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「超小型衛星でコストを1/100に下げ、 誰もがアクセスできる宇宙を実現していきます」

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【代表取締役 中村 友哉】
1979年12月31日生。三重県立伊勢高校出身。 東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程修了。 在学中、超小型衛星XI-IV、XI-V、PRISMの開発に携わる。 卒業後、同専攻での特任研究員(大学発ベンチャー創成事業)を経て、2008年当社設立、代表取締役就任。


【株式会社アクセルスペース】
設 立 :2008年8月8日
資本金 :5,704万円→19億5699万円(資本準備金を含む)
所在地 :東京都千代田区神田小川町2-3-13 M&Cビル7階
事業内容:① 超小型衛星及び関連コンポーネントの設計製造 ② 超小型衛星を利用したソリューションの提案




超小型の人工衛星で宇宙ビジネスを展開する大学発ベンチャー。
志を同じくする仲間と宇宙にイノベーションを引き起こしていく起業家。


―日本政府は宇宙開発戦略を強化しています。
内閣府宇宙開発戦略本部が2015年1月に決定した新「宇宙基本計画」において従来の安全保障や科学技術面に加え、民間の商業利用を重視する姿勢を強く打ち出しています。内閣総理大臣が宇宙開発戦略本部長に充てられ、内閣府宇宙戦略室のリーダーシップの下、文科省・経産省・総務省・国交省・農水省・防衛省等が協力して官民一体となった宇宙市場開拓に取り組もうとしています。

―ベンチャー企業にとっても宇宙ビジネスへの参入余地が高まります。
我々は2008年の創業以来、100kg以下の超小型衛星開発プロジェクトを手掛けてきました。従前の日本の宇宙産業は官需向けのロケット・人工衛星製造が中心であり重厚長大企業が主役でした。しかし近年、気象情報、精密農業、森林観測、パイプライン監視などを目的とした商用リモートセンシング市場(衛星情報提供サービス)が、低コストで打ち上げられる超小型衛星の活用によって広がりつつあります。

―競争相手は国内より宇宙ビジネスが活発な海外企業になります。
民間による宇宙開発は、やはり米国が一歩進んでいます。超小型衛星分野でいえば、NASAを飛び出したエンジニアが設立しこれまでに$180Mを調達したPlanet Labs社、昨年Googleに買収されたSkybox Imaging社などが有名です。そうした巨大ライバルと比較したときの我々の優位性は圧倒的なコストパフォーマンスです。我々がやろうとしていることは一種のインフラビジネスなので、それを武器にいかに早くサービスを展開できるかにかかっていると考えています。

―2013年11月に世界初の民間商用超小型衛星「WNISAT-1」を打ち上げました。
「WNISAT-1」はウェザーニューズ社(東証1部)向けに開発した北極海域の海氷の観測を目的とした質量10kgの超小型衛星です。氷の状態を搭載カメラで撮影してその観測データをウェザーニューズ社が北極海を通過する船舶向けに提供し、安全な航行や航海時間短縮(燃料費削減)に貢献することが目的です。現在、一部の機能が使えない状態のため、2016年初頭に後継機を打ち上げて対応する予定です。

―2014年11月には超小型地球観測衛星「ほどよし1号機」の打ち上げに成功しました。
「ほどよし1号機」は1辺約50cm、質量60kgで、高度500kmの太陽同期軌道から地上分解能6.7mの画像を取得できます。我々は内閣府の最先端研究開発支援プログラムに採択された東京大学中須賀教授が主導するプロジェクトに参画し、従来の中大型衛星に対して圧倒的にコストを抑えた超小型の地球観測衛星を開発し、衛星データ利用ビジネス開拓に取り組み始めました。

―2017年からは複数の超小型衛星「GRUS(グルース)」を打ち上げる計画です。
現在の商用衛星画像は1枚利用するのに数十万円から数百万円もかかります。これを大幅に引き下げたいというのが我々の狙いです。ただ、地上分解能(地上の物体をどれだけ細かく見分けられるか)では従来の大型衛星には敵わないので複数機を打ち上げて観測頻度で勝負しようとしています。独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のイノベーション実用化ベンチャー支援事業の助成金事業として試作機は開発済みで、2017年にまず3機を打ち上げ地球上の指定場所を1日1回必ず撮影できる体制を整える予定です。その後、急速に数を増やして毎日撮影できるエリアを広げていきたいと考えています。

―衛星用コンポーネントを大学等研究機関向けに販売しています。
衛星開発においては宇宙環境に耐えうる部品開発がとても重要ですが、ともすれば一品生産のためコストが高くなります。そこで我々は今まで培ってきたセンサー等の衛星用コンポーネントを大学等の教育・科学研究用途向けに限定販売しています。

―衛星開発会社から宇宙データサービス会社へとビジネスモデルが変わってきます。
我々の今後のビジネスは衛星開発による収益に加え、衛星画像販売および解析結果を提供するサービスモデルを目指しています。ビッグデータや IoT(Internet of Things)との親和性が高い衛星データ市場の拡大を見込んでいます。

―特許は敢えて取得しない方針です。
人工衛星は一般の人の目に触れる製品ではないので解析・模倣するのは容易ではなく、技術を公開するよりもブラックボックスでいこうという戦略です。ただ宇宙データ解析事業を展開するためには、今後ソフト面での知財戦略が重要になると考えています。

―東大と東工大の学生による衛星開発プロジェクトチームが創業の原点です。
研究開発だけで終わるのでなく衛星を社会で実用化させたいという使命感が私たちにはありました。大企業に就職しても超小型衛星の開発など認められません。起業を決意したが顧客が見つからずあきらめかけていた時にウェザーニューズ社から自社衛星を持つ決断をいただきました。「我々は発注者・受注者の関係ではなく、共に新しい価値を創り出す同志だ。ウェザーニューズは気象革命を起こす。だから君たちは宇宙革命を起こせ。」と石橋博良会長(当時・故人)に発破をかけられたことは今でも忘れられません。

―衛星打ち上げには大量の資金が必要です。
2017年に3機の超小型衛星を打ち上げる計画ですがその開発と打ち上げ費用を含め1機5億円かかるため合計15億円の資金が必要になります。今までは経営陣とエンジェル投資家が株主でしたが、今後はVC・事業会社向けの大型増資(エクイティ)によって一気に事業を拡大していきたいと思います。

―株式公開の目的について教えて下さい。
2020年代前半までに超小型衛星50機を打ち上げることが我々の目標です。そのためには合計で200億円程度の資金が必要になると見込んでおり、その一部を市場から調達したいと考えています。こうしてできた衛星プラットフォームによって全地球のデータを毎日集め、新しい情報インフラを構築するビジネスを展開していきます。宇宙利用ビジネスの需要が広がる一方で競争も激しくなってきています。その中で我々は超小型衛星の開発からサービスまで手掛ける企業として、宇宙ビジネスのイノベータでありたいと思っています。


<事業計画発表会>

中村友哉社長には下記開催の事業計画発表会にてプレゼンいただきます。
・2015年9月16日200回シンポジウム@大隈小講堂(新宿区戸塚町1-104 早稲田大学早稲田キャンパス)

※「THE INDEPENDENTS」2015年9月号 - p4-5より全文掲載