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「少数株主と経営株主」

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【國本 行彦】
1960年8月21日生。東京都立志村高校卒業。
1984年早稲田大学法学部卒業後、日本合同ファイナンス(現・JAFCO)入社。
2006年(株)インディペンデンツ設立、代表取締役就任。


 東京プロマーケット上場銘柄の㈱エコグリーンがTOBによって上場廃止になります。同時期に1,563百万円の第三者割当増資を実行し、ゴールドマンサックス証券系のジャパン・リニューアブル・エナジー㈱が筆頭株主となり、代表取締役である石井光暢氏は第2位株主になりました。石井光暢氏は引き続き代表取締役として経営を担い、バイオマス加工事業拡大のスピードを上げ、同時にグループとして新たにバイオマス発電事業にチャレンジしていきます。バイオマス燃料用廃木材を収集加工する同社の業績は売上1,675百万円、経常利益75百万円と順調で、東証マザーズ市場へのステップアップ上場も検討していました。しかしバイオマス加工事業拡大には多額の設備投資資金が必要である事から大きな経営決断をしました。

これらの大きな経営方針の変更は株主総会で承認を得て、石井光暢氏以外の少数株主全員が20%のプレミアム株価でTOBに応じました。グループ再編や戦略的合併による非上場化も企業の成長戦略の一つの選択肢です。今年9月までの新規上場会社は66社(東京プロマーケット4社を含む)である一方で、東証の実質上場廃止銘柄24社(完全子会社化30社、株式併合2社を除く)です。
未上場ベンチャー投資のEXIT(資金回収)は、IPO、M&A売却、経営を支配している株主(経営株主)による買い取りなどになります。 流動性に乏しい未上場企業の場合は、投資家保護が徹底されている上場企業とは違い、少数株主にとっては経営者の交代や経営主体の変更は大きなリスクになります。株主構成すなわち経営権をコントロールができる経営株主には少数株主の流動性(換金)に対する最大限の配慮が求められます。



※「THE INDEPENDENTS」2015年10月号 - p2より