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「<特別対談>こころ 渡邉一博」

公開

<聞き手>
株式会社AGSコンサルティング
専務取締役 小原 靖明さん
1985年明治大学大学院法学研究科修了。1989年当社入社。2000年IPO支援会社ベックワンソリューション設立、代表取締役就任。2007年合併に伴い、当社取締役就任。2012年3月常務取締役。2014年3月専務取締役(現任)

<話し手>
有限会社こころ
代表取締役 渡邉一博さん
1975年4月26日広島市生まれ。1994年修道高校出身。1999年早稲田大学理工学部卒業後、日本オラクル株式会社入社(2006年7月まで)。2007年8月に、佐藤充晃(副社長、早稲田大学理工学部卒業、日本IBM出身)と当社創業、代表取締役就任。

<有限会社こころ 概要>
設 立:2004年6月29日
資本金:3000千円
所在地:静岡県浜松市中区蜆塚2-1-38
事業内容:①外食業態の開発、②店舗展開・運営

<特別対談>これからのIPOスタイル

外食業態の今後の事業展開計画


小原:外食業界の株価は、景気動向や株式市場などの外部環境に大きく影響されます。今はPER40倍と東証平均20倍に対してかなり高い水準にあります。しかし少し前まではPER10倍台の時代が続いていました。上場タイミングをどのように捉えるかは、上場時の資金調達や成長戦略からもとても重要になります。
渡邉:私たちは居酒屋ダイニング「てんくう」という業態で、浜松を中心に6店舗展開しています。今期も出店を続け売上は大幅に伸びます。しかし1業態100店舗限界説が言われる中、出店戦略だけでなく新たな業態開発戦略も必要だと感じています。居酒屋業態は市街地が中心ですが、今後は「しゃぶしゃぶ食べ放題」など、郊外でも通用する業態を30店舗毎に展開しようと考えています。

小原:貴社の強みには、社長と副社長が理系出身でITに強い点があります。もちろん提供メニューや内装デザインも素晴らしい。ここに少人数オペレーション管理などのITを活用して、リアル店舗のノウハウを掛け合わせればもっと大きく成長できると思います。
渡邉:店舗現場が私たちの基本ですが、一方で強い外食本部の構築を目指しています。メニュー開発、人財育成、空間管理(店舗雰囲気)、衛生管理などを、規格化・数値化して標準化していくが本部の役割だと考えています。売上管理とシフト管理によって予算実績管理を日次で行う社内ITシステムでPDCAも行っています。
小原:直営店舗だけでなく、コンサル型のFCシステムも展開可能ですね。飲食業は、本質的には美味しいものを提供できるかが勝負ですが、それと多店舗展開が向いているかは別物です。
渡邉:まずは強い店舗業態を作ってからと考えていましたが、ITも当社の強みにすべきだと意識し始めました。昨年8月には「システムの自社開発による、IT化と低コスト・高効率運営をコンセプトとした居酒屋事業の展開」で経営革新計画の承認も得ました。外国人や高校生アルバイト向けにタブレットを活用した教育システムも開発しています。

小原:現在は店舗展開だけでは金融機関からの資金調達も限界の時代です。IT開発のための資金調達という方法もあります。食を突き詰めるのか、食という場を提供するのか、コンセプトも明確にすると良いでしょう。
渡邉:今後はインバウンド(訪日客)対策に力を入れていきます。成田空港と関西空港の間に位置する静岡は、訪日観光客のゴールデンルートです。私どもでは外国人ツアー向けのコース開発、メニューの多言語化など、スキーム開発をしています。しかし飲食1業態だけでは限界もあり、地域活性化を目指す協業集合体によるグローバルシステムを浜松市に提案しています。
小原:外食企業が家業的業態を脱皮するためには、いかに参入障壁を作るかがポイントです。それと市場戦略。お金を使う世代を如何に取り込むか。そしてこれからは海外戦略も重要です。従業員をモチベートするためにも、コーポレートストーリーを練りこんだ事業計画を作成するタイミングに貴社はあると思います。
渡邉:私どもは経営理念を大切にしています。働く根幹は給料ではないと思っています。しかし従業員の生活向上を考えると店舗展開だけでは限界があります。今までは地道なB2Cモデルで展開していましたが、ようやくプラスアルファの付加価値戦略を考えられるようになりました。
小原:まったくその通りです。これからの新しい展開に期待しております。

<対談を終えて>
小原:社長自身が対談の中で言われているように、こころ社は単に多店舗展開で利益の最大化を目指す企業ではありません。自社で開発した業態をベースに、飲食業界においてITや業界ノウハウを提供するプラットホーム型企業を指向しています。そのうえで、飲食業界の長時間労働・賃金問題の改善も実行してゆく社長の強い意志を感じることが出来ました。今後は、会社の方向性、将来のコーポレートストーリー、利益計画を含め事業計画書等で早目に「見える化」を図ることが必要でしょう。

渡邉:弊社の今後のビジョンとして、「外食とITの融合により、SynergyとInnovationを創造していく」というものが新たに出来ました。今回の会談にてご指摘頂き、今まで、点と点であったものが、線として繋がりました。改めて、外食だけの成長ではなく、成長のもう一つの柱としてITを捉え直し、事業計画を策定していきます。