりするが、確かに日本国内において経営のプロは少ないのが現状である。ベンチャー支援者やエグジットした人材からピンボイントで探すしかない。私たちのネットワークには、ベンチャーに関心ある社会人大学院生など様々な経営人材候補がいる。その中からチャレンジする起業家人材を応援していきたいと考えている。


2015年10月19日九州インデペンデンツクラブ@福岡証券取引所にて
※「THE INDEPENDENTS」2015年11月号 - p10掲載