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「投資運用市場から見えるVC業界」

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【國本 行彦】
1960年8月21日生。東京都立志村高校卒業。
1984年早稲田大学法学部卒業後、日本合同ファイナンス(現・JAFCO)入社。
2006年(株)インディペンデンツ設立、代表取締役就任。


 2015年上半期のIPO43社の資本市場からの資金調達額(公募・売出合計)は約1000億円になります。VECによると2014年度のVCファンド調達額は906億円です。一方でトヨタの種類株は1回の発行で約5000億円を調達しています。日本の投資運用市場から見ればIPO市場もVC業界もまだまだ存在感が低い状況です。

この要因の一つにVCファンドのパフォーマンスの低さが指摘されています。大手VCのファンドリターン(出資金に対する分配倍率)は最近じりじりと運用成績が上がっていますが、1980年代は3倍前後、1990年代は1倍を下回る事もありました。

問題はこのようなVCファンドの運用成績が業界全体として十分に開示されていない点です。VCファンド出資者は従来の金融機関から現在は事業会社や政府系資金の比率が高まっていますが、米国のように年金基金をVC業界へ呼び込むためにはVCファンドの情報開示や運用体制の充実が必須となります。

株式市場が好調な現在はファンドの資金回収と新規ファンド設立には絶好のタイミングです。ただ運用パフォーマンスは株式市場の低迷時期に組入(投資)されたファンドの方がヴィンテージ的には高くなる傾向にあります。2020年に向けて盛り上がる日本経済とIPO市場はVC業界にとっても飛躍発展の大きなチャンスです。

まだまだ経験値の少ない日本のVC業界ですが、日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)の新会長に就任された仮屋薗聡一氏はキャピタリストとしてはもちろん、ファンドマネージャーとしての経験も豊かな方です。新しいプレイヤーが増えていくVC業界にあって存在感あるリーダーの活躍を大いに期待しています。

※「THE INDEPENDENTS」2015年8月号 - p2より